「全社員2300人に会社貸与PCやめます」は成功するのか?(1/3 ページ)

BYODといえば、セキュリティの確保や端末の管理コストが負担となって期待した効果が得られないというケースも多い。ところが「管理面でもコスト面でも身軽になれる」と全社BYODに舵を切った会社がある。

» 2015年06月29日 11時00分 公開
[宮田健ITmedia]

 PCがなければ仕事にならないという企業は多い。となれば、業務用PCは会社が用意して社員に貸与することが一般的だ。機種を選べることもあるが、ほとんどの会社は支給されたPCで仕事に励むことになる。

 従業員数が少ないITベンチャーなどでは個人所有PCの持ち込みを認めているところもある。しかし、どちらかといえばBYOD(Bring Your Own Device)といえばネガティブなイメージを抱く情シスが多いのではないだろうか? セキュリティの確保や管理コストの増大など、導入したものの上手くいかないという事例が多いからだ。

 ところが、全社員(約2300人)を対象として貸与PCを撤廃、BYODへの全面移行を始めた企業がある。時代に逆行した感もある取り組みに挑戦するのはICTインフラのインテグレーションを手掛けるネットワンシステムズだ。準備金として15万円の特別賞与を支給し、社員自身が使いやすいと思うPCを自由に選択させるという(一部の客先業務では貸与PCが残る)。

 同社に「情報システム部はさぞや大変なことになるのでは?」と聞くと、その答えは意外なものだった。「いやー、むしろ身軽になりますよ。管理面でもコスト面でもね」――ネットワンシステムズで今、何が起きているのだろうか?

ネットワン ネットワンシステムズのオフィス

今後3年間、貸与PCを購入する予算はゼロ円に

 結論から書いてしまえば、BYOD全面採用はVDI(デスクトップ仮想化)環境の全社展開が前提だということ。業務で扱うデータはすべてサーバ側にあるので、仮に社員がPCを紛失したり盗まれたりしても情報漏えい事故などにつながる可能性は低い。

 むしろ、インターネットに接続でき、会社指定のVDIクライアントが導入可能で、ある程度の画面解像度を備えたデバイスであればPCでなくてもいい。外回りが多い社員は軽量ノートPCやタブレットを、持ち運びが不要でエクセル仕事が多い社員は大画面のものをといった具合に自身の働き方に応じたデバイスを選べるわけだ。

 例えば、同社広報・IR室の西田武史氏が選んだ端末はMacbook Air。理由は「使ってみたかったから」だそうだ。「推奨はしていませんが、やろうと思えばiPhone 6 plusからでもアクセスできます。業務に適しているかといわれれば大いに疑問ですが、緊急時に出先から書類を確認するくらいなら可能です」

ネットワン (出典:ネットワンシステムズ)

 同社が管理するPCは大幅に減少し、今後3年間は新規PCを購入するためのコストがゼロになる予定。また、新規PC購入時に必要だったウイルス対策ソフト、IT資産管理ソフトなどのライセンスコストも削減できる。

 メリットはコスト削減にとどまらない。会社側はVDI環境の管理だけに注力すればよく、貸与PCの初期設定、OSやパッチの定期的な更新、資産の棚卸といった運用負荷が大きく削減できる。PCの持ち出し履歴の管理やPC内保管データの記録などの作業がなくなると聞けば、うらやましく思う情シスもいるのではないだろうか?

 ユーザー側からしてみれば「自分が使いたいデバイス」が使えることでモチベーションは上がり、「面倒くさいセキュリティアップデートやPC持ち出し申請」などの業務に直接関係しない作業がなくなるわけだ。管理する側と管理される側、Win-Winの関係といえるかもしれない。

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