連載
» 2010年06月14日 02時50分 UPDATE

本田雅一のTV Style:「iPad」の使い道(前編)

iPadは、ご存じの通り「iPod touchのサイズが大きなもの」に近いハードウェアの製品だが、テイストはやや異なる。シンプル操作と上質なUIで、ユーザーの使用感・体験を演出している。では、どのような利用シーンが適しているのだろうか。改めて考えてみよう。

[本田雅一,ITmedia]
photo 「iPad」

 この連載の編集担当であり、かれこれ14年も一緒に仕事をしている”S”は、名前はSであるが、どちらかといえばM系である(編集部注:届かない原稿を待って週末をツブしたからといってMではありません)。そんなことはどうでもいいが、Sが本当にM系なところは、生来の”M”acマニア、アップルファンであることだ。

 その彼が「iPad」の購入を迷っているという。しかも理由は「使い道が思い浮かばない」。なんということか、以前ならアップルの新製品が出ると、まずは購入ボタンをクリックしてから使い道を考えるほど、DNAにアップル製品購入へのモチベーションが刻まれていた男だというのに(編注:一応、クリックしながら考えていました)。

 さて、そのiPadは、ご存じの通り「iPod touchのサイズが大きなもの」に近いハードウェアの製品だが、テイストはやや異なる。このあたりはとらえ方の違いとしか言いようがないが、ハードウェアそのものに、とりわけものすごい価値があるというよりは、ユーザーの使用感・体験を上質に演出しているという印象だ。インターネットのサービスを利用したり、あるいは静止画、動画、音楽を問わずネットワークで共有するメディアの再生装置として、とても優秀なものに仕上がっている。

 PCユーザーが”アプリケーション”というと、「Word」や「Excel」などの文書作成系、あるいは「Photoshop」などのクリエイティブ系アプリケーションを思い浮かべるかもしれないが、iPadでのアプリケーションの中心はネット内にある各種メディア(静止画、書籍、文書、音楽、動画など種類は問わない)やWebサービス(電子メール、カレンダー、フォト共有、SNSなど、こちらも種類を問わない)を、よりシンプルな操作で楽しむためのフロントエンドツールだ。

photo iPadに搭載されたアップルA4プロセッサ

 iPadは、iPhoneの1.5倍以上は高速なプロセッサとGPUを使っているし、ほとんどのアプリケーションは非力なCPUをカバーするためにGPUの機能を最大限に活用している。だから操作レスポンスは良いし、見た目にも想像以上の豪奢なアニメーションを使ったUIが展開されるので、レベルの高い体験を得られるわけだ。

 ただし、あまり複雑なアプリケーションを動かすのには向いていない。例えばiPad用に「iWork」が発売されていて、それぞれそれなりに良くできてはいるが、いずれも機能はMac版のサブセット(機能縮小版)でしかない。「iOS4」が提供されるまでは、複数のアプリケーションを同時に起動できないので、複数のアプリケーションを連携させて使う場合にはやや煩雑な手法が必要になる場合もある(文書を引き渡して別のアプリケーションに引き継ぐぐらいなら問題はないけれど)。

 さらに各アプリケーションのメモリ保護が徹底していないのか、不具合が潰し切れていないソフトはとてもよく落ちる。システム全体が反応しなくなることは少ないが、何度か同様の事が重なると全体に不安定になってくる。なんだか昔が懐かしい、やや脆弱(ぜいじゃく)さの残る(でもそれなりに固さもある)というのがiPadの現状だ。

 例えばWebブラウザの「Safari」にはまだ不安定さもあり、ブログを書いていたり、何かの申請フォームを入力していると、突然終了してしまってそれまでの入力結果がパーになってしまうことがあった。それ以来、ワープロアプリの「Pages for iPad」上でテキストを作成してから、それをコピーして入力に使うなどの工夫をしているものの、Pagesも完璧というわけではないのが悩みの種だ(ただし、編集結果は自動保存されるのでPagesを使う方がずっと効率は良い)。

 これらはコンテンツビューアとして使っている上では、さほど問題にならない(まぁ仕方ないと許せる)ことだ。システム全体を軽量にするために、iPadのソフトウェアプラットフォームは割り切った作り方をしているし、その割り切りが良い部分を引き出し、別の面では弱点にもなっているということだ。

 なので前述の編集S。彼にiPadが必要かどうかは、iPadで何がしたいかにかかっている。まず、自宅のリビングでネット上のさまざまなコンテンツを楽しむのにはピッタリだろう。iPadは、Netbookが本来果たすはずだった役割(ネットを楽しむための低価格端末)を完璧にこなす。

 でも、モバイルPCとして使うには、やや不完全と言わざるを得ない。情報を持ち歩いて閲覧するぶんには良いが、クリエイティブな使い方(長文作成や写真編集)が大半という場合は役立たないことが多い。かといってノートPCと一緒に気軽に持ち出せるほど軽量ではない。

 というわけで、個人的にはモバイルツールとしては微妙だと思っている。持ち歩きにはiPhoneの方が使いやすい。が、それはそれぞれの使い方によるので、”閲覧”中心なら鞄に1枚忍ばせておくと便利だろう。ちなみに変種……いや編集Sはキーボードでバリバリ入力派なので合わないと思うが、それはまあ、どうでもいい。

 一方、映像を楽しむツールとしては、なかなか面白いポテンシャルを持っていると思う。iPadの日本における発売日に、日本民間放送連盟の広瀬道貞会長は「われわれにとってみれば緊張すべき状況を迎えた」と話した。これは広告を集める上での優位性について話したものだが、それはすなわち、iPadのようなデバイスにテレビの視聴者を奪われる可能性を示している。

 次回は、パーソナルな映像ビューアとしてのiPadについて話を進めていこう(編注:次回は、6月18日金曜日に掲載“予定”です)。

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