クリーニング屋の副社長は元DJ!? 独学で作ったAIで「無人店舗」を目指すディープラーニングで洗濯物の種類を識別(2/3 ページ)

» 2018年04月12日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 2015年からは、チャットワークのAPIを使った報告書作成用チャットBot「SUZY(スージー)さん」や、シフト表を自動生成するチャットBot「太志(フトシ)くん」を開発。「今後は、スマートスピーカーによる音声入力にも対応させたい」と田原さんは話す。

 そんな中、2015年11月に「TensorFlow」がオープンソース化。機械学習という、新たな領域を学ぶことに若干の抵抗はあったものの、周りの人もあまり知識がない状況ということが分かり「これはチャンスだ」と田原さんは考えた。英語も数学も分からないという難しい状況だったが、九州工業大学で研究を進めていた教授の協力を取り付け、学習を進めていったという。

photo エルアンドエーで、田原さんは段階的に業務のIT化を進めていった

機械学習を使えば、クリーニング屋の無人店舗が作れる?

photo 大量の画像データが必要だと分かった田原さんは、店内の写真を約3秒ごとに撮影するシステムを作ったという

 田原さんが機械学習に可能性を感じたのは、「無人店舗を作れる可能性がある」という点だ。街中にあるクリーニング店の半数以上は、洗濯施設を持たず、洗濯物の受け取りや保管、引き渡しのみを行う「取次店」だ。もし、画像解析で洗濯物の種類を特定し、分類できれば、スタッフがいなくても業務上の問題はない。

 昨今は、ノンプログラミングで開発できる環境が整いつつあるとはいえ、開発の“素人”である田原さんが、いきなり機械学習を用いたシステムを作れるはずもない。大量の画像データが必要だということが分かり、勉強を進めながら、9時から19時までの営業時間中、数秒おきに写真を撮影する仕掛けを作った。

 そして、約2年集めた撮影データを集計し、判別システムに利用できる教師データ約2万5000枚を、約1カ月かけて人力で(!)選別した。田原さんによれば、教師用に使えるデータは「約1%程度だった」そうだ。

 こうして2017年11月には、独自の画像認識システムのβ版が完成した。現在、実店舗での実証実験を行っているという。店内に設置したWebカメラが衣類を捉えると、それがスーツかワイシャツか、という判別を自動で行う。取り扱いが多く、十分なデータが集まっているスーツやズボン、ワイシャツなどについては、約99%の精度で認識できるようになった一方、それ以外のジャンルについては「まだまだ精度は高くない」と田原さんは話す。目指すはスカートやコートなども含めた、24種類の分類だ。

 田原さんはここまでの開発を振り返り、ビジネスにおける機械学習の活用には“4つのカベ”があることが分かったと話す。

photo 画像認識システム(β版)によって、ズボンを判別している様子

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