最近、新型テレビなどの新製品情報にちょっとした変化が起きている。HDMI入力端子について、仕様表に「HDMI Ver.1.4準拠」とは書かず、注釈で「HDMI 1.4に含まれるARC(オーディオリターンチャンネル)に対応」といった機能説明にとどまるケースが増えてきたのだ。
これは、どういうことなのか。「7C」と呼ばれるHDMIファウンダーメンバーの1社であり、HDMIコントローラチップの開発・製造を手がける米Silicon Image日本法人代表の竹原茂昭氏に伺った(以下、敬称略)。
――最近、仕様としてHDMIのバージョンナンバーを明確に打ち出さないメーカーが増えています。しかし、注釈で「HDMI 1.4に含まれるARC(Audio Return Channel)に対応」とだけ書かれていると、人によっては「従来型のHDMIに一部の機能だけ実装した?」と捉えてしまう可能性もあるのではないでしょうか。
竹原: 大手のテレビメーカーが明確にHDMI ver.1.4/1.4aといった表現をしなくなったのは、HDMI LLCが規定したトレードマーク&ロゴガイドライン(Trademark and Logo Guidelines)に沿って記述しているためです。ガイドラインは、以前のバージョンでも出していましたが、ご存じの通り、HDMI 1.3あたりからスペックの中で機能がいろいろと分かれてきました。
――HDMI 1.3ならDeep Colorやx.v.YCC、HDMI 1.4なら3DやARC、HECといった機能が追加されています。
竹原: そうです。しかし、必ずしも必須条件ではありません(オプション仕様もある)から、HDMI 1.3ベースであればすべての機器がDeep Colorやx.v.YCC機能に対応しているわけではない。HDMI 1.3と書かれていても、製品によって使える機能が異なる。それは、HDMI ver.1.2以前にはなかったことです。
一方、メーカーの中には「HDMI ver.1.3」としか記載しないケースも出てきました。これだけでは、お客様(ユーザー)が期待している部分がサポートされているのか分かりません。このため、HDMI LLCでは、トレードマーク&ロゴガイドラインにおいて、2012年の1月1日以降、ケーブル類を除いて「HDMIのバージョンナンバーをうたわない」と決めたのです。バージョンナンバーよりも個々の対応機能を明確にして、消費者が混乱しないようにするためです。
ただ、HDMIはバージョンナンバーとともに普及してきた側面もあります。いずれバージョンナンバーを表記しなくなるとなっても、逆に市場に混乱を招く可能性はあるでしょう。そのため、現在(2010年1月1日〜2011年12月31日)は“猶予期間”として、一定の書式に沿った書き方であれば、バージョンナンバーを入れても良いことになっています。例えば、HEC(HDMI Ethernet Channel)とARCをサポートしているのであれば、機能と併記してバージョンナンバーを入れることができます(次ページの表を参照)。
――なぜ、メーカーはそのようにしないのでしょう。
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