三井住友海上のRPA導入、そのキーマンは知る人ぞ知るExcel VBAマスターだった【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(3/4 ページ)

» 2018年01月24日 08時00分 公開
[大内孝子ITmedia]

 「こうした取り組みは、最初からルールがあったわけではなく1つ1つ社内で論議し、調整していきました。システム部門の担当社員がPC操作自動化のメリットを理解してくれ、常に前向きに検討してくれたのも大きかったです。

 もちろん、システム部門だけでなく、ビジネス部門のシステムオーナー部とも連携をしています。制御する対象が社内システムなので、各オーナーにも許可を得る必要があるためです。大量のトランザクションを送るとダウンしてしまう可能性もあるので、そういうことはしない、といった約束をチェックリストにまとめていきました。RPAで言う、ロボットを作るときの条件書みたいなものですね」(近田さん)

 例えば、自動車保険の保険料システムを制御するロボットでは、対象システムのオーナーである自動車保険部に、そのロボットのオーナーにもなってもらい、検証も行ってもらう。彼らは最もシステムの挙動を熟知しているため的確な検証を行うことができる。彼らにとっても担当システムの機能向上につながるため、Win-Winの関係になっている。こうした関係性は、RPAソリューションを導入し、ロボット開発を進める際にも助けになったという。

RPAは現代によみがえった『小人の靴屋』

 こうしたプロジェクト推進手法は、RPA導入の検討時にも生かされている。まず、ソリューション選定の際には、機能と作りやすさ、メンテナンスのしやすさを重視。1つ1つPoC版を入手し、共同でプロジェクトを進めるアクセンチュアと協力し、トライアルを行った。同じことができたとしても、そのプロセスやアプローチは異なる。「作り直しも相当あった」と振り返る。

 「特に機能や性能の評価をしっかりと行いました。例えば『Outlookを使ったメール送信』という動作を1つ取っても、アプリケーション上の送信ボタンを押すロボットと、Outlookのsendmailメソッドを直接たたくロボットがある。実際に動いているところを見れば、送信ボタンを押しているのかどうか分かります。処理スピードの差も顕著に表れます。私がアクセンチュアさんに技術的な質問をしても、的確に答えてくれたので助かりました」(近田さん)

 こうした評価が可能だったのも、内製ツールの開発で積み上げてきた経験から、何を優先すべきかがはっきりしていたためだ。そんな近田さんは、RPAを『小人の靴屋』だと表現する。

 「RPAというのは、まさに現代によみがえった『小人の靴屋』です。おじいさんが営む靴屋に、夜になると小人が現れて靴を作ってくれる。つまり、人間がPC上で行う定型的な作業を代替してくれるもの。これがRPAの本質だと思っています」(近田さん)

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