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BD支持は“ソニーグループだから”だけではない〜Sony Pictures特集:次世代DVDへの助走(1/2 ページ)

» 2004年02月20日 14時01分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 前回の記事で紹介したWarner Home Videoは、DVD Forum重視の姿勢を貫き、中立との立場を明確にしていた。Blu-ray DiscなのかAODなのかは、あくまでもビジネスとしての判断で、どちらかのサポートではないと、彼らは明言している。しかし、現時点でHD DVDのROM規格として仕様が通過しているAOD寄り、という印象は拭えなかった。

 これに対してSony Pictures Entertainmentは、BD(Blu-ray Disc)への支持を明確に口にしている映画スタジオである(もちろんソニー・グループの一員であることが、判断の主因ではあるだろうが)。今回は引き続き映画スタジオ側の声として、Sony Picturesへのインタビューをお伝えしたい。

“ソニーグループだから”だけが理由ではない

 今回、主に話をうかがったのはSony Picturesのアドバンストテクノロジ担当副社長Don Eklund氏である。またインタビューには、Sony Corporation of Americaのブルーレイディスク・グループ上席副社長Michael R. Fidler氏も同席した。Eklund氏は、Sony Picture内で次世代光ディスク向けコンテンツに関する技術を担当、Fidler氏はソニーで15年以上、光ディスクの開発とマーケティングに従事している。

photo Sony Picturesのアドバンストテクノロジ担当副社長、Don Eklund氏

 興味深いのは、この2人が同じ秘書を共有し、隣同士にオフィスの部屋を持っていること。つまり、日常的にSony PicturesとSony Americaは共同作業を行っていることになる。やはり共有している応接室には、市販Blu-rayソフトのテストパッケージまで作られていた。準備は着々と進められ、かなり具体的なところにまで進んでいることがうかがえる。

 まず、昨年のCEATEC以来、公式にBD支持を打ち出している理由について聞いてみた。もちろん、Sony Pictureはソニーグループの一員ではあるが、一方で独立企業として映画産業に携わっている立場でもある。

 「確かに、われわれはソニーとの強いパートナーシップを持っている。そのことがBD支持に繋がっていることは否定しない。しかし、それだけで簡単にBD支持を打ち出したりはしない。光ディスクコンテンツは、われわれの主幹業務であり非常に重要なものだからだ。BD支持のもっとも大きな理由は、その容量の大きさにある。良い品質を届けるためには、大きな容量、将来の拡張性が非常に重要だと考えている」(Eklund氏)。

 AOD陣営は、DVDが使っているMPEG2の技術よりも進んだ動画コーデックを採用すれば、AODの1層15Gバイトでも十分な容量だと話しているが、Eklund氏の意見は異なる。

 「MPEG2は十分に熟成されたコーデックだ。ソニーはすでに多くの高品質なMPEG2デバイスを持っているし、それは他社でも同じこと。放送用にも広く使われている。すでに十分なクオリティとパフォーマンスを得ているのに、それを新しいデバイスで置き換えるというのはあまり現実的ではない。

 そもそも、われわれの評価ではH.264はMPEG2よりも高品質という結果にはなっていない。市場はHDコンテンツに対して高品質を望んでおり、決して高品質化には繋がらないH.264の採用はベターな選択ではないと思う」(Eklund氏)。

 またH.264の欠点として指摘されている細かなディテールが消える問題に関しても「フィルムグレイン(粒子)はとても大切なものだ。それはフィルムの中に含まれている情報であり、グレインを利用して映像の雰囲気を表現する場合もある。オリジナルの映像にグレインが存在するのであれば、それは映画の一部であり、コンテンツの中に入らなければならない。テレビのような絵では、映画スタジオは満足できない」(Eklund氏)。

製造コストの問題はいずれ解決できる

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