リレーションシップバンキング推進SaaSで日本の金融機関の顧客体験は変わるか

金融機関のデジタル変革を支援する「クラウドバンキングプラットフォーム」が日本法人の活動を本格化させる。リレーションシップバンキング推進に向け、既に複数の金融機関と導入に向けた議論が進む状況だという。

» 2020年12月07日 10時00分 公開
[原田美穂ITmedia]

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1 nCino 野村逸紀氏(写真提供:nCino) nCino参加から4週間ほどのタイミングで取材した。「nCinoは個人的にも驚くほど多様性を重視する文化が強い。出身が異なるさまざまな人材がフラットに働けることから、従業員自身も多様性を重視するタレントがそろう、バランスのよい組織」との感想を語ってくれた。

 nCino(エヌシーノ)は「クラウドバンキングプラットフォーム」を提供する米国発の企業だ。金融機関に特化した業務支援環境を提供する。既に5カ国、7拠点のオフィスを持ち、採用する金融機関は10カ国に上る。日本でもジャパン・クラウド・コンピューティング(JCC)の支援を受けて法人も設立し、国内金融機関の業務改革支援を本格化させる。

 日本市場への本気度は、日本法人社長の人前にも現れている。2020年11月1日、同社日本法人(nCino株式会社)の社長に、EMCジャパン(デル・テクノロジーズ)で、流通、物流、小売業界などのマーケットの責任者を務め、デル・テクノロジーズ合併後では組織統合で中心的な役割を担った野村逸紀氏が就任した。企業の基幹系システムの改革を中心としたDX推進をリードしてきた経験を金融業界のDX推進に生かす考えだ。

 野村氏は「日本の金融機関の皆さんが今まさに欲している機能を提供できる」と語る。「nCinoは日本の金融機関が顧客を中心としたリレーショナルバンクになるための包括的な支援ができる」という。

地銀、信金再編とDXへの要請に対応「リレーションシップバンキング」を支えるSaaSを目指す

 nCinoはSalesforce.comが提供するPaaS「Force.com」を基盤に、金融業界に特化した業務支援SaaSだ。もともとは米LiveOak銀行の社内システムから生まれたサービスで、同行の業務システムを基に2011年末に法人として独立し、現在既に1200以上の銀行を顧客に抱える。金融庁の外郭団体である金融情報システムセンター(FISC)が定める「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書」(FISC安全対策基準)のガイドラインに準拠しており、SaaSの機能を最新に維持するため、これまで売り上げの25%を開発費に充ててきた実績がある。

 nCinoは金融機関の業務のうち、「情報系」に分類される業務の効率化を実現する機能を提供する。具体的には顧客関係管理(CRM)や契約文書などの管理、与信管理などのシステムを提供する。これだけでは金融機関の既存情報系システムの置き換えのように見えるが、実際にはそうではない。既存業務の効率を高めるためのデータの一元管理を進め、金融機関の生産性向上や顧客体験の高度化を支援する仕組みだ。

2 nCinoの提供機能(出典:nCino)

 野村氏はnCinoを「『リレーションシップバンキング』の機能強化を支援するサービス」と説明する。リレーションシップバンキングは、財務データの整備が十分でない中小企業を中心に金融機関が経営支援やビジネスマッチング、人材育成支援などの融資以外の支援を継続的に提供することで、中小企業の経営を助けながら企業の経営情報を長期的に見守る金融機関のあり方を指す。情報系システムがSaaSになると、なぜリレーションシップバンキングにつながるのだろうか。

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