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» 2014年10月28日 13時38分 UPDATE

山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」:グラスの輝きと奥行き感に息をのむ――パナソニックの最新4Kテレビ「TH-65AX900」 (1/2)

今回取り上げるのは、直下型LEDバックライトを搭載したパナソニック「AX900」シリーズの65V型「TH-65AX900」だ。次世代4K放送規格で定められたBT.2020の色域もサポートした新フラグシップの実力は?

[山本浩司,ITmedia]

 わが国の4K環境が大きく動き始めている。 6月2日に始まった124/128度CSデジタルの4K/60p試験放送(Channel 4K) に加え、10月27日からは4K作品のVoD(ビデオ・オン・デマンド)のトライアル配信を行ってきたNTTぷららが商用サービスを開始する。また、来年(2015年)3月にはスカパー!が2チャンネルで有料4K放送をスタートさせるというし、再来年(2016年)にはBSでの4K/8K試験放送が始まる予定。また、来年1月のCESで4K Blu-ray Discの発表があるとも噂されている。

 世界を見渡しても、これほど放送/通信の高解像度化が急速に進む国は他にないと思うが、映像のハイレゾ化によってより生々しい臨場感が生み出され、映像世界からより深い感動が引き出せるはずで、リビングルームやシアタールームに置く大画面テレビの買い替えを考えている方は、なにはともあれ4Kテレビの動向をチェックしておくべきだろう。一度買ってしまえば、テレビは最低でも5〜6年は使い続けることになるわけで、その頃には誰でも普通に4Kコンテンツが楽しめるようになっているのは、間違いないことだからである。

ts_arekoreax01.jpg 「AX900」シリーズの65V型「TH-65AX900」

 さてそんな状況下、4Kテレビ展開でやや後れをとっていた感のあるパナソニックが、この春の「AX800」シリーズに引き続き「AX900」と「AX700」シリーズを登場させた。これによって2014年秋、4Kビエラは40V型から85V型まで全部で3ライン計9モデルの他社を凌ぐ大所帯となり、パナソニックの4K大攻勢がいよいよ本物になってきたと言っていいだろう。ここでは、じっくりチェックする機会のあったトップエンドの「AX900」シリーズの65V型「TH-65AX900」のファースト・インプレッションを述べることにしたい。

ts_arekoreax02.jpg 4Kビエラのラインアップ。40V型から85V型まで幅広くそろえた

 なお、このビエラ3ライン計9モデルすべて、フルスペックの4K/60p伝送が可能なHDMI2.0と最新の著作権保護技術であるHDCP2.2に対応していることを申し添えておこう。つまりその意味するところは、今後どんな4Kコンテンツが来ても4Kビエラは大丈夫ということである。

自発光ディスプレイの質感に近づけようという意図

 AX900シリーズは、55V型、65V型、85V型の3モデル展開となるが、すべて直下型バックライト方式が採用されており、85V型のみVA型、55V型、65V型はIPS方式の液晶パネルが採用されている。今年の春に登場した「AX800」シリーズは、すべてVAパネルのエッジライト型。画質の素性はよいけれど、きめ細かなローカルディミング(部分減光)ができないエッジライト型ゆえに、黒と暗部の再現性がいまひとつという印象だったが、そのことはビエラ開発陣も十分承知のことだったのだろう。AX900 シリーズはすべて直下型バックライトのローカルディミング機となった。

 今回視聴した「TH-65AX900」(とTH-55AX900)は、先述のように正面コントラストでVA方式に劣るIPSパネル採用機(パネル自体のコントラスト・スペックをいうと、最新VAタイプは5000:1前後、IPSは1500:1前後)。しかし、IPSパネルはVAに対して視野角で有利という特長があり、ビエラ開発陣はそれを活かしながら、ローカルディミングを使いこなすことでVA方式に負けないコントラスト表現(とくに黒の再現性)を手に入れようと考えたのだろう。

s_arekoreax04.jpg 従来比約2倍の高輝度IPS液晶パネルを搭載

 確かに1.5〜2H(画面高の1.5 倍から2倍)の近接視聴が可能となる4Kテレビの場合、視野角の狭さは大問題となる。画面に近づいて斜めから観ると、VAパネルの場合、コントラストが急激に悪化したり、彩度が浅くなったり色相がシフトしたりするからだ。家族3人横並びで近接視聴するのはVAパネルにとってかなりツライ状況と言わざるを得ない。また、IPS パネルはVAタイプのように視野角を補償するためのサブピクセルのグリッドが存在せず、明るい高精細映像を実現しやすいという利点もある。そう考えると、直下型バックライトのローカルディミング採用IPSモデルには確かな合理性がある。

 本機のローカルディミングのエリア分割数は明らかにされていないが、ソニー「X9500B」とほぼ同等とのことだから100以上と考えていいだろう。そして5×5のエリアごとにバックライトを制御しているようで3×3 が一般的な他社のローカルディミング機に比べて明暗の境界が目立ちにくくなるはずだ。

ts_arekoreax03.jpg Blu-ray Disc「インサイド・ルーウィン・デイヴィス〜名もなき男の歌」。国内版は5076円で12月17日発売予定。発売・販売元は東宝 Photo by Alison Rosa(c)2012 Long Strange Trip LLC

 暗闇の中でスポットライトが当たった男性シンガーが浮き彫りになる米国盤映画Blu-ray Disc「インサイド・ルーウィン・デイヴィス〜名もなき男の歌」の冒頭部を、原画忠実再現を目指したという「シネマプロ」モードで観ると、光の当たったシンガーの周囲がぼわっと明るくなるハロと呼ばれる現象が、他社の製品に比べてよく抑えられていることが実感でき、5×5エリア制御がうまくはたらいていることがよく分かる。なるほどこのローカルディミングは巧い。ただし、ディスプレイ表面への光の漏れが多いIPSパネルの宿命か、平均輝度レベルの低いシーンでの最暗部の黒の沈み込みはいまひとつの印象だ。

 また、明部(ハイライト)の表現にも独自の工夫が施されている。それが「ダイナミックレンジリマスター」だ。これは撮影・記録時に失われた高輝度領域の明るさと色を復元する技術。RGBそれぞれのガンマカーブを適応的に制御することで白飛びやハイライトでの色抜けを抑えようというものだ。その効果が体感できる「シネマ」モードで実際の映像で確認し、この技術には液晶テレビをプラズマやOLED(有機EL)のような自発光ディスプレイの質感により近づけようというビエラ開発陣の思いが込められているように思えた。

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