“仮想化”の準備には、標準化やプロセスの整備を特集:実用フェイズに入った仮想化(3)(2/2 ページ)

» 2009年09月14日 12時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]
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本番実用には管理ツールの進化が必要

――各製品の管理面はどのように評価されますか?

田原氏 仮想マシンを制御するための基本的な機能は、どの製品もあまり変わりません。それが標準機能となっているか、別ツールになっているか、上位エディションで提供されているか、あるいは設定できる項目のきめ細かさが製品によって違うので、そこがチェックポイントになるでしょう。

 監視の面では仮装化ソフトウェアの管理ツールだけでは、できることが限られていると感じます。現状ではアプリケーションレベルの監視やプロセス監視ができませんから、本格的な運用管理にはこれを補完するツールを併用しないと難しいのではないかと思います。

 このあたりは、いわゆる運用管理ツール??「JP1」や「System Walker」、私たちの製品でいえば「千手」(Senju Family)などですが、これらが力を入れて実装してきています。現状では対応する仮想化ソフトが限られていたりしますが、最終的にはそういったツールで一元管理できるようになるとよいのではないかと思います。

――その場合、仮想環境と物理環境も一元管理できるような形になりますね。

 そうですね。仮想化によってIT全体が複雑化するのは間違いありませんから、それを可視化することが重要になると思います。1つの画面から物理ホストと仮想マシンが両方とも見え、依存関係がひと目で分かるようになっていないと、大規模な仮想環境の運用管理は実務的にちょっと難しいでしょうね。

 今後、いろいろな仮想化プラットフォームが1つのデータセンター内で使われることが考えられますから、管理ツールは最終的にはそうしたヘテロな環境にも対応することが求められるのではないでしょうか。

ルールとプロセスを整備せよ

――運用管理ツール以外に仮想化導入のポイントは何かありますか?

ALT 野村総合研究所 情報技術本部 基盤技術部 主任テクニカルエンジニア 田原広海氏

田原氏 「標準化」がキーワードではないかと思います。例えば新しく仮想マシンをプロビジョニングするとき、いちいち要件をヒアリングして設定するのではなく、あらかじめ要件を集約して汎用性の高いテンプレートを作っておくのです。“簡単なテスト環境のパターン”、“部門レベル・アプリケーションの本番環境のパターン”みたいものを作っておくと、管理しやすいのではないかと思います。ですから仮想化導入の前準備としてテンプレートを設計して、それを前提にリソース配分のポリシーやルールを決めておくわけです。

 また、仮想化では複数のシステムが1つのハードウェア筐体に相乗りする構成になるので、仮想マシンごとに負荷状況とピーク特性を正しく把握して、ピークが重ならないような組み合わせでプロビジョニングにすることが求められます。そのためには社内にどんなシステムが動いていて、それぞれのミッションクリティカル度やピーク特性をすべて洗い出さなければなりません。これはシステムが大きければ大きいほど大変だと思いますね。

 それから仮想環境になると手軽に仮想マシンが作れるようになるので、スプロール現象に注意する必要があります。これを抑制するには一貫した管理プロセス??仮想マシンを作ってほしいという申請に対して、検討・承認する人がいて、適切なホスト上にそれをプロビジョニングするという手順を、ライフサイクルに組み込むことです。

 リソースを共有して使うという意味では、コスト負担の問題も当然でてきます。固定的に配賦を決めてしまうのか、使用量に応じて請求するのか??前者では割り当てられた容量を使い切らないという無駄が発生する可能性があり、後者だと課金する仕組みが必要になります。この部分のルールをきちんと決めておかないと、後でもめる場合があるかもしれません。

 これらは導入初期にしっかりと決めておくことが大切だと思います。仮想化では自動化にフォーカスが当たることもありますが、自動化のためにはポリシーがきちんとしていなければなりません。日本ではまだ導入率は低いのですが、海外では自働化機能を導入されているユーザーさんは多いようです。仮想マシン生成やメモリ増強などをワークフロー・ツール上で処理してプロビジョニングをしたり、仮想マシンの負荷状況に応じて自動で負荷平準化したりといったフェイズにまで成熟したときには複雑なポリシー定義が必須になってきますので、プロセス整備やルール運用をしっかりしておくことが大切だと思いますね。

スモールスタートで経験を

――仮想化はどこから手を付ければよいのでしょうか?

田原氏 まずはスモールスタートで使ってみることです。ユーザーさんの中には、物理環境を仮想環境に移行するPtoV(P2V)ツールを使うことを考えられている方がいらっしゃいますが、これさえあればどんどん移行できると思っている場合が多いんですね。ところがPtoVではすんなりいかないケースが多いのです。こればかりは実際にやってみないと分からないので、そうした意味も含めて移行の検証やプロトタイプチェックのような形で、動作検証や性能検証を実機で行ってみることです。そうすると、出来ることと出来ないことが見えてくるので、そのうえでうまくいくやり方を見付けて広く展開していくのがよいのではないかと思います。

 仮想化では「コスト削減」と「全体最適」がよくうたわれますが、それをやるためには実機検証、システムの棚卸し、標準化やプロセス整備など、いろいろ大変な部分があります。管理も恐らく複雑になると思います。サーバ台数は減りますが、運用コストが減るかどうかは細かく検討してみないと分かりません。そうはいってもさまざまなメリットがあることは確かです。何が大切かをしっかり考えて、要件や目的を明確にすることが大切ではないでしょうか。

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