コラム
» 2007年03月20日 01時53分 UPDATE

掃除機の「吸込仕事率」って何だろう

生活家電を選ぶとき、最初に何を考えるだろうか。機能やデザインから入る人も多いが、冷蔵庫なら庫内容量、洗濯機なら洗濯容量といった具合に、まずは家族の数や設置場所の広さを考慮して絞り込むはずだ。しかし、掃除機の場合は少し事情が違う。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 生活家電を選ぶとき、最初にどんなスペックを気にするだろうか。機能やデザインから入る人も多いが、たとえば冷蔵庫なら庫内容量、洗濯機なら洗濯容量といった具合に、まずは家族の数や設置場所の広さを考慮して製品を絞り込むはずだ。

 ところが掃除機の場合は、家族の数などで明確になる数字はない。代表的なスペックとしては「吸込仕事率」が挙げられるが、実際に店頭に行くと、なんとなく安くて吸込仕事率の高いものを選びがちだ。また、2007年度に入るとJIS規格が変更され、同じ製品でも数値が変わるというから、さらにわかりにくい。

 今回は、掃除機の「吸込仕事率」について、日立アプライアンスでクリーナー開発の指揮を執る池端俊幸部長代理の話を交えながら、まとめてみたい。

計測方法と目安

 「吸込仕事率」は、掃除機がゴミやホコリを吸い込む能力をワットで示したものだ。池端氏によると「吸込仕事率とは、JIS規格に定められている“吸込力”の目安。吸込力は、特別な測定装置で“掃除機が吸い込む空気の量”(風量)と“物や空気を吸い込む圧力”(真空度)を測り、両者を掛け合わせた数値で表します」という。

photo 日立“パワースター きれい宣言”「CV-PK500」。花粉シーズンでも窓を閉めたまま掃除できる排気を目指した。吸込仕事率は600ワット

 掛け合わせる理由は、実際の使用環境に近づけるためだ。「掃除機は、ノズルを床から少し浮かせれば大量の空気を吸い込みますが、ゴミを吸い取るとは限りません。一方、ノズルを床にぴったり押し付ければ、空気はほとんど吸い込みませんが、床に張り付いたゴミを吸い取る圧力はあります。実際に掃除機を使用して掃除を行なう場合、両者の中間の状態で行っていることが多い。そのため、単純に掃除機が吸い込む風量だけで掃除機の能力を表すことは適当ではありません」。

 計測には、専用の測定装置を使用する。掃除機の本体にホースとバルブ付きのパイプを取り付け、測定装置に繋いだ状態で運転開始。バルブを徐々に閉じていきながら風量と真空度を測定するという。こうして得られた数値を計算式にかけ、得られた結果の最大値が吸込仕事率となる。

 現在のクリーナー市場を見回すと、スリムなスティックタイプでは100〜250ワット、紙パック式/サイクロン式の高機能タイプは400〜600ワット程度のものが主流だ。ただし、冒頭で触れた2007年度の新JIS規格(JIS C 9108)では、測定装置や測定時の室温範囲、測定値の許容差を見直しており、「これまでの表示に比べると、同じ吸込力でも、おおむね10%程度小さい表示になります」(同氏)。600ワットだったものは、約540ワットになるわけだ。

 では、実際の掃除において、吸込仕事率の差は、数字ほど出てくるのか。池端氏によると、吸込具(吸口)が同じという前提なら、吸込仕事率が高い掃除機ほど吸込性能も高いという。「見た目だけでは差が判りませんが、目に見えないような細かいゴミや絨毯の奥、フローリングの目地、畳の目や継ぎ目などでは、吸込仕事率の大きい方が性能が高くなります」。

 高級機では600ワットを超えるものも珍しくないが、絨毯の奥などに入り込んだ細かいハウスダストまでしっかり吸い上げるには最低300ワット程度の吸込仕事率が必要といわれ、このあたりが1つの目安になるかもしれない。スティックタイプやハンディタイプを除くと、多くの製品が必要十分な吸引力をを持っていることがわかる。

 ただし、吸い込む力が大きいということは、排出する空気も多くなることを意味している。仮にフィルターの処理能力を超える量の空気が掃除機に入ると、すき間から漏れ出した排気がホコリやニオイを室内に拡散させてしまう可能性も指摘されている。このため最近の機種では、フィルターを改良したり、専用消臭材を設けたり、あるいは排気口にマイナスイオン発生器を備えて細かいゴミを集める(帯電させて吸着)など、各社はあの手この手で“排気性能”の改善に取り組んでいる。

photo 松下「MC-P7000」シリーズのダブルドライブノズル。小型のブラシを2本搭載し、ノズルを押すときも引くときも高い集塵効果を発揮するという

 また、吸い込む力が大きいということは、床面などを吸着して動きにくくなるなど取り回し面の課題も増える。そこでノズル部の改良も進み、ゴミの吸着および取り回しの両面を強化した吸い口を備える製品も増えてきた。池端氏は、「ユーザーが掃除機を購入する際の選定基準を調査すると、“吸込力”“排気性能”“使い勝手”の3つが重視される傾向にあります。われわれも、掃除機の本来の目的であるゴミを吸うことを基本としながら、その上でニーズに応える製品開発をしていきます」と話している。

 スペック重視といわれる日本の家電業界だが、数字だけを見ていては全体が見えにくくなる。掃除機の選択にあたっては、プラスαの部分にも目を向けるようにしたい。

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