2015年からは、チャットワークのAPIを使った報告書作成用チャットBot「SUZY(スージー)さん」や、シフト表を自動生成するチャットBot「太志(フトシ)くん」を開発。「今後は、スマートスピーカーによる音声入力にも対応させたい」と田原さんは話す。
そんな中、2015年11月に「TensorFlow」がオープンソース化。機械学習という、新たな領域を学ぶことに若干の抵抗はあったものの、周りの人もあまり知識がない状況ということが分かり「これはチャンスだ」と田原さんは考えた。英語も数学も分からないという難しい状況だったが、九州工業大学で研究を進めていた教授の協力を取り付け、学習を進めていったという。
田原さんが機械学習に可能性を感じたのは、「無人店舗を作れる可能性がある」という点だ。街中にあるクリーニング店の半数以上は、洗濯施設を持たず、洗濯物の受け取りや保管、引き渡しのみを行う「取次店」だ。もし、画像解析で洗濯物の種類を特定し、分類できれば、スタッフがいなくても業務上の問題はない。
昨今は、ノンプログラミングで開発できる環境が整いつつあるとはいえ、開発の“素人”である田原さんが、いきなり機械学習を用いたシステムを作れるはずもない。大量の画像データが必要だということが分かり、勉強を進めながら、9時から19時までの営業時間中、数秒おきに写真を撮影する仕掛けを作った。
そして、約2年集めた撮影データを集計し、判別システムに利用できる教師データ約2万5000枚を、約1カ月かけて人力で(!)選別した。田原さんによれば、教師用に使えるデータは「約1%程度だった」そうだ。
こうして2017年11月には、独自の画像認識システムのβ版が完成した。現在、実店舗での実証実験を行っているという。店内に設置したWebカメラが衣類を捉えると、それがスーツかワイシャツか、という判別を自動で行う。取り扱いが多く、十分なデータが集まっているスーツやズボン、ワイシャツなどについては、約99%の精度で認識できるようになった一方、それ以外のジャンルについては「まだまだ精度は高くない」と田原さんは話す。目指すはスカートやコートなども含めた、24種類の分類だ。
田原さんはここまでの開発を振り返り、ビジネスにおける機械学習の活用には“4つのカベ”があることが分かったと話す。
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