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» 2016年08月15日 11時00分 UPDATE

20年間回り続ける“肉屋の水車” 鹿児島「肉のハッピー」 (1/3)

頭の中で想像しながら、マジックでダンボールに設計図を書いて作っていく。20年経っても止まることのない、肉屋の水車。

[金原みわ,ITmedia]

 鹿児島と聞いて思い浮かぶものは、なんだろうか。雄々しい桜島だろうか。歩けば出会うような豊富な温泉だろうか。それとも偉大な西郷隆盛だろうか。

 そんなことを思いながら鹿児島市内を車で走っているとこんな看板が目に飛び込んできた。

 うんそうか、鹿児島といえば豚肉だ。かごしま黒豚だ。ああ、かごしま黒豚の脂が乗った肉が食べたい。舌の上で溶けるようなしゃぶしゃぶが食べたい。

 ……それにしても。

……この肉屋は、一体なんなのだろう。店先に繰り広げられた不思議なカラクリを見つめながら、しばし思考停止した。

連載「孤高のD.I.Y.」

世の中には、作らずにはいられない人たちがいる。役に立つとか評判になるとかを超越して、“自作”せずにはいられない人たちが。そんな人たち自身と、彼らが作ったものを、ライターの金原みわさんが追いかけます。

金原みわ

珍スポトラベラー。全国の珍しい人・物・場所を巡り、レポートを行う。都築響一氏主催メルマガ『ROADSIDER’s weekly』、関西情報誌『MeetsRegional』、ウェブメディア『ジモコロ』にて連載中。著書『さいはて紀行』(シカク出版)発売中。

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巨大な水車が目印 肉のハッピー

 ごるんごるんざばばばばば、目の前で盛大な音を立てて水車が回る。動力部は荷造りのビニールひもとつながっていて、操り人形のように不思議な木が動く。

 その人形の動きはさまざまだ。

 リズムに合わせてがごがごがごがごと動く様は、今話題のリオ・オリンピックを連想させなくもない演目である。この部分だけを見たら、よもや肉屋だとは誰も思うまい。

 写真を撮っていると、中に人がいることに気付いた。どうやらここのご主人であり、この奇妙なオリンピックの主催者らしい。話しかけると、一見クールな表情のご主人は親切に教えてくれた。

鬼塚明男さん(70)

――この水車すごいですね……どれぐらい前から作っているのですか?

 「20年前から作ってるよ」

――そんなに前から! 何がきっかけで作り始めたんですか?

 「知人が来ても、どこに店があるのか分からないって言うんだよね。だから目立つように看板を作ったりしてたら、いつのまにかこんなことになってたね。これ、別に川があるわけじゃなくて、全部水道でまわしてるからね」

 確かに近くに川が流れているわけではないようだ。ここまでしてこんな世界を作り上げるのは、なぜなのだろう。

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