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分岐点を迎えたデジタルレコーダーの行方(1/3 ページ)

» 2004年10月19日 15時11分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 デジタルビデオレコーダー(DVR)の歴史は、常に差別化の歴史であった。かつてはDVDの有無、EPGの有無といったところが差別化の対象となっていたものだ。利便性を考えたら、もちろんないよりはあったほうがいいに決まっている。そこは価格設定と機能のバランスで、各社ともそれぞれの思想があったわけだ。

 だが昨年末、ソニーからDVD搭載の「スゴ録」がデビューし、各社ともEPG付きモデルが出た時点で、DVRはいったん、横一線に並んだ。買う側も売る側も、微細な差別化に一喜一憂することになったわけだ。

 だが今年の秋、一通り各メーカーのラインナップが出そろったところで改めて眺めていくと、各メーカーの方向性としては徐々に二分化していくのかな、という気がしている。

 一つはダブルチューナー派、もう一つは自動録画派だ。

「めいれいさせろ」

 今年8月に登場した東芝のRD-XS53とXS43は、チューナーを2系統搭載した「W録」で、裏番組の録画を可能にした。10月下旬に発売される松下のDMR-E330HとE220Hも、「どっちも録り」をうたうダブルチューナー機だ。さらに東芝は今年11月にも、最上位モデルのダブルチューナー機、RD-X5を発売する。

 番組表を子細に眺めながらたくさん録画設定する人には、時間帯がかち合ったものも録画できてしまうダブルチューナー機は理想的なマシンだろう。あるいは家族でレコーダーを共有している場合、チャンネル争いならぬ予約争いもなくなることだろう。

 だが、チューナーを2系統積むというのは、意外にコストがかかる。アナログチューナーユニット自体はそれほど高いものではないが、録画するためにはMPEGエンコーダも2基必要だし、そのほかAD/DAコンバータや三次元Y/C回路、ノイズリダクション、ゴーストリダクションなどチップがまるまる2台分必要となる。

 ダブルチューナー機だから価格が2倍というのでは、ユーザーには受け入れられないだろう。あくまでもプラスアルファの付加価値といった値付けが求められる。現時点ではこういった部材調達面でうまくコストを調整できる企業、すなわち東芝と松下がダブルチューナーに積極的なのも、分かる気がする。

 ただ最近MPEGエンコーダの世界では、カナダVIXS社製の「XCODE2」が1チップで4ストリーム同時エンコードを実現するなど、マルチストリーム化は加速傾向にある。集積化の方向性が決まれば、2ストリームに必要な“機能全部入り”のLSIが登場するのも、まんざら夢ではないだろう。

 地上波番組だけを2系統録るのであれば、ダブルチューナー機の操作はさほど難しくならない。地上波を内部で2分配した2ソースに対して、2エンコーダで対応するだけだからだ。だがそれに加えて、別入力まで対応させるとなると、話がややこしくなる。

 例えばBSアナログやDV端子からの入力がある場合だ。

 このときは、合計4ソースに対して2エンコーダで対応することになる。入力とエンコーダのフでマトリックスのような組み合わせが必要になるわけだ。この混乱を乗り越えても使いこなすユーザーは、かなりテレビ番組に対して真剣に取り組んでいる人ということになるだろうか。ドラクエで言えば、A.I.バトルで「めいれいさせろ」を選択するようなタイプだ。

「みんながんばれ」

 一方で自動録画タイプのレコーダーには、ソニーのスゴ録シリーズNECのAX-300がある。番組のキーワード検索機能を利用して、見つかった番組を自動的に録画していくというスタイルだ。コレ、といった目指す番組はもちろん予約録画するわけだが、空いている時間でキーワードにヒットする番組を録画する。

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