「うちの情シス、ダメで……」という話を耳にした著者が、その処方箋として「デジタルビジネス時代に対応する“攻めのIT”ができる情報システム部門への改革」を考察。第5回は、「パートナーとしてのITベンダー」について整理する。
この記事は成迫剛志氏のブログ「成迫剛志の『ICT幸福論』」より転載、編集しています。
今回は、6つ目の検討要素として「パートナーとしてのITベンダー」について整理してみる。
いわゆる“付き合いのあるベンダー”は大きく以下の5タイプに分けられる。
(1)大手SIer(システムインテグレーター)
(2)大手メーカー、ソフトウェアベンダー
(3)コンサルティングファーム
(4)100%の情シス子会社
(5)100%の情シス子会社
第2回で検討した「情報システム部門業務の内部体制」や、第4回で検討した「技術・商品・サービスの選定ポリシー」とも関係するが、これらのベンダーには、全てを一社に一括して委託している場合もあれば、ベストオブブリードとして都度、別のベンダーに委託している場合もあるだろう。
第2回触れたように、日本ではITエンジニアの75%がITベンダー企業に所属しており、ユーザー企業に所属しているのはわずか25%である。
そのような事情もあり、ゼネコン的に一括で委託できる信頼のおける大手SIerに委託しているケースが少なくないだろう。継続した長い付き合いがあり、故にユーザー企業の情報システムの全体像や方針、事業の内容や業務についても詳しく、またユーザー企業内の組織やキーマン、それぞれの志向についても熟知していたりする。そのような場合は、情報システム部門にとって非常に頼りになる存在となっているだろう。
大手SIerとの取引もあるが、どちらかというと大手メーカーやソフトウェアベンダーとの付き合いが深いというケースもありそうだ。
特にメインフレーム(大型汎用機)時代から変わっていない場合には、俗にいうNFH(NEC、富士通、日立)やIBMと、前述の大手SIerとの付き合いのような関係が築かれているケースがありそうである。また、ERPなどを独自開発からパッケージソフトウェアへ更改する際にSAP、Oracleなどと密接な関係となっているケースもあるだろう。
情報システムの刷新、情報システムを活用しての業務改革やBPRまたはJ-SOX/内部統制への対応などを実施する際に、戦略検討や計画フェーズだけでなく実行フェーズまでをコンサルティング会社に委託した場合、そのコンサル会社はそのプロジェクトを通じて会社の事業・業務・組織・人材・情報システムの詳細情報を全て把握し、またその問題点・課題などを得意の分析によって知り尽くしているだろう。
そのようなコンサルファームが情報システム部門のトップや経営層にアプローチして、維持・保守、運用フェーズを、またはそれらの管理も含めて、受託していることもあるのではないだろうか。
情報システム部門をスピンアウトさせ、100%の子会社としているケースも少なくない。情報システム部門の子会社化の目的は、総合職ではない“IT専門職”の採用による内部人材の強化や、自社のシステム構築・運用で培ったノウハウを外部に提供・販売することでコスト部門からプロフィット部門に変革させようという建て付けであることが多いと思われる。
しかし、“情シス子会社”の主要メンバーは、情報システム部門から出向・転籍した社員であることが多く、そのため委託先といっても“内部”の情報システム部門とあまり変わらない状況かもしれない。または、別会社としてプロフィットセンターを目指しているような場合、“内部”なのに見積やら提案書やら価格交渉やらが行われたり、その際の交渉要素として「人材を引き取っているから」のような話が持ち出されりして、「結局のところ外部のSIerなどに委託した方がよい」という状況になっているケースもあるかもしれない。
上記(4)の目的でつくった“100%情シス子会社”が何らかの理由でうまく機能しなかったり、情シス子会社から大手SIerに一括委託するようなケースだったりする場合、そのSIerなどからの出資を受け入れ、合弁会社となっているケースも少なくない。また、フルアウトソーシングの場合には、一部出資ではなく、情報システム子会社全体をメーカー、ベンダー、SIerに売却してしまっているケースもある。
これらのケースの場合、「100%情シス子会社のようにコントロールできないにもかかわらず、取引をやめることもできない」というジレンマに陥っている危険があるように思う。
SE、商社マン、香港IT会社社長、外資系ERPベンダーにてプリンシパルと多彩な経験をベースに“情報通信技術とデザイン思考で人々に幸せを!”と公私/昼夜を問わず活動中。詳しいプロフィルはこちら。
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