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» 2010年06月17日 19時59分 UPDATE

デジモノ家電を読み解くキーワード:電子ブックの見かたを変える「電子ペーパー」

近ごろ話題の「電子ブック」は、コンテンツもさることながら表示装置に注目が集まっている。今回は、その電子ブックを支える表示技術の1つ「電子ペーパー」を取りあげてみよう。

[海上忍,ITmedia]

電子ペーパーはここが違う

 電子ブックリーダーとして脚光を浴びている、Appleの「iPad」とAmazonの「Kindle」。テレビや雑誌を通して見るかぎり、両者の違いはカラーかモノクロか程度にしか感じられないが、実物を見るとKindleの電子ペーパーのほうがはるかに紙に近い質感を実現していることが分かる。

photo Amazonの「Kindle DX」

 その理由の1つが、Kindleの電子ペーパーとして採用されている「E Ink」が、反射光で表示を得るということ。液晶パネルでは、基板背後にある光源から照射された光(透過光)を通じてものを見るが、E-Inkの方式は紙と同じ。太陽や照明器具が発する光にはいろいろな波長が含まれているため、人間の目にはより自然に映るというわけだ。

photo 透明の液体と白黒の顔料粒子を封じ込めたカプセルに通電する、E Inkのマイクロカプセル型電気泳動法

 画面がチラつかないことも大きな特徴。液晶パネルの場合、表示するデータに変化がなくても毎秒数十回は画面を書き換えるため、チラつき(フリッカー)の発生は避けられないが、E Inkでは表示内容を更新しないかぎり同じ内容を保持し続けるため、フリッカー発生の余地がない。目が疲れないため読書向き、とKindleが評される理由だ。

 画面の書き換え頻度が低いことは、消費電力が少ないというメリットにもつながっている。画面を更新するときの消費電力量は液晶パネルと大差ないものの、表示内容の保持には電力が消費されないため、文章のように動きのないコンテンツではトータルの消費電力量が少なくすむ。E-Inkの消費電力は、同サイズの液晶パネルの約10分の1といわれている。

カラー化は当分先か

 E Inkが提供する表示技術の基礎にある仕組みが、「マイクロカプセル」だ。直径40ミクロンほどの透明なカプセル内には、黒・白2色の顔料粒子(インクパウダー)と透明な流動液が充填され、電圧をかけて粒子を移動させることにより表示装置として機能する。

 一方、顔料粒子が黒・白2色ということは多色表示に対応しないことを意味する。E Inkはカラー化技術の開発も進められているが(→カラー版「E INK」は2006年末に登場)、画面の明るさが不足しがちなど改良の余地も多く、現在のところ普及モデルには採用されていない。

コレステリック液晶型モデルも登場する?

photo コレステリック液晶型の電子ペーパーを採用した、富士通フロンテックの電子ブックリーダー「FLEPia」(フレッピア)

 ここまでE Inkばかり取りあげてきたが、電子ペーパーにはいくつかの方式がある。大分類ではE Inkなどの「粒子移動型」と、電力を供給しなくても表示を維持できる液晶パネルを使う「コレステリック液晶型」の2種類があり、それぞれ長所・短所を備えている。

 カラー対応という観点から電子ペーパーを見ると、2009年には富士通フロンテックからコレステリック液晶型の電子ブック対応端末「FLEPia」(フレッピア)(→カラー電子ペーパー端末「FLEPia」10万円で発売 Webや写真閲覧も)が発売されるなど、粒子移動型とは異なる展開もある。電子ブックは活字だけでなく、絵や写真を表示要素として持つだけに、今後のカラー対応は要注目だ。

執筆者プロフィール:海上忍 (うなかみ しのぶ)

ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。


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