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» 2004年07月28日 21時10分 UPDATE

“AV製品のソニー”が窮地に

ソニーが発表した2004年度第1四半期の業績は、営業利益が前年同期比4割減という厳しい結果に。原因は円高の影響だけではない。かつて同社の収益源だった“AV製品”が足を引っ張っているのだ。

[西坂真人,ITmedia]

 これまで、高収益でソニーの屋台骨を支えてきた“AV製品”が、今、窮地に立たされている。

 ソニーは7月28日、2004年度第1四半期(4-6月期連結決算)の業績を発表。売上高は1兆6121億円で前年同期(1兆6038億円)と比べて0.5%増とほぼ横ばいで推移したものの、営業利益は98億円と前年同期(167億円)から69億円(41.4%マイナス)も減益となる厳しい結果になった。

photo 2004年度第1四半期の業績を説明する同社執行役副社長兼グループCSO&CFOの井原勝美氏(左)と執行役常務の湯原隆男氏(右)

 海外売り上げ比率の大きい同社にとって、円高基調の近年の為替動向が収益に大きく影響したカタチ。「円高の影響を除いた現地通貨ベースでは27%の増益となる計算で、“増収増益”を達成している」(井原氏)と同社の姿勢はあくまでも強気だ。

 だが、売上高/利益の内容を製品カテゴリー別にじっくりみてみると、大幅減益の原因は円高だけではないことが浮き彫りになってくる。

photo エレクトロニクス分野の製品カテゴリー別売上高と営業利益

 売り上げ全体の3分の2を占める主力のエレクトロニクス分野は、売上高だけでは前年同期の1兆1003億円に対して今四半期は1兆980億円と微減にとどまっているかに見える。製品カテゴリー別でも、オーディオが180億円減と足を引っ張っているものの、テレビ(92億円増)やビデオ(268億円増)は大幅増収となり、これらAV製品全体では180億円のプラスになっている。

 だが、営業利益を製品カテゴリー別に見ると、ビデオ/テレビ/オーディオすべてが前年割れとなっており、オーディオ(3億円損失)とテレビ(85億円損失)は赤字を出しているのだ。そこには、かつて収益の柱となっていたAV製品の面影はない。

 「テレビが増収減益になった原因は(デバイスを自社生産して利益率の高かった)ブラウン管テレビの落ち込み。液晶/プラズマなどフラットパネルテレビは当社でも大きく伸びているが、残念ながらフラットパネルテレビの(製造)コストが(ブラウン管に)追いついていない。もちろん、テレビは海外売り上げ比率が高いので円高の影響をまともに受けたということも大きな原因」(湯原氏)

 つまり、液晶/プラズマテレビの表示パネルを内製せずに他社から購入しているために、ブラウン管のような高い利益率を確保できないでいるのだ。同社はFEDや有機ELなどの開発を進めており、次世代ディスプレイで利益率のかせげる“内製化”を狙うが、それまでは外部調達の苦しい状況が続く。

 テレビ以上に傷口が深そうなのは「オーディオ」だ。

 MD/CDといったデジタルオーディオ分野で業界を牽引してきた同社は、オーディオ市場が活気づく4-6月の第1四半期では過去一度も赤字を出したことはなかった。それが、今年第1四半期は、初めて3億円の赤字を計上している。

 今、ポータブルオーディオの世界は、アップルコンピュータのiPodが切り拓いた“HDD音楽プレーヤー”をはじめとする「ネットワークオーディオ」という新たな市場で賑わっている。同社のオーディオ稼ぎ頭だったポータブルMD/CDプレーヤーの市場が、これら“新進のポータブルオーディオ”に食われてしまったためにオーディオ収益が激減してしまったのだ。

 同社も「VAIO Pocket」「HDDウォークマン」を市場投入して巻き返しを図るが、出遅れ感は否めない。

 だが同社経営陣は、「ネットワークオーディオの市場は始まったばかり」と口を揃える。

 「出遅れたわけではない。当社も4年前から(ネットワークウォークマン)でネットワークオーディオに参入していたが、著作権保護やダウンロードの仕組みを複雑にしたため売れなかった。今後はHDDウォークマンやHi-MDなどでネットワークからダウンロードして楽しむといった提案をしていく。この市場はこれから拡大していくという認識」(湯原氏)

 「コネクトというダウンロードサービスを今始めたばかりだが、ソニーの強みは、使いやすいユーザーインタフェース、HDD容量、音質、バッテリー持続時間などといったポータブルオーディオに必要な圧倒的なハードの品質。HDDプレーヤーだけでなく、Hi-MDなどバラエティ豊かな商品ラインアップで、ユーザーに最適なポータブルオーディオを選択してもらえる。音楽から映像へとコンテンツ配信の将来的な可能性もある。市場はこれから」(井原氏)

 なお、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズなど持分法適用会社の業績好転で投資損益が改善し、純利益は前年同期比大幅増の232億円となっている。

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