ティム・バートン監督とジョニー・デップの6度目のコラボレーションとなるこの作品、トニー賞を受賞した名作ブロードウェイ・ミュージカルを映画化したもので、ゴールデングローブ賞作品賞、主演男優賞(ジョニー・デップ)を受賞している。
映像のテイストは、ダークでゴシックなティム・バートンならではの味わい。ぼくの大好きなクレイ・アニメーション「ティム・バートンのコープス ブライド」の実写版ともいえるビジュアルだ。アカデミー美術賞を受賞したモノトーンのくすんだ背景に、剃刀を持った白塗りのジョニー・デップが映える映える!
しかし、本作でもっとも心ひかれるのは、ヒチコック作品のバーナード・ハーマンの音楽にインスパイアされたというスティーヴン・ソンドハイムの流麗かつスリリングな音楽である。その音楽にのって、妻と愛娘を取られた男の悲哀と怒りをジョニー・デップが語るように歌い、歌うように語る。さすがに当代一の芸達者な役者だけあって、その表現力はきわめて高い。
ミュージカルというと、つい先ほどまでしゃべっていた役者が突然歌い始める違和感にとらわれて、お話に入っていけなくなるという人は多いが、この作品ほどその違和感を抱かせないミュージカル映画はないのではないかと思う。デップやその相手役となるパイ屋の女主人、ヘレナ・ボナム・カーターの歌のうまさとその呼吸の的確さによって、音楽に案内されるように、19世紀の暗うつなロンドンの都市伝説の世界に入っていけるのである。
デノンAVC-1909が実現している、価格の枠を感じさせない大人っぽいバランスのサウンドで聞いてこそ、この作品の本当の魅力がつかめるのではないかと思った。
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執筆者プロフィール:山本浩司(やまもと こうじ)
1958年生まれ。AV専門誌「HiVi」「ホームシアター」(ともにステレオサウンド刊)の編集長を務め、昨年秋フリーとして独立。マンションの一室をリフォームしたシアタールームで映画を観たり音楽を聴いたりの毎日。つい最近20数年ぶりにレコードプレーヤーを新調、LPとBD ROM、HD DVDばかり買ってるそうだ。
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