「もう、メールには戻れない」 イシンホーム、コミュニケーション改革の成果は(1/2 ページ)

どうしたら社内外の関係者2000人と効率よくコミュニケーションできるか――。そんな課題から“脱メール”に踏み切ったイシンホーム。現場スタッフに「もう、元には戻れない」といわせた導入効果とは。

» 2016年06月28日 07時00分 公開
[柴田克己ITmedia]

 電子メールやグループウェアが一般的な仕事のツールとして使われるようになってから、はや20年以上。その間、企業のコミュニケーションツールに求められるニーズは多様化してきた。

 組織の特長に応じた管理性やセキュリティ、情報伝達のリアルタイム性、テキストに加え画像や音声、映像といったマルチメディアへの対応、スマートフォンやタブレットのようなモバイルデバイスへの対応、導入や運用にかかるコストの削減など、その方向性もさまざまだ。

 この分野には多数のベンダーが参入し、こうしたニーズに応えるさまざまな製品を提供してきた。コモディティ化が進むと同時に、クラウド(ASP/SaaS)への対応が早かったこともあり、導入や運用のコストも以前に比べて大幅に下がっている。つまり現在、企業はより自社のニーズに合うツールを、かつてよりも気軽に試し、低コストで導入できる環境が整っているというわけだ。

 こうした中、「より生産性を高められるツール」を探し求め、結果として、社内連絡やパートナーとのコミュニケーション手段をメールからチャットツールへの移行に取り組んでいる企業がある。岡山県に本社を置き、全国規模で工務店のフランチャイズを展開しているイシングループ(イシンホールディングス)だ。

Photo イシンホームは阪神淡路大震災をきっかけに誕生。災害に強く、快適なすまいを作るためのノウハウを共有している

 同社には、どのような情報共有の課題があり、企業向けチャットツールにどのような効果を期待しているのだろうか。イシンホールディングス専務取締役、イシンホーム住宅研究会本部長の山本隆義氏に聞いた。

2000人との効率的なコミュニケーションを求めて

Photo イシンホーム住宅研究会本部長の山本隆義氏

 イシングループは、1990年に岡山県津山市の工務店として創業。代表取締役社長の石原宏明氏は、その5年後に発生した阪神淡路大震災での被害を目の当たりにし、より災害に強く、住む人にとって快適な「住まい」を作るためのノウハウを蓄積し、共有していく必要性を強く感じたという。

 こうした情報の共有は、地域に根ざした中小規模の工務店が、大資本を持つハウスメーカーと対等に渡り合い、生き残っていくためのライフラインにもなる。石原氏は、被災地での災害ボランティアなどを通じて知り合った全国の工務店経営者たちとのコネクションを通じ、住宅建設や販売、工務店経営のノウハウをフランチャイズ形式で展開する「イシンホーム住宅研究会」事業を発足させる。現在、加盟工務店は北海道を除く全国に235店舗を数え、年間3500棟の新築住宅を手掛ける組織へと拡大している。

 グループ企業の社員は約170人、フランチャイズ加盟工務店の社員は全体で2000人近くにのぼる。これらの社員、会員間のコミュニケーションをいかに効率よく効果的に行うかが、同社にとっての課題となっていた。

 「住宅業界は、政策や税制が業績に大きく影響を与える業界です。成長フェーズでヒトやモノに投資して事業を拡大するという考え方もありますが、IT活用で組織の生産性を高めたほうが、景気や環境の変化に左右されることなく、組織として成長を続けられます」と山本氏は言う。

 同社がコミュニケーションツールに求めていたのは、使いやすさと、関係者全体の情報共有だ。「大事なのは、事業やプロジェクトに関わるメンバー全てが、その中でやりとりされている全ての情報にアクセスできる環境を用意すること。組織内での知識の平準化を図りたいというニーズがありました」(山本氏)

脱メールで“動画コミュニケーション”が加速

 同社では、さまざまなコミュニケーションツールを比較検討した結果、L is Bが提供する企業向けチャットツール「direct」の採用を決めた。決め手はインタフェースと管理機能、画像と映像のリアルタイム共有機能だった。

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