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» 2009年08月27日 17時00分 UPDATE

デジモノ家電を読み解くキーワード:「骨伝導」――骨で音を伝える

音は耳で聞くものだが、音の入り口が鼓膜とはかぎらない。頭蓋骨を震わせ音を伝える「骨伝導」方式のヘッドフォンについて、その基本的な仕組みとメリット/デメリットを解説してみよう。

[海上忍,ITmedia]

人はなぜ録音した自分の声に違和感を覚えるか

photo ティアックの骨電動ヘッドフォン“Filltune”(フィルチューン)「HP-F200」

 骨伝導ヘッドフォンは、振動を頭蓋骨へと伝え、内耳にあるカタツムリ状の器官「蝸牛」の働きにより、人間の脳に音として感知させるしくみ。我々人間が音を感じる場合、通常は空気の振動を「鼓膜」でとらえて蝸牛へと伝えるが、骨伝導では鼓膜の代わりに頭蓋骨を振動させて蝸牛を刺激する。前者は「気導音」、後者は「骨導音」と呼ばれている。

 骨導音は、少し静かな環境さえあれば、いつでも聴くことができる。例えば、両耳をしっかりふさいだ状態で声を発したときに聞こえる少しこもったような音、それも骨導音の一種だ。誰でも録音した自分の声を聴くと違和感を覚えるものだが、ふだん自分の声と認識している「気導音+骨導音」とは異なり、それが気導音のみで構成されることが原因だ。

骨伝導ヘッドフォンのメリットとデメリット

 骨伝導ヘッドフォンのメリットは多い。ひとつは難聴予防。直接鼓膜を刺激しないため、大音量を長期間耳にすることによりかかりやすい音響難聴の防止となる。音漏れがないことも挙げられるだろう。混雑した電車内でも、誰にも迷惑をかけることなく音楽を楽しめる。地下鉄の騒音に音楽がかき消されることもない。耳をふさがずにすむため、歩行時に背後から近づく自転車に気付かない、という問題もなくなる。

 デメリットは、やはり音質だ。従来の鼓膜で聞くヘッドフォンに比べると、高音や低音の再現能力に乏しい傾向があり、しかも装着位置(振動パッドをあてる部分)の微妙な差でも音質が変化する。それなりの音量で聴くためには、パッドを十分に振動させるための出力が必要となるため、ポータブルオーディオプレーヤーと組み合わせた際では、フルボリュームですら足りないことも。音楽鑑賞用として本格的に使うためには、さらなる改良が必要という印象だ。

骨伝導ならではの進化

 音質面では改良の余地が大きい骨伝導ヘッドフォンだが、必ずしも従来型のヘッドフォンと同じ方向へ進化しなくてもいいはず。メーカーもその点心得ているようで、水中でも音楽が楽しめる「EMP-708-WP」や、聴くための出力装置ではなく音声入力用のレシーバマイク「Sound Leafシリーズ」などの製品が登場している。今後は音質面での改良が続けられる一方、このような骨伝導ならではの長所を生かした方向も進化するのではないだろうか。

執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)

ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。


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