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「レグザがレグザであり続けるために」――10周年を迎えた東芝レグザの現在と未来(1/2 ページ)

» 2016年03月09日 17時08分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 東芝の薄型テレビ「REGZA」(レグザ)が今年2月に10周年を迎えた。2006年に誕生したレグザは、“開発者のこだわり”を感じられるモノ作りでユーザーの支持を得てきたブランドの1つだ。しかし、経営再建中の東芝が構造改革を進める中、「レグザは大丈夫か」という声も多く聞かれる。今回は、東芝ライフスタイルの本村裕史氏にレグザを取り巻く状況と今後について、率直に話を聞いた。

東芝ライフスタイル、ビジュアルソリューション事業本部VS第一事業部商品企画部の本村裕史参事

 本村氏は、レグザブランドの立ち上げ以前から商品企画を担当してきたテレビ開発のキーマン。2006年2月、深緑の“レグザ・グリーン”に彩られた「REGZA」ロゴを掲げ、新ブランドの立ち上げを宣言したときも中心に同氏がいた。

2006年2月に行われた新ブランド発表会の様子。本村氏が持っているのは「メタブレイン・プロ」の基板だ

 「おかげさまで、今年でレグザ誕生から10周年を迎えることができました。ブランド立ち上げ時はゼロからのスタートでしたが、“こだわりのある本物”を作っていきたいと考え、大々的に発表しました。それは、東芝社内でも『本物を作るぞ宣言』として知られています」(本村氏)

 このとき発表されたレグザは意外にも最上位の「Z」ではなく、スタンダードモデルにあたる「C1000」シリーズとHDD内蔵の「H1000」シリーズだった。しかし全モデルに「face」時代から定評のあった映像エンジン「メタブレイン・プロ」搭載し、前を向いたアンダースピーカー、マットな黒を基調としたミニマルデザインなど、映像を見るというテレビの本質を重視した製品だった。

 「われわれのこだわりは、例えば見かけ上の“店頭画質”で勝負するのではなく、本質的な性能で勝負することです。技術的に“良い”と思ったことは多少コストがかかってもやる。ニッチな製品であってもコアなユーザー層に『いいぞ』と言われるようなものを作りたい。そう考えて製品を作ってきました」(本村氏)

 店頭画質とは、液晶テレビの画面輝度を上げ、家電量販店の明るい店内で目立つようにすること。パッと見の派手さに目を奪われがちだが、そのまま家の中に持ち込むと明るすぎて実用的ではない。それを指摘し、実際の視聴環境に合わせた画質調整を提案したのが、2008年発売の「ZH500」に採用された「おまかせモード」だった。現在のレグザにも継承されている「おまかせドンピシャ高画質」の最初のバージョンといえるもので、地味ながらも環境面からテレビの画質を見直したエポックメイキングな機能だった。

右が「おまかせモード」。周囲が暗いと画面輝度を下げ、それに合わせて色温度やガンマといった各パラメータも自動調節する

REGZAの系譜

 そもそも「REGZA」というブランド名は、ドイツ語で“躍動感”を意味する「Regsam」を元にした造語だ。その名の通り、東芝は10年間にわたってアグレッシブに製品を送り出してきた。本村氏は振り返る。「テレビとして世界で初めて採用した超解像技術、一般向けに全局常時録画(全録)を提案した『タイムシフトマシン』、それまでの常識を打ち破る処理性能を持つ『CELL REGZA』もありました。またクラウドサービスで『テレビとネットをつなぐとこんなに便利なことができる』と提案したのもレグザが最初だったと思います」

2009年の「CEATEC JAPAN」で注目を集めた「CELL REGZA」。ピーク輝度の明るさは衝撃的だった

 「CELL REGZA」(55X1)は憶えている人も多いだろう。2009年の秋に発売されたハイエンドの液晶テレビで、それまでのテレビ用CPUとはケタ違いのパワーを持つ「Cell Broadband Engine」を搭載していた。また輝度を高めた専用の直下型LEDバックライトとローカルディミングにより、500万:1のコントラスト比と1250cdのピーク輝度を実現。現在のHDR(ハイダイナミックレンジ)のトレンドを先取りしたような製品だった。

 積極的な製品開発で新しいもの好きの男性層を中心に支持されてきたレグザだが、2011年に人気ミュージシャン・福山雅治さんを起用したテレビCMが流れると女性層にも急速に浸透。販売も好調となり、「福山効果」と言われた。もちろん、その背景には自身のこだわりを発信し続けたレグザの開発陣がいて、それを受け止めてきた男性ファン層がいた。当時、本村氏は「店頭で奥さんがレグザに気づけば、旦那さんも(購入の)話を切り出しやすいでしょう」と笑いながら話していたが、実際にテレビCMに助けられた人も多いはずだ。

国内向けテレビ開発にリソースを集中

 しかし現在、東芝は苦境に立たされている。昨年12月に発表した「新生東芝アクションプラン」に基づく構造改革が進められる中、テレビを含む映像事業でも、海外でのテレビ自社開発と販売を終息し、ブランド供与型ビジネスに移行することが発表されている。

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