日本のCIOは「CxO四天王の中で最弱」? この状況はどうしたら変わるのかCIOへの道(4/5 ページ)

» 2018年08月20日 07時00分 公開

中野氏 ただ、日本ではCIO自体が割と希少で、たとえCIOがいたとしても、総務部長や管理本部長、CTOが兼務したりするケースも多いですよね。システムに詳しそうな人やバックオフィスの偉い人がCIO的な何かをやってしまうような話も割と聞きます。

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 あと、日本においてCIOは、CxOの中でも一番地味というか、「四天王の中で最弱」みたいな感が否めない。CIOは仕事として要求されるハードルはとてつもなく高いと思うのですけどね……。経営とシステム、テクノロジーとコーポレートの全てについての素養が必要とされるし、知っておくべき知識や経験の範囲がとにかく広い。たぶん難しさはCOOと同列くらいではあると思うんです。後、米国ではCxOの中で最もクビになりやすいという話も聞きます。「リスクまで高いのかよ!」と(笑)。セキュリティとか多額のコストがかかりますから、詰め腹を切らされやすいのかなと。

 おまけに昨今では、CIOの後継的なCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)という役職も出てきて、CIOの主戦場であったERPなどのバックエンドだけではなく、「CRMやマーケティングのようなフロント系も見た上で、DWH、BIをはじめとしたデータ周りも見るのだ」という話になってきている。もう、何でもありですよね。つまりは「神になれ」というのかと(笑)。

 CIOについて今の日本の状況は、逆風が吹いているというか荒野で、これから力を合わせて開拓していかなければならないと思っています。そんな中でも、問題意識を持って前に進んでいる先輩方はたくさんいらっしゃって、チャンスがあれば話をお聞きしたいと思っています。例えばフジテックCIOの友岡賢二さんは、「(荒野)だからこそやるのだ」とおっしゃってあちこちで布教活動をなさっていてすごいなと尊敬しています。私もエンタープライズ系システムかいわいの矛盾や行き詰まりには長年、疑問を持っているので、「このまま黙っていたらだめだ」と思うようになりました。

 一方で、経営はIT以外に考えなければならないことがいろいろとあり過ぎて、なかなかITに対してリソースを割けないのも理解できます。ただ、日本企業のシステム投資の現状を見ると、国際競争力が下がっていることとの関連性を感じます。システムは仕組み化や標準化の大きな要素ですから。

 もしかすると、システムの成熟度と経営のそれとは関係があるのではないか、と思うのです。「システムは経営を写す鏡」かもしれないと。システム周りがビシッとしている会社は経営もしっかりとしているような気がするのですよ。少なくとも、経営が「システムは難しくて分からない」と言っているようでは済まなくなってきている。そんなことでは、国際市場で勝っている会社と勝負にならない。

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白川氏 私自身のコンサル経験から言うと、2割ぐらいは経営層が強い思いを持ってプロジェクトにしっかりコミットしていますね。それに日本企業のプロジェクトを支援する場合は、欧米型のトップダウンとは違って、私たちコンサルタントが課長クラス、部長クラスからヒアリングをして、それをトップ層に上げて、経営のバックアップを得てから現場に下ろすという、いわゆる「ミドルアップ・アンド・ダウン」の形がほとんどです。日本企業の場合は、もう、これでやるしかないと思ってます。あとは、それをどうやってスピード感を損なわずにやるかですね。

中野氏 私の中に、ミドルアップ・アンド・ダウンで本当に勝てるのか――という疑問があるんですよね。日本の会社には、一定の自治権を認められたミドル層がたくさんいて、彼らとコンセンサスをとるためには“泥くさい交渉”が必要です。部長クラスもそうなのですが、企業規模のわりに事業部や子会社が多かったり、分かれている必然性がいまいち分からない会社や組織が結構ある。職務権限がはっきりしない役職、マネジャーではない係長や部長代理・副部長などで、誰が何を決められるかが分からない。さらには、異常に多い兼務で責任範囲があいまいになる。その結果、例外処理が増え、プロセスも複雑化して意思決定が遅くなってしまうのです。

 それで北米型企業のようなスピードと成果を出せるのかな、と思うわけです。スピードを出すために組織を小さく切り分ければ、確かに小回りは利くかもしれないけれど、ベクトル合わせができなくてトップスピードが出ないようなことになりかねない。特に欧米のWebサービス企業のスピードは強烈なので勝てるのかなと。

白川氏 ミドルアップでスピード感を出したり全体最適を可能にしたりするために、泥くさく働くのが私たちコンサルタントの役目だと思っています。例えば各部門の責任者やキーマンを一堂に集めてプロジェクトの立ち上げ合宿などをやることもあって、そういう場では「おたくの部門最適なんてどうでもいい! ここに集まった皆で、本当の全社最適を考えるんですよ!」というモードにいかに持っていけるかが私たちの腕の見せどころだと思ってます。確かに常にそう、うまくいくわけではありませんが、やりようはいくらでもあると思います。

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