経営課題の解決手段、経営層と情シスの間に認識ギャップ──IDC調べ

IDCによると、国内ではデジタルトランスフォーメーション(DX)による変革への認識が広まる一方、経営課題の解決手段については、経営層と情報システム部門の間にITケイパビリティに対する認識ギャップが存在することが分かった。

» 2017年05月09日 11時40分 公開
[ITmedia]

 IDC Japanは5月8日、国内エンタープライズインフラストラクチャ市場に関するユーザー動向の調査結果を発表した。

 今回の調査は、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むにあたり、ITバイヤーが抱えている阻害要因について、経営課題の共有やテクノロジーの活用に関する認識、DX関連テクノロジーの活用実態、既存の基幹業務システムの課題などに関するユーザー調査を通して分析したもの。また、インフラストラクチャの視点から、ITバイヤーがDXを推進する上でのペインポイントがどこにあるのかを考察している。

 優先順位が最も高い経営課題をたずねたところ、上位3つは順に「新規ビジネスの創出」「営業力の強化」「ビジネスモデル変革」となった。同社は、成熟市場である国内において、DXによる変革を目指す必要があるとの認識が広まっていると指摘。これらの認識は経営層と情報システム部門の間で共有されているという。

 また、ITの活用によって解決したいとする経営課題は、経営層では「業務プロセスの改善/再構築」を挙げる回答者が突出。これに対して情報システム部門では順に「新規ビジネスの創出」「業務プロセスの改善/再構築」「ビジネスモデル変革」が数ポイント差で並ぶ結果となった。

Photo ITのケイパビリティに対する認識:「最優先の経営課題」と「ITによって解決したい経営課題」(Source: IDC Japan, 5/2017)

 この結果から、同社は「経営層と情報システム部門の間に存在するITのケイパビリティに対する認識ギャップ」が存在している可能性があると分析。経営課題を解決する上で、どのようにITを活用すべきなのか、そもそもITを活用できるのか、といった点について、経営層と情報システム部門では異なる認識を持っているとしている。

 また、情報システム部門は自社の抱える課題として「経営組織のIT化に対する理解度が低い」を挙げる回答者が目立っていたことから、情報システム部門では優先順位の高い経営課題をITで解決したいと考えているものの、経営組織のITに対する理解度が低く、攻めのIT活用が進まないといったジレンマを抱えているケースが少なくないと想定している。

 一方、基幹業務システムの抱える課題について、情報システム部門にたずねた質問では、「保守技術者の確保が困難」「保守性が悪い」「データベース技術の陳腐化による技術者の確保が困難」を挙げる回答者が突出。ユーザー調査では、これらの課題への対処方法として、リエンジニアリングを挙げる回答者(課題を抱えている回答者が母数)が4割を超えた。

Photo 基幹業務システムの課題への対処(Source: IDC Japan, 5/2017)。課題があると回答した情報システム部門担当者の43.5%が、解決方法にリエンジニアリングを挙げた

 この結果について、同社は、レガシーマイグレーションは一通り完了し、残っているプロプライエタリーシステムはカスタムアプリケーションが多いと想定。これは、延命してきた基幹業務システムを、業務プロセスやビジネスロジックを見直した上で、ITインフラの更新時に抜本的に構築し直す対処方法が望ましいとの意向が反映されたものと見ている。この背景には、DXに向けた新たなIT投資を行う上で、基幹業務システムの経済性、柔軟性、保守性を高めるとともに、競争環境の変化に備え、人的リソースを確保したいとの認識があると推測している。

 IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ グループマネージャーの福冨里志氏は、「ITバイヤーがDXに取り組む上で、『経営層と情報システム部門の間に存在するITのケイパビリティに対する認識ギャップ』と、一部のユーザー企業において『延命してきたプロプライエタリーシステム上の基幹業務システムの存在』が阻害要因となっている可能性が高い。ITバイヤーにおけるベンダー選定では、これらの阻害要因を取り除くためのコンサルテーションやソリューションの提案力が新たなベンダー選定基準として重視されるようになる」と述べている。

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