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この秋、注目の2アイテム――ヤマハ「CX-A5100」とソニー「CAS-1」を聴く山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/3 ページ)

» 2015年09月29日 12時21分 公開
[山本浩司ITmedia]

 世界中の音のよいコンサートホールやライブハウスの音響データをこつこつと採取し、独自のノウハウでそれらを映画にふさわしい響きに再チューニングしたヤマハのシネマDSP 。楽器やPAなど様々な音楽関連事業を手がけるヤマハならではのこの音場創成機能がAVアンプに採用されて四半世紀が経った。その間多くの名機が発売され、熱狂的なヤマハファン、シネマDSPファンを生み出してきた。

 10月上旬に発売される「CX-A5100」の音をいち早く聴くことができたが、この25年間シネマDSP の主要モデルをすべて聴いてきた筆者にとっても、本機の魅力はひときわ光り輝くもので、イマーシブオーディオ時代の名機誕生の思いを深くした。では、その詳細を述べていこう。

10月上旬に発売されるヤマハ「CX-A5100」。価格は28万円(税別)

 本機はスピーカーを駆動するパワーアンプを内蔵しないAVコントロールアンプで、2013年に発売された「CX-A5000」の後継機という位置づけになる。CX-A5000は発売時期の関係からオブジェクトベースの音声規格Dolby Atmosへの対応はかなわなかったが、本機はDolby Atmos対応はもちろんのこと、Dolby AtmosとシネマDSP (最高グレードのシネマDSP HD3<キュービック>)との掛け合わせまで実現している。ヤマハAVアンプの現行ラインアップで、この機能を実現しているのは本機のみ。ちなみに、すでに米国盤Blu-ray Disc(「エクス・マキナ」)で登場したもう1つのオブジェクトベースの音声規格DTS:X に対しては、ファームウェアのアップデートで対応するという。

背面端子。プリ出力は11.2ch

 プリ出力は11.2chで、7.1ch をベースにトップスピーカーを 2組4本設置し、サブウーファーを2基配置する7.2.4再生が可能。出力端子はRCAシングルエンド、XLR バランスがそれぞれ1系統ずつ用意される。スピーカーの近くに置いたパワーアンプと本機をノイズに強いバランス接続できるメリットはとても大きい。2013年に「CX-A5000」と同時発売された、バランス入力付き11chパワーアンプの「MX-A5000」は継続販売されるという。

 DACチップは、音質に定評のあるESSテクノロジーの32bit/8chタイプの「ES9016」が2基採用されており、USB端子、ネットワーク経由で2.8MHz/5.6MHz DSD ファイルのダイレクト再生も可能となっている。

 Dolby AtmosとシネマDSP HD3の掛け合わせを実現するため、信号処理用DSP素子(ヤマハ用に開発されたTI製)はCX-A5000の2基から3基に増えているが、そのパワーを生かしてヤマハ独自の音場補正機能「YPAO R.S.C」をさらに進化させている。もっともその進化の恩恵が大きいと感じられるのは、「High Precision EQ」と呼ばれるイコライザー機能だ。


従来32bit精度で行っていたこのイコライザーの処理が64bit処理となって演算誤差が極小化され、その音質が飛躍的に向上した印象を受けるのだ。従来は「ピュアダイレクトモード」に比べてイコライザー処理が入る「ストレートモード」は、音が鈍ってあいまいになる感じがあったが、本機の「ストレートモード」の音はそういう印象を抱かせず、部屋の定在波の影響によって生じる低音の盛り上がり(またはその反対のやせた感じ)がなくなり、より生々しい音が得られるようになる。とくに狭小空間でのハイレゾファイル再生でその恩恵は大きいと思った。

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