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» 2011年04月04日 13時36分 UPDATE

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:実力が試される薄型テレビ(2)――映像のダイナミックレンジ拡大とは (1/3)

前編では、超解像技術の進化について解説してもらったが、この春はメーカー各社がそれぞれに特長のある個性的な製品を相次いで発表している。春の新製品と2010年の市場トレンドについて、AV評論家・麻倉怜士氏に解説してもらった。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 昨年までのエコポイント特需から一転、需要が一段落すると見込まれている薄型テレビ市場。メーカー各社は、それぞれに特長のある製品を出すことで再び市場を活性化しようとしている。前編では主に超解像技術を紹介したが、後編では春の新製品と今後のトレンドについてもAV評論家・麻倉怜士氏に解説してもらおう。

――前編で触れた映像のダイナミックレンジ拡張に関する動きから教えてください

 ハイダイナミックレンジ(HDR)は、ここ1〜2年、コンパクトデジタルカメラの分野で流行しています。デジタルカメラの場合は、露出を変えて複数の写真を撮り、それを合成することでダイナミックレンジ(黒と白の間)が広い画像を作り出します。さらに画像処理で絵画的な写真を作る機能なども追加されています。カシオ計算機が推進していますね。

 テレビの場合、カメラと方法論は全く異なりますが、単純にシーンを映す(写す)だけではなく“思い”を表現する方向――“希求画像”を得るという目的は近いのかもしれません。“テレビの父”といわれる高柳健次郎先生は、「画家は見たままを描くわけではなく、記憶を再構成して色を作っていくのだ」と話しました。画家の頭というフィルターを通して絵画が出来上がるように、テレビも視聴者が美しいと思う映像を映す。ユーザーサイドに立ったテレビを作るという意味で重要だと思います。

 ブラウン管テレビでは、電流を増やすと白ピーク輝度が先鋭に立つ性質があったため、例えば車のボンネットが太陽光を反射するシーンなどは、100%以上の“きらめき感”が出ていました。これを「スーパーホワイト」といいます。また、人間の感覚は、白ピークが上がると黒も感じやすくなり、現実以上に黒が沈んだように見えます。

 一方、現在主流の画素型テレビは、基本的に白100%と黒100%の間でコントラストを良くするアプローチです。自発光のプラズマパネルはまだピーク輝度らしきものを出せていましたが、バックライトを用いる液晶ではそれ以上の明るさを出すことができません。しかし、ここへ来て100%以上のピークを実現しようとする動きが出てきたのです。

 例えばソニーは、HX920シリーズのLEDバックライトに「インテリジェントピーク技術」を採用しています。これは、液晶パネル背面に敷き詰められたLED光源の部分制御に加え、バックライトが消えている部分の電力を点灯している部分に“上乗せ”して発光させるというものです。

ts_peak01.jpgts_peak02.jpg 「インテリジェントピーク技術」の概要

 また、シャープは1月の「2011 International CES」で応答速度の速いUV2A(Z5に採用されたハイスピードUV2A)と一緒に“ハイダイナミックレンジ”のパネル技術を展示しました。注目したいのは、どちらも液晶テレビという点です。ちなみに東芝の“CELL REGZA”「55X1」も白ピークを立てていましたが、現在の「55X2」では穏当にしています。厳密に言うと、このアプローチを始めたのは東芝ですが、今回はソニーとシャープが製品化しようとしています。

ts_shces012.jpg CESのシャープブースでは、「次世代のクアトロン」と題した技術展示が行われた。上段が次世代クアトロン、下段が従来のもの。よりリッチなカラーと光の表現が可能になるという
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