第7回 オブジェクトストレージを解読する “無限”にためる使い方クラウド社会とデータ永久保存時代の歩き方(3/3 ページ)

» 2015年12月16日 07時00分 公開
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機能で見る使い方

 ここまでユーザー視点でオブジェクトストレージの利用方法を解説してきましたが、ITの視点でもその仕組みや利用形態について見てみたいと思います。

コンテンツデポ

 日本ではこのような言い方はあまりしないかもしれませんが、いわゆるコンテンツ(画像、動画、音楽、ドキュメントなど)のデポ(貯蔵所)というものです。最近急激に増えてきた画像や動画などの非構造化データが主な保存物です。ここに保存されたデータは、アクティブにアクセスが可能でデータの検索も容易であり、さらに配信もできる機能を備えている場合が多いでしょう。

長期アーカイブ

 非構造化データの長期保存や、使わなくなったアプリケーションの保存用途です。履歴としての保存、または、コンプライアンスのために必要な時に再度利用できるように保存することが多いでしょう。

高堅牢性ストレージティア

 データの中でもアクセスがない、または、ほとんどアクセスされないデータで、かつ確実に保存したいデータにもオブジェクトストレージを使用できます。コピーの数を単純に増やすことで、堅牢性を簡単に、いくらでも向上できる点が特徴です。

バックアップ

 北米でよく利用されるケースです。スナップショットのようなイメージを、単純にオブジェクトとして簡単に、いくつかの場所に分散配置できる点や、データの移動やコピーが単純にREST APIで実現できることなども、バックアップに向いている点です。

それぞれの要素で整理したものが以下になります。

用途 アクセス 検索性 配信 長期保管
コンテンツデポ
長期アーカイブ × ×
高堅牢性ストレージティア × ×
バックアップ ×

オブジェクトストレージで重視する項目

 一般的にオブジェクトストレージは、大容量データを安価に保存するのに向いているため、コスト、容量、効率重視と思われがちです。しかし、いろいろ意見を聞いてみると、用途によって多少優先順位が違っているようです。個人的な経験から、それぞれの利用形態での重視される項目を順位づけしてみました。

 データの長期保管「アーカイブ」、画像、動画などの保存先として使われる「コンテンツデポ」、そして「クラウド」の3つの形態について、コスト、信頼性(データの完全性)、セキュリティ、管理性などから考察してみましょう。

コストはもちろん重要な要素ですが、実は効率性や互換性、容量などよりも、データの信頼性(堅牢性)、セキュリティ、管理性などのほうが重視されているように思います。なお、性能に対する期待はもちろん低いことが想定されましたが、最近では北米の西海岸から東海岸まで、数秒で同期がとれるものまで出てきており、今後ますます用途が広がるのではないかと期待されています。

重要度 全体 アーカイブ コンテンツデポ クラウド
コスト A A A A
信頼性(データ堅牢性) A A A A
セキュリティ B A B B
管理性 B B B B
容量 B B C A
互換性 B B B C
性能 B C A B
効率 C B C C

 次回はオブジェクトストレージを使う前に知っておくべき常識を紹介します。

著者:井上陽治(いのうえ・ようじ)

日本ヒューレット・パッカード株式会社 ストレージテクノロジーエバンジェリスト。ストレージ技術の最先端を研究、開発を推進。IT業界でハード設計10年、HPでテープストレージスペシャリストを15年経験したのち、現在SDS(Software Defined Storage)スペシャリスト。次世代ストレージ基盤、特にSDSや大容量アーカイブの提案を行う。テープストレージ、LTFS 関連技術に精通し、JEITAのテープストレージ専門委員会副会長を務める。大容量データの長期保管が必要な放送 映像業界、学術研究分野の知識も豊富に有する。


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