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» 2017年08月08日 07時00分 公開

榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』:時給650円のバイトが教えてくれた「働きがい」のある職場の条件 (3/4)

[榊巻亮,ITmedia]

時給650円の職場にあったのは?

 あんなにいい雰囲気の職場が生まれた理由を、いくつか考えてみると、今の多くの日本企業とは、ずいぶん違いがあるようだ。

いい意味で完全放置

 50人くらいのバイトに対して、社員は2人。店を開けるのも、閉めるのも、売り上げを入金するのも、全部バイトだった。新人を育成するのもバイト、育成のカリュラムを考えるのもバイト。クレームに対応するのもバイトだった。

 とにかく社員が少ないから、「アレやれ、コレやれ」なんて言われない。マイクロマネジメントなんてできない。だから、みんな自主的に、好き勝手なことをやっていた。

 発案したことを否定されることもまずない。「やってみたら?」と。そもそも何かをやるのに許可をもらった記憶さえほとんどない。特に時間外の活動は、全くの放置状態だった。

 でも、普通の会社はそうじゃない。細かく行動を管理しようとする。

ネガティブなフィードバックはほとんどない

 ミスした理由を問いただしたり、叱責(しっせき)したりする文化はなかった。

 ミスはよくあった。テイクアウトで商品を入れ忘れてしまうケースがよくあった……。

 でも誰も叱責しない。フォローし、一緒に再発防止を考える。なぜそうなったのかはよく分からない。でも、叱責しなくても、追求しなくても、ミスしたことは自覚できた。みんながフォローしてくれるから、余計に響いた。「あ、俺、イケてなかたったな……。みんなに迷惑かけちまった。クソ」という感覚があった。

 だから、自発的に「成長しよう、能力を上げよう」と思えた。外からプレッシャーをかけられなくても、自分でプレッシャーをかけていたのだ(横田さんが、まさに、この話をしていた)。これは、うまく言えないが、健全な成長をもたらしていた気がする。

 でも、多くの企業はそうじゃない。叱責と追求が日常の会社も多い。叱責で人は成長するのだろうか? 自分で気付いて努力する方が楽しいし、伸びるんじゃないか。

複数のタスクがあって、仕事を選べた

 シフトの時間も、タスクも選べた。ポテトが好きなやつは、ポテトを中心に仕事をすることもできた。昼のピーク時のお祭り騒ぎが好きなやつも、アイドルタイムののんびりした雰囲気が好きなやつも、自分で選べた。

 苦手な仕事は積極的にやらなくてもよかった。他に得意なやつがいれば任せて、もっとパフォーマンスが出せるところ、楽しいところで仕事をすればよかった。

 一方で、もっと難易度の高い仕事がしたければ、スキルさえ身に付ければやらせてもらえる。だから、仕事がつまらないなら、自分で楽しいと思える仕事にチャレンジすればよかった。僕は実際、クロージングの仕事がしたくて、先輩にトレーニングしてもらった。

 強制的にやらされる仕事や、それしかやっちゃダメ、といった状況はほとんどなかった。

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 普通の会社は、仕事が与えられ、苦手だろうが嫌いだろうがやるしかない。

 マックでは、一通り仕事を覚えて、最低限の仕事をこなせるようにはしておくけど、後は好きな領域で貢献すればよかった。

だから、自然と自分の興味のある領域に多くの時間を割いていた。興味のある領域だからパフォーマンスも上がる。いずれ第一人者として認められる。さらにいろいろ工夫したくなる。そういうサイクルが回っていたのかもしれない。

結局「何を目指しているのか」が明確だった

 お客さんにタイムリーに良い商品を提供する、それもできるだけ効率よく。そしてお客さんに笑顔になってもらいたい――。それが明確なミッションだった。別に明示的に掲げられていたわけじゃないけど、みんな、暗黙的に分かっていた。

 決まったメニューを提供するマックだから、「そりゃそうだろう」ともいえるかもしれない。でも、目指すところが明確だったからこそ、そのために何をすればよいか、店をどんな状態に保てばいいか、各自が勝手に考えられる状況にあったのだと思う。

 よく「言われたことしかやらない」という言葉を聞くが、最終的に何を目指しているか分からないのに、自発的に動けるわけない。言われたこと以上のことをやるには、明確な目的意識が必要だ。そして、自律性を引き出すためには、目指す姿の共有化が絶対条件だ。

 マックのケースは、何もしなくても分かりやすい「目指す姿」があったのかもしれない。

集まったメンバーの価値観が比較的そろっていた

 「バイトは、お金を稼ぐ手段」とだけ思っているやつは、いなかった。そもそも時給650円じゃ稼げない(笑)。「金銭ではない何か」に価値を見いだしていた連中が集まっていた(厳密に言うと、稼ぎを大事にする人たちは、そもそもこなかった)。

 金銭以外の何か。それが何なのかは、人によって違っていた。貢献しているという感覚、所属しているという感覚、仲間といる感覚。仲間たちは超絶個性的だったが、根っこの価値観は一緒だったように思う。

 普通の企業で、給料以外の働く価値を見いだしている人は、どのくらいいるのだろうか?

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