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» 2013年03月15日 11時00分 UPDATE

データ分析で夫婦は増えるか 人口1万の町が取り組む「ビッグデータ婚活」

婚活イベントの参加者にセンサーを付けてもらい、データを分析して男女のコミュニケーションを可視化する――そんな“ビッグデータ婚活”に挑む町を取材した。

[本宮学,ITmedia]
photo 参加者の名札に取り付けられたセンサー

 「はじめまして」「ご趣味は?」。自己紹介し合う男女の胸元には“センサー”が――和歌山県紀美野町でこのほど、センサーデータの活用を通じてカップル成立の可能性アップを目指す“ビッグデータ婚活イベント”こと「きみのめぐり愛 春」が開かれた。

 名札に付けられたセンサーで参加者の行動データを取得し、分析によって男女のコミュニケーションを可視化する取り組み。分析結果は後日スタッフ内で共有し、カップルが成立しやすいイベント運営のあり方を探るという。

 「データの活用を通じてカップルが1組でも多く生まれてほしい」と話すのは、紀美野町の寺本光嘉町長。人口約1万人の同町では若年層の未婚率の高さが課題となっており、2009年から婚活イベントを定期的に開いてきた。これまで4回のイベントをきっかけに2組の夫婦が生まれたものの、寺本町長は「運営の仕方によってはもっと多くの出会いを提供できると考えていた」という。

 未来の出会いを促すキューピッド役を期待されているのがセンサーとデータ分析技術だ。寺本町長は「運営スタッフがデータをうまく活用することで、参加者にとってよりよいイベントにできるのでは」と期待を込める。導入には日立製作所とJSOLが協力している。

会話の盛り上がりから発話状況まで――データ分析で分かること

 この日集まったのは男性15人、女性23人の合計38人。イベントは男女ペアになっての自己紹介から始まり、自由に交流する夕食タイム、気に入った異性の名前を紙に書き込むアンケートタイム、アンケート結果がマッチしたカップルを発表する「クライマックス」──と続いた。

photo イベントの様子

 この間、参加者1人1人のセンサーは「対面情報」「加速度」などのデータを収集し続ける。これらのデータは後日、日立のクラウドプラットフォームで分析し、イベント全体のネットワーク図、個人の発話状況、会話の盛り上がり具合などをグラフ化するという(個人情報は含まない)。

 グラフ化した情報は、イベント運営を担当する町や商工会で共有し、コミュニケーションタイプとカップル成立の関係について考察していく。例えば、カップル不成立だった人は“聞き手”に徹して自分のことを話せていなかったり、ごく少数の人としか会話できていなかったりするのでは――といった具合だ。こうして得られた知見を基に、イベントスケジュールや参加者向けアドバイスの見直しにつなげるという。

photophoto 日立社員が事前検証した際のデータ分析結果(注:データは今回のイベントと無関係)
photophoto 事前検証結果の続き(注:データは今回のイベントと無関係)

 「これまでも参加者にイベントの感想を聞いたりしていたが、それだけでは分からないことが多く、スタッフの感覚に頼って運営している部分が多かった」と、イベント運営を担当する同町商工会青年部長の道上喜紀さんは話す。データから参加者の感情や振る舞いを客観的に分析することで「よりよい運営ができると期待している」という。

「チャレンジする価値は十分ある」

 「紀美野町には豊かな自然など魅力がたくさんある。しかし町に住む男性にとっては異性との出会いが少なく、少子高齢化が課題になっていた。できるだけ多くの人に在住してもらうため、2006年から積極的に町外出身者の受け入れを進めてきた」(寺本町長)。09年から実施している婚活イベントも、町内外の男女を結びつける定住化施策の一環だ。

photo 紀美野町の寺本光嘉町長(右)、紀美野町商工会の中村修史会長

 一方、日立はこれまでも、コンサルティングやセンサー、IT基盤などを総合的に提供するビッグデータ活用サービスを企業向けに提供してきた。今回の取り組みは、定住者の増加を目指す紀美野町のニーズと、町おこしに対するデータ解析技術の有用性を検証したい日立のニーズが合致して実現したという。

 婚活イベントへのセンサー導入に当たっては「個人のプライバシーを最も気にかけた」(寺本町長)。「会話を盗聴されるのでは」などと心配した人が参加を控えてしまうことを防ぐため、参加用紙上で取り組み内容を明示したほか、住民から疑問点などを受け付ける相談窓口も開設。イベント当日にも日立のスタッフによる説明も行った。その結果、開催前/当日ともに「不安の声は上がらなかった」(紀美野町産業課の岩田貞二課長)という。

 イベント後、参加者からは「センサーを付けていることを忘れていた」「特に気にならなかった」といった声が多く聞かれた。また、データの活用については「カップルが成立した人がどういう行動パターンだったのかを知りたい」(紀美野町在住の30代男性)、「今日もイベント中にスタッフからアドバイスがあって助かった。今後よりよいアドバイスがもらえるなら嬉しい」(和歌山市在住の20代女性)など、ポジティブな声も上がっていた。

 「われわれ行政にできることは、住民の意思を聞いてサポートしてあげること。唯一心配だったプライバシー面をクリアでき、データの活用にチャレンジする価値は十分あると感じた」と寺本町長は話す。同町は今後も“ビッグデータ婚活”に取り組んでいく考えだ。

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