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分岐点を迎えたデジタルレコーダーの行方(3/3 ページ)

» 2004年10月19日 15時11分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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 2002年に発売されたソニーの初期型コクーン「CSV-E77」がそれである。このマシンは、ダブルチューナーを搭載し、おまかせ・まる録機能を実装していた。

 今にして思えば画期的な製品だったわけだが、実際の動作は自動録画のほうに大きく傾いていた。それというのも、二つめのチューナーはユーザーが自分で録画予約できず、完全に自動録画のためだけに存在していたからである。

 後継機の「CSV-EX11」と「CSV-EX9」では二つめのチューナーでも予約できるようになったが、今度はDVDを搭載していない点が問題視された。実際に現状のハイブリッドレコーダーでは、それほどDVD録画は利用されていないという話もあるが、“付いていて使わない”のと、“最初から付いてない”のとでは覚悟の度合いが違う。ソニーが得意とする生活提案型の製品だが、いろんな意味で割り切りが早すぎたのだろう。

 端的に言うならば、ダブルチューナーを実現しているのはハードウェアの実装能力、自動録画を実現しているのはソフトウェアの開発能力だ。DVRはその両輪がバランス良くそろう必要がある。どちらかの派が他者を凌駕(りょうが)するということでもないだろう。

 長い目でみれば、DVRは次第に記録装置としての能力に特化していき、再生機としての機能はネットワーク側に切り離されていくのではないか。マルチレコーディングができれば、次に求められていくのはマルチアウトプットだからだ。

 もしこの予想が正しいとするならば、今年の年末商戦から来春のモデルでは、ホームネットワーク機能が目玉になってくるだろう。今年はまだNECの動向が見えてこないが、現時点で先行しているのは、松下のDIGA最上位モデル「DMR-E500H」だけだ(レビューその1、その2)。

 ホームネットワーク機能は、ハイエンドモデルが購入できるリッチなユーザーだけが必要な機能ではない。今やDVDへの書き出しが当たり前のように、LAN経由で他のテレビやレコーダ、PCからコンテンツが引き出せるというのは、アウトプットの一つなのである。

 あとは、世界中で日本だけこれができない、というしょっぱい状況にならないことを祈るばかりだ。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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