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ZEROとTUMIの洪水に辟易した人のための超軽量アタッシェ、渓水「SuperTransporter」プロフェッサーJOEの「Gadget・ガジェット・がじぇっと」!(2/4 ページ)

» 2006年08月22日 13時15分 公開
[竹村譲,ITmedia]

 インターネットの拡大とともに並行輸入業者も増え、輸入量の増加とともに、価格も安価になった。と、同時に顧客数も増加、ZERO HALLIBURTON社のアタッシェケースの「稀少価値度」「目立ち度」は以前に比較して大幅に下落した。

 長年のファンだった筆者とって、喜んで良いのか悲しむべきなのかよく分からないが、既にUSED品なら1万円台から、新品でも2万円台で買える良き時代となった。ヤフー・オークションで、常時500点以上のZERO HALLIBURTON社のアタッシェケースが出品されていることからも、日本におけるそのポピュラー度が理解できる。

ビジネスパースン御用達のTUMI

 ZERO HALLIBURTONのアタッシェケースの日本市場での普及より多少遅れてやって来たもう一つの鞄ブランドに米国TUMI社がある。同社の商品の中では、マッチの火であぶっても燃えない防弾チョッキと同じ素材である「バリスティックナイロン」を使用した堅牢なブリーフケースが有名だ。

 少し大人でプチリッチなユーザーなら、無骨なナイロン地ではなく、手になじむ柔らかい「ナパレザー」の製品を購入する人も多い。筆者の回りでも10年近く前から海外渡航者を中心にナパレザー製TUMIのユーザーが拡大していった。

 素材の種別は別にして、TUMI社のブリーフケースの大きな特長は米国の鞄メーカーらしく、必要に応じてジッパーを鞄の下回り半周させると、エキスパンド(拡大)してマチ幅が大きくなり、即座に容量アップが出来ることだ。米国内では、この機能がユーザーニーズにマッチしたらしく、TUMI社以外のブリーフケースもこの機能を搭載したモノが多い。昨今TUMI社は、鞄だけではなく、腕時計やペンなど、ステーショナリー分野にも積極的に進出しているが、海外の店を見ても、まだそれほど成功を収めているというイメージは感じられない。

 TUMI社は一時、同じく鞄のエース社を日本代理店としていたが、現在はニュージャージーに本社を置くTUMI社の直系であるTUMIジャパン社が経営母体となって、日本全国に支店展開を開始。こちらも、鞄ブームに乗って急速に普及の兆しが見えてきているようだ。

 TUMI社のブリーフケースとZERO HALLIBURTON社のアタッシェケース、素材もイメージもすべて好対照な2つのブランド鞄が日本国内でほぼ同じように売れる理由はいったい何なのだろうか。

 青年平和部隊のボランティアをやっていた人間が興したTUMI社と、それとは対照的なZERO HALLIBURTON社は、カスタム製品の多くをNASAや国防総省に納入している軍需産業の雄だ。マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画「華氏911」にも反戦支持派のバッシング対象企業として登場する。

 筆者も、イラク戦争の最中、某パソコンメーカーと出版社との共同プロジェクトで、ZERO HALLIBURTONのアタッシェケースの表面にエンボス処理し、あるモバイルPCのロゴマークやキートップのイメージをエンボス処理で加えたカスタム・アタッシェケースを発注したことがある。しかし、運悪く、その当時は製造ラインが軍需で満杯のため、追加で加工時間の必要なエンボス特殊処理を断られた経緯があったことを今も覚えている。

 エンボス処理されたアタッシェケースは多くの日米の企業がオーダーし、セールスコンテストやマーケティングプロモーションの景品となっているので知る人も多いだろう。民間投資会社が優良顧客に配布したローリングストーンズ・モデルなどが有名だ。いずれにせよ、確かなことは、もはや、ZERO HALLIBURTON社もTUMI社も、古き良き時代の憧れの舶来鞄ブランドではなく、ごく普通の鞄メーカーであるということだ。

鞄はモノを運ぶものか、個性を表現するものか

 鞄は、単に「モノを入れて安全確実に人が運ぶための道具」だという考え方もあるが、ある面、「持ち主の個性を現すモノ」だとも考えることができる。前者の立場に立てば、適価になり、製品としても安定してきている現在のZERO HALLIBURTONやTUMIの鞄はまさに狙い目だ。しかし、後者にも目的を置いた場合、もはや、通勤電車の中で、右を見ても左を見てもZEROとTUMIである現状を考えれば、人とは違う道を選択したいと考える人もいるだろう。

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