「DIGA」シリーズの新しいフラグシップモデル「DMR-E500H」は、二面性を持ったDVDレコーダーだ。ホームサーバというパソコン寄りの一面が大きな特徴だが、同時にハイエンドAV機器としてのさまざまなフューチャーが盛り込まれ、「ホームシアター用途にも適している」(松下)。
DMR-E500Hは、2002年の「CEATEC JAPAN」以来、展示会の常連となっていた松下のコンセプトモデル「AVCサーバー」がベースになっている。AVCサーバーの機能は、これまでもブロードバンドレシーバーやMPEG-4録画機能といった形でDIGAに採用されてきたが、ネットワークを介してパソコンや他の端末に動画/静止画を配信する機能を盛り込んだインパクトは大きい。
たとえば、DIGAに録画した番組を見たいが、家族がテレビを見ていて使えないとき。ビデオテープだったら自分の部屋に持っていけるが、HDDに録画したものはDVDメディアにダビングしない限り持ち出せない。同社によると、これが「HDD唯一の弱点」であり、DMR-E500Hを開発するきっかけでもあったという。
DMR-E500Hでは、ネットワーク内にあるパソコンからWebブラウザを使って接続し、録画番組の一覧表示をはじめ、キーボードを使って番組タイトル名を変更したり、DIGAの直接操作などが行える。また、DIGAに保存したJPEG画像やMPEG-4で同時録画した番組(後から変換することも可)をブラウザ画面でストリーミング再生できる。
ただし、DIGAのMPEG-4録画(SD動画)はD-snapなどモバイル機器で再生する仕様のため、解像度はQVGAサイズと小さい。それでは物足りないという人は、「DMR-E500H」をもう1台購入するか、あるいはパソコンに専用クライアントソフト「MediaStage」を導入すればいい。
この場合、宅内ネットワークの伝送速度にもよるが、XPモード(もちろんフルD1サイズ、平均8Mbps)で録画したMPEG-2動画をそのままストリーミング伝送できる。なお、PC用の専用クライアントソフトは、富士通から“FMV向け”に発売される予定。松下の直販サイト「パナセンス」でも販売する。
再生時には、「早送り」「巻き戻し」「30秒スキップ」などの操作も可能だ。同時にアクセスできるクライアントは1台に限られるものの、DIGA同士を接続すれば、パソコンのファイル共有と同じような感覚で利用できるという。
また、デジタル放送で主流となっているコピーワンス番組の伝送にも対応した。開発を担当したパナソニックAVCネットワークス社ネットワーク事業グループの永井隆弘主幹技師によると、「2003年11月に規格化されたDTCP-IPをDVDレコーダーとしては初めて採用し、コピーワンス番組でも対応クライアントに対しては配信できるようになった」という。
DTCP-IPは、著作権保護技術「Digital Transmission Content Protection」(DTCP)で保護(暗号化)したコンテンツをIPパケット化するもの。つまり、著作権を保護した形でネットワーク伝送が可能になる。ただし、コピーは不可能だ。
さらに永井氏によると、DMR-E500HはDLNA(Digital Living Network Alliance)のガイドラインに沿った仕様になっているという(互換性は検証中)。つまり、将来的には他社製のメディアプレーヤーなどから接続できる可能性があるということだ(DLNAの次期ガイドラインにもDTCP-IPが含まれる見通し)。
一方、DVDレコーダーとしてのDMR-E500Hも、フラグシップに相応しいスペックを備えている。400GバイトのHDDには約709時間(EP8時間モード時)の録画が可能で、8倍速ドライブを搭載。DV端子、SD/PCカードのダブルスロットなども装備した。
「NEWディーガエンジン」はもちろん、ゴーストリダクションチューナーや3次元デジタルY/C分離、外部入力時のジッターを押さえるTBC回路など、画質向上を目指した機能もふんだんに盛り込まれた。映像DACは216MHz/12bit。独自の「インテグレイティッド DNR」との相乗効果により、ノイズ低減を図りつつ、ディテールの向上させるという。
一方の音声DACは192KHz/24bitだ。DVDオーディオのマルチチャンネル再生にも対応するほか、出力端子はD端子を含めてオール金メッキ、有極性OFCケーブル、振動を排除する制振シートなどを装備するなど、かなり贅沢な仕様といえる。
「DMR-E500Hは、ファミリー層をターゲットにした“どっちも録り”とは想定ユーザーが異なる。ホームシアター向けとホームネットワークの2つが中心になるだろう」と話すのは、同社牛丸本部長。ただし、双方のユーザー層がどこまで重なるのかは未知数だ。18万8000円前後という実売価格(オープンプライス)も合わせ、かなりチャレンジングな製品であることは間違いない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR