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» 2014年07月31日 10時23分 UPDATE

ITソリューション塾:SIビジネスを因数分解すれば「システムインテグレーション崩壊」への対策が見えてくる

日本のSIは、工数で見積もりする一方で、納期と完成の責任を負わされるビジネス形態だ。このやり方は受発注者の間に利益相反と相互不信を生み出している。どうすればいいのか。

[斎藤昌義(ネットコマース株式会社),ITmedia]

 「今、仕事が増えていて、人手が足りません。うちではみんな1.5人月分働いてくれていますが、それでも足りませんよ」

 このやり方が、いつまで通用するのだろうか?

 「システムインテグレーションは崩壊する」

 私はそう考えている。これについては、拙著『システムインテグレーション崩壊』に詳しく書いたので、よろしければご覧いただきたい。

 ところで、ここでいうシステムインテグレーション(SI)とは、「工数積算を前提としたビジネス全般」のこと。準委任や請負などの受託開発、SES(システムエンジニアリングサービス)、派遣などがこれに含まれる。これを「SI」という言葉にまとめてしまうには少々抵抗もあるが、世間でSIeと呼ばれる企業の多くは、これらを併せ持って生業としているところが少なくない。中にはSIerと自称しつつも、実態はSESと派遣が大半を占めているところも決して珍しくない。そんなことから、SIという言葉を広義に解釈して使っている。

 本来、SIは、テクノロジーやノウハウを組み合せ、ユーザー企業の求める最適なシステムを構築する請負型ビジネスを意味した。その目的は今後も色あせることはなく、必要性は増していくだろう。しかし、そこにかかわるSI事業者の仕事の内容やユーザー企業とのかかわり方、あるいは役割といったものは変わるだろう。収益を上げる手段やスキルも変わる。「SIが崩壊する」とは、そのような意味で申し上げている。

 我が国のSIは、工数で見積もりする一方で、納期と完成の責任を負わされるビジネス形態だ。このやり方は、ユーザー企業とSI事業者との間に利益相反と相互不信を生み出している。

 例えば、あらかじめ予算が決まっているプロジェクトでは、要件を少しでも追加しようとするユーザー企業と、要件を削ろうとするSI事業者が対立を深めることになる。ユーザー企業は「瑕疵担保」という形で完成内容の保証を求めるが、SI事業者はコストを上積みしてリスクを担保しようとする。そこには、「少しでもいいシステムを作ろう」というお互いの創意工夫やSI事業者の努力に応じた見返りなど期待できない。

 ではどうすれば良いのだろうか。SIビジネスを因数分解して考えて見るとその糸口が見えてくる。

クラウド時代のビジネス戦略 クラウド時代のビジネス戦略

 人月積算+瑕疵担保を前提とする「収益モデルとしてのSIビジネス」は、お互いにとって不幸であり、長続きするとは思えない。いずれは崩壊するだろうし、むしろ積極的に崩壊させてしまったほうが良いだろう。

 しかし、「顧客価値としてのSIビジネス」は、なくなることはないだろう。むしろ、テクノロジーはますます多様化し、その組み合せもまた複雑さを増してゆく。IT需要の拡大とともに、この課題への対処はますます求められるようになるだろう。

 この課題に対処するためには、工数の価値からテクノロジーの価値へと事業資産をシフトさせ、テクノロジーのプロとして、お客様に価値を提供できる事業者へと役割を転換していくことが唯一の方策と言える。

 テクノロジーと言っても、量子コンピューターや人工知能の開発に積極的にかかわれという話ではない。むしろ、これまで培ってきたSIのノウハウや業務知識、そして、実用が迫っている新しいテクノロジーに積極的にかかわり、ビジネスのイノベーションを模索することだろう。前者のテクノロジーイノベーションは、誰にでもできるものではない。しかし、後者のビジネスイノベーションであれば、誰にでもチャンスはある。

 「JINS PC」をご存知の方は多いと思う。発売から2年で、販売累計本数300万本を突破したパソコン用メガネだ。このビジネスの成功は、これまで、メガネの需要は、「目の悪い人」という常識を打ち破り、「目の健康な人」、すなわち「PCを使う全ての人」に、市場を拡げたことにある。

 「JINS PC」は、ビジネスイノベーションの典型的な事例ではないだろうか。彼らは、全く新しい技術を生み出したわけではない。これまでの自分達の事業資産やノウハウを土台に、新しい技術を取り込み、新しいビジネスを創出したのだ。

 『システムインテグレーション崩壊』とは、「収益モデルとしてのSIビジネス」の崩壊である。「顧客価値としてのSIビジネス」は、なくなることはなく、ますますその必要性を高めてゆくだろう。

 そういう視点に立ったとき、次にどのようなビジネスのシナリオが描けるのかについては、追ってご紹介していこうと思う。

 なお、本ブログとともに、先日投稿したこちらの記事「これからのビジネスを支えるIoTとビッグデータ、その動きを妨げる我が国のビジネス環境」もあわせてご覧いただくと、テクノロジーのトレンドがどういう方向に向かっているかを考える参考になると思う。

 ※本記事は斎藤昌義氏のオルタナティブ ブログ「ITソリューション塾」からの転載です。

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斎藤昌義

ネットコマース株式会社・代表取締役

日本IBMで営業として大手電気・電子製造業を担当後、起業。現在はITベンダーやSI事業者の新規事業立ち上げ、IT部門のIT戦略策定やベンダー選定の支援にかかわる。


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