NTT Comが米クラウド関連企業2社を買収へ、海外大手キャリアを追撃

NTTコミュニケーションズは、データセンター事業のRagingWireとネットワークサービス事業のVirtelaの2社を総額約855億円で買収する。

» 2013年10月28日 19時20分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は10月28日、データセンター事業者の米RagingWire Data Centersとネットワークサービス事業者の米Vertela Technology Servicesの株式取得を発表した。取得規模はRagingWireが約3億5000万ドル、Vertelaが約5億2500万ドルで、出資比率はRagingWireが約80%、Vertelaが100%。いずれも米当局の承認を経て、2014年初頭の完了を見込む。

 RagingWireは米国西部のサクラメントと東部のアッシュバーンで3棟のデータセンターを保有する事業者。2013年度の売上計画は約8500万ドルで、NVIDIAやPolycomなどが主要顧客となっている。「2N+2」という冗長構成の電源設備に関する特許技術を保有するのが特徴という。

NTTコミュニケーションズのデータセンターのサーバルーム計画

 NTT ComはRagingWireを傘下とすることで、米国で保有するデータセンターのサーバルーム面積が現在の約2万平方メートルから2倍強の約4万3000平方メートルに拡大する。RagingWireは2カ所のデータセンターの拡張にも着手しており、サーバルーム面積がさらに増える見込み。これにより、NTT Comのデータセンターのサーバルーム面積は計画中を含めて23.1万平方メートルに達するとしている。

 Vertelaは、196カ国・地域で企業向けにネットワークサービスを提供する非上場企業の事業者。Coca-ColaやBoeingなど約500社の企業顧客を抱える。WAN高速化やファイアウォールなどのネットワーク装置の機能を仮想化する「NFV(Network Functions Virtualization)」技術を利用したネットワーク運用を行っているのが特徴という。

Vertelaの顧客企業

 NTT Comは、160カ国・地域で展開している自社のネットワークサービス「Arcstar Universal One」をVertelaと相互接続して、サービス提供体制の大幅な強化と運用効率の向上を図る計画。また、2014年に予定しているArcstarでのNFVによるネットワークマネージドサービスの提供もVertelaをベースに展開していく。

会見する有馬社長

 NTT Comでは2015年度にクラウド関連事業での海外売上高を2000億円とする目標を掲げており、今回の株式取得を通じてこの計画の達成に弾みをつけたい考え。記者会見した有馬彰社長は、「欧米市場ではM&Aを積極展開して成長を加速させ、VerizonやAT&T、Orangeといった海外のグローバルキャリアに挑戦したい」と述べた。

 同氏によれば、北米でのデータセンター事業は子会社のNTT Americaを通じて展開しているが、今後はRagingWireへの統合を含めて再編を検討する。また、ネットワークサービス事業もVertelaによる運用を採用することで、グローバル全体でのサービス品質の向上や効率の改善につなげていくという。

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