日本マイクロソフトが、Azureの日本データセンター東日本リージョンにおいて、SAPのERP製品などを中心としたミッションクリティカルな基幹業務システムの提供も可能な仮想マシン「Gシリーズ」を追加した。
日本マイクロソフトは1月16日から、Microsoft Azureの日本データセンター東日本リージョンにおいて、Intel Xeonプロセッサ E5 v3ファミリーを採用した最大32コアCPU、500GBメモリの仮想マシン「Gシリーズ」の提供を開始する。これにより、日本の顧客に対して、SAPのERP製品などを中心としたミッションクリティカルな基幹業務システムの提供も可能になり、クラウド化を促進する計画だ。
Gシリーズでは、2コアCPUを搭載した「G1」インスタンスから、最大32コアを搭載し、顧客ごとに分離した専用ハードウェアに展開する「G5」インスタンスまで5つのラインアップを提供する。G5にPremium Storageを付加した「GS5」インスタンスでは、以下のワークロードがSAPから認定を受けている。
米Microsoft Cloud and Enterprise Groupのゼネラルマネージャー、マーク・ソウザ(Mark Souza)氏は、「大容量メモリを備えた仮想マシンであり、基幹業務アプリケーションに対応し、高速ストレージを必要とする大規模データベース向けの大規模仮想マシンも提供できる。8万 IOPSを超えるプレミアムストレージを提供する」とし、「日本国内の東日本リージョンから、低レイテンシで、高いパフォーマンスを実現するサービスを、拡張性、柔軟性をもって提供できる。コスト削減も実現できる」と自信を見せた。
SAPソリューションにおいてMicrosoft Azureが最適な理由は5つあるとソウザ氏は説明した。1つは、20年以上にわたるMicrosoftとSAPの協業関係があること。Microsoft本社には6人のSAPのエンジニアが常駐しているという。2つ目は、Azureによって迅速かつ簡単に使いはじめられる、導入と運用管理の容易性。3つ目はオンプレミス環境にある既存のIT資産を、シームレスにクラウドに拡張できるハイブリッド化に対応することだ。そして4つ目が、SAPの開発およびテスト環境のインフラを、オンデマンドで俊敏に構築できること。5つ目は、クラス最高のインフラサポートを提供している点だ。Microsoftは、SAP HANAのクラウド化においていいポジションにあるという。
さらに、日本マイクロソフト 業務執行役員 クラウド&エンタープライズビジネス本部の佐藤久本部長は、「Azureは、2014年2月のサービス開始以来、エンタープライズユーザーに安心して利用してもらうためのクラウドサービスとして提供してきた。基幹業務システムについての課題の多くは、Azureでクラウド化することで解決できる」と話した。
その理由はこうだ。まず、Azureはグローバルで36のデータセンターリージョンを持ち、すべての仮想マシンで99.95%のSLAを提供していること。日本の国内法に準拠しており、日本円での課金を行うほか、金融情報システムセンター安全対策基準(FISC)への対応など、日本のエンタープライズに最適なクラウドであること。そして、今回新たに、ミッションクリティカルな領域におけるクラウド化ニーズに応えることができるコンポーネントを用意したこと。
なお、すでに世界の一部地域では先行してGシリーズが提供されている中で、日本向けは東日本リージョンのみで、なおかつ米国などから少し遅れての提供となった点について佐藤氏は「今回のサービス提供のタイミングは最適であると考えている。インフラの整備とニーズの高まり、パートナーとの連携体制が整ったのが今だからだ」と説明した。
「クラウドがミッションクリティカルで利用されることで、日本のIT環境をもう一段上に高めていくことになる。そのためパートナーとの連携は不可欠だ。システムインテグレータ(SI)や、コンサルティングサービスメニューを用意する11社のSAP HANA on Azure対応サービスパートナーと強力に連携していくことになる」(佐藤氏)
SAP HANA on Azure対応サービスパートナーには、アビームコンサルティング、アクセンチュア、アバナード、富士通、日立ソリューションズ、インターネットイニシアティブ、電通国際情報サービス、JSOL、NEC、NTT DATA Global Solutions、SCSKが名を連ねる。
日本マイクロソフトでは、今後3年間で、250社に対して、SAPアプリケーションの採用および導入を計画している。佐藤氏は「すでに88社との話し合いが進んでいる。各サービスパートナーのトップユーザーが採用を検討しており、中には1社で500システムという大型の案件もある。セキュリティという観点でAzureへの期待が集まっている」と話した。
また、基幹業務アプリケーションに最適なGシリーズのほか、小規模な開発/テストワークロードに最適な「Av2シリーズ」、NoSQLおよびデータベースに最適な「Lシリーズ」、ビッグデータやHadoopワークロードに最適な「Sシリーズ」、GPUで加速されたワークロードに最適な「Nシリーズ」、CPUワークロードに最適な「Hシリーズ」などのIaaSラインアップも強化する。ソウザ氏は「基幹業務システムの対応をさらに強化することができる」と胸を張った。
なお、ベアメタルサービスについては、「現時点では詳細を明かせないが、近いうちに話ができる」と言うにとどめ、西日本リージョンでのサービス提供時期についても、明言を避けた。
会見では、Gシリーズを導入したアビームコンサルティング 執行役員 プリンシバルの中本雅也氏が登壇し、「SAPの認定を得るなど、SAP S/4HANAを構築する上での高いケーパビリティを実現できること、顧客のシビアなデータを取り扱うという点で、ISO27018に準拠したセキュアなサービスを提供していること、コンサルティングサービスをサプスクリプションモデルとして提供するなどの業態変更、海外ビジネスを支えるグローバルマネジメントシステムを構築するといった当社ビジネスとの親和性の観点から、Azureを採用した。自らが先行事例として取り組むことで、知見や経験を蓄積し、アビームクラウドをはじめとして、高品質なコンサルティングサービスを提供していくことができる」とそのメリットを強調した。
ソウザ氏は、Azureに関する最新の状況についても説明。「Microsoft Cloudは、唯一のハイパースケールクラウドであり、エンタープライズに対応し、シームレスにクラウドとオンプレミスを接続できるハイブリッドクラウドを提供している。現在、Fortune 500に名を連ねる企業のうち、85%がマイクロソフトクラウドを利用している」という。
なお、Azureの新規サブスクリプション契約件数は12万/月に、Azureのストレージオブジェクト数は100兆個に達している。また、3台に1台の仮想マシンがLinuxで実行されている。そして、今や1日でAzureに追加されるサーバ台数は、2011年の1年間に追加されたサーバ台数とほぼ同じ規模に上る。
またソウザ氏は、「かつては新しい機能が追加されるまでに2〜3年かかることもあったが、今では6カ月のサイクルで機能を追加している。直近12カ月では、Azureに600以上の機能を追加した。迅速にユーザーのニーズに対応し、業界のトレンドよりも速く対応することができている。これからの6カ月間でも、さまざまな機能を追加する予定だ」と述べた。
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