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“レンズの力”を感じるクリアな画質――プロジェクター「PJ-TX100J」レビュー:劇場がある暮らし――Theater Style(2/6 ページ)

» 2004年10月22日 19時53分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 また設置性をさらに高めているのが、2.2メートルで80インチ、2.8メートルなら100インチ投影が可能な短焦点広角ズームだ。あまりに広角寄りだと逆に細長い部屋では不便な事もあるが、ズーム比が1.6倍とやや大きめな事もあって、100インチならば4.6メートルの投影距離を確保できる。

 加えてシフトダイヤル、フォーカスリング、ズームリングとも操作性が良好。特にフォーカスリングとズームリングはダンピングがほど良く効いて回しやすく、ピタリと思ったところで決まる。

 単に良い硝材を使った大口径レンズを搭載するだけでなく、きちんと操作性も含めた全体の品質が高いレンズを、これだけ低価格のプロジェクターに搭載することを決めた開発陣に拍手を送りたい。

やや疑問の残る画調モード設定

 TX100Jの画像モード設定は、ランプモードとアイリスの両方を同時制御する「オプティカルブラック」と、色温度とガンマカーブの組み合わせを切り替える「画調モード」という2つの機能が個別にプリセットされており、異なるリモコンボタンで切り替えて好みの絵を探すようになっている。

 画調モードはノーマル、シネマ、ミュージック、スポーツ、ダイナミックの5種類。それぞれ色温度以外に、トーンカーブが大幅に異なるため、単に明るさや色温度の違いだけではなく、絵作りそのものが大幅に変化する。

 ノーマルはもっとも自然なトーンカーブと色温度。色温度設定は7500度となっている。白飛びが抑えられ、シャドウ部の階調も視認しやすい。中間調のトーンも豊かだ。デジタルカメラ写真を投影したい時に適切な絵作りとなるほか、一般的なDVD映画やハイビジョン放送を投影する時にも具合がいい万能モードだ。

 シネマになると色温度が8000度まで上がり、トーンカーブがシャドウ、ハイライトを強調するS字カーブを描く。中間調の明度も高めだ。設定数値上は500度の違いしかないが、ノーマルに比べるとかなり青みを感じる。ハッキリとした絵にはなるが、シャドウの強調感が強く、立体感を演出しすぎという印象だ。

 コントラストの低い映像ソースでは良好に感じる場合もあるが、一般的にはノーマルモードの方が楽しめるだろう。トーンカーブそのものに支障を感じないならば、マニュアル設定で色温度を7500度か6500度ぐらいまで落とすと映画らしい絵になるかもしれない。

 ミュージックは、背景が黒く落ち、演奏者がスポットライトで強く照らされるような、まさに音楽ライブのような映像に適している。トーンカーブを見ると、ハイライト近くの階調を豊かに表現するように調整され、その分、シャドウを潰し気味に表現する。ただ、様々なシーンが混在する映画やハイビジョン放送などでは使う場面は限られるだろう。

 スポーツはリビングで部屋をやや明るめにして、飲み物やつまみを楽しみながら、多人数でスポーツ観戦を盛り上がるためのモードと言えるかもしれない。色温度は9300度で地上波放送に向いているが、何より全体に明るさを持ち上げたトーンカーブを採用しているため、ハイライト近くの階調はほとんど失われている。ただ、その分、絵に力はあり、完全遮光されていない環境下でもそれなりに迫力のある映像を楽しめるだろう。

 ダイナミックは色温度を管理せず、そのままランプのパワーを100%活かそうという絵作り。映像全体が明るくなるが、色バランスには劣る。スクリーンに多少光が当たっても、力のある映像にしたい時のためのプリセットだ。

 各プリセットはそれぞれに特徴的で用途がハッキリしているのはいい。似たようなモードが多数あっても、特定のモードしか使わなくなるだけだからだ。しかし、ノーマルはともかく、シネマモードの設定には疑問が残る。色温度の高さは映画視聴向きとは考えにくく、トーンカーブも立体感の演出もあるだろうが、ややシャドウ部の強調が過多だ。

 ただし、後述するがTX100Jはマニュアル設定が非常に細かくできるため、好みの画像設定を自分で調整する意欲があるならば、上記の疑問は考えなくてもいいかもしれない。色温度やトーンカーブは、調整によっていくらでも変えることができる。

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