人工知能にカワイイ服を“作って”もらう? カタログ大手「ニッセン」のディープラーニング活用紙からWebへのシフト(1/2 ページ)

かつて紙のカタログで人気を博した通販大手の「ニッセン」だが、今は売り上げが伸び悩み、Web通販へのシフトを迫られている。売り上げ回復のカギとして、同社は今ディープラーニング活用に本腰を入れているのだという。

» 2018年10月15日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 「かわいいは作れる」なんて言葉もあるが、実際にユーザーが“カワイイ”と思うであろう服を人工知能(AI)に作り出してもらう――今、カタログ通販大手の「ニッセン」では、そんな実験が行われているのをご存じだろうか。こうした実験をはじめとして、同社では今、ディープラーニングを活用したさまざまな施策を展開しているという。

photo カタログ通販大手の「ニッセン」
photo ニッセン セールス本部の松田実法さん。2018年9月に行われた「Google Cloud Next '18 in Tokyo」で講演を行った

 従来は紙の分厚いカタログで成功を収めてきた同社だが、ECサイトの急速な普及に押される形で業績が悪化。上場を廃止し、経営再建に努めている。その復活のカギとなるのがインターネット通販の売り上げだ。

 「ニッセンでは数十万点の商品を扱っていますが、これを人間が全て把握するのは不可能に近い。インターネット通販なので、レコメンド機能などもありますが、紙のカタログよりさまざまなデータが取りやすくなっているとはいえ、似たデザインの服を提案したり、ニーズに合致した商品をお薦めしたりするのは簡単なことではありません」

 こう話すのはニッセンのデータサイエンティスト、松田実法さんだ。同社ではこれまでもユーザーの行動履歴をベースとしたレコメンドエンジンを導入していたものの、新商品の場合はデータがなく、レコメンドが出てこないなどといった課題があったという。

ニッセンが「自社開発AI」にこだわった理由

 自然言語処理や画像認識におけるディープラーニングの精度が高いことを知り、松田さんが導入を検討したのは2017年の初めごろ。ニッセンには、購買履歴やWeb上の行動履歴の他、商品のコピーやカスタマーレビューなど数百万件の文章、数十万点の商品画像など、膨大なデータを持っている。これらのデータを基に、レコメンドの精度を高めようとしたのだ。

 ニッセンでは、機械学習のプラットフォームにGoogle Cloud Platform(GCP)を選んだが、松田氏によればGCPには、以下のようなメリットがあるという。

  • 高速なデータベース
  • Cloud TPUによって、HPC並みの計算を安価で行える
  • 強力な学習済みモデルがある
  • 自社でモデルをカスタマイズできる
photo 従来の機械学習メソッドに加え、ディープラーニングをレコメンドシステムに取り入れた

 4点目にもあるように「システムの自社開発」にこだわったのも大きなポイントだ。せっかくAIを導入しても、外注の場合、そのロジックは“ブラックボックス”になってしまうことが多い。Webの速いスピードについていくためには、自社で知見を溜め、ビジネスサイドに素早くフィードバックをすることが必要だと考えたのだ。

 スモールスタートということで、開発は松田さん一人で行い、数カ月後に新たなレコメンドシステムが完成。衣類を中心に大きな成果が上がっているという。

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