コラム
» 2005年09月29日 03時00分 UPDATE

ソニーの新経営戦略に思うこと (1/4)

“エレクトロニクスの復活”を目指して先週ソニーが発表した新経営戦略は、新味に乏しい内容だった。だがソニーの苦しみは彼らだけの問題ではなく、コンシューマー向けエレクトロニクス製品全体を投影しているのかもしれない。

[本田雅一,ITmedia]

 先週、ソニーが新経営陣による“エレクトロニクスの復活”を目指した新経営戦略を発表した。このところ特に国内におけるブランド力、市場への影響力の低下を叫ばれているソニーが、経営陣刷新でどのような答えを示そうとしているのか。大いに注目していたのだが、率直に言えば新味には乏しい内容だったように思える。

 しかし彼らが抱える問題は、決してソニーだけの問題ではない。市場全体がエレクトロニクス製品に対して厳しい環境に置かれているからだ。それはデジタル家電だけではなく、デジタルカメラやパソコン、プリンタといった他のデジタル機器にも通じる問題点なのかもしれない。

 ソニーの苦しみはコンシューマー向けエレクトロニクス製品全体の問題を投影していると言えるのかもしれない。

かつてソニーを支えたものとは

 ソニーの苦しみについて考える前に、なぜソニーはブランド力を築き得たのか。その点について考察する必要があるだろう。なぜかつてソニーはソニーたりえたのだろうか。

 ソニーはコンシューマーエレクトロニクスを創出した企業とたたえられることが多い。それはビジネスや生活を変化させたエレクトロニクス技術を、人々の娯楽という方向に転化させる事に成功したからだと個人的には考えている。

 コンシューマーに魅力ある製品を提供するため、信号処理と精密機械技術、量産技術を組み合わせ、メカトロニクスを駆使した製品を多数生み出した。加えて高音質、高画質志向で高スペックの製品は、進化の途上にあったコンシューマーエレクトロニクスの中にあって独特の地位を築いた。

 80年代後半から90年代にかけてのソニーは、手のかかるアナログ信号処理や複雑なメカ部分の小型化をこなしつつ量産することで、多くの人が欲しがる“ほかにはない製品”をちょっと頑張れば手の届く価格で提供することで成長し、トリニトロンなどの独自技術によってすでに確立していたソニーのブランドイメージをさらに強化していったように思う。ウォークマン、ハンディカム、さらに遡ればデンスケ、ベータマックス……。

 30代後半から40代にかけて、ソニー信望者が多いのも、そうしたソニーの黄金時代を知っているからなのかもしれない。

 また忘れてはいけないのは、ソニーが他の大手電機メーカーにはない、高品質オーディオや高品質ビデオ機器を、大衆向け製品とは別に開発し続けてきた事だ。AV専業メーカーではない、言い換えれば一般大衆向けに量販する必要がある大規模な企業で、ソニーほど品質にこだわった製品作りを(ごく一部の品種だけではなく)幅広く行って来れたというのも、やはり信号処理技術とその量産に大きな強みを持ち、その上でそれらの技術的な背景を娯楽という方向に引っ張る企業内コンセンサスが存在していたからではないか。

 だが市場のルールは少しづつ変化してきている。

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