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新世代のハイエンド音源、「MQA」の圧倒的な魅力麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(1/3 ページ)

» 2016年08月31日 22時30分 公開
[天野透ITmedia]

 英MQAが開発した最新のオーディオ・コーデック「MQA」(Master Quality Authenticated) 。MQAエンコード音源の配信が、続々と開始されている。これまでこの連載でも何度か取り上げてきたが、その原理から魅力までを麻倉怜士氏が開発者であるボブ・スチュアート氏直伝で大いに語る。麻倉氏によると、MQAは“本物の音”を聴くことができる「新世代のハイエンド音源」だそうだ。

ボブ・スチュアート氏(写真は初めてMQAの講演を行った「オーディオ&ホームシアター展2014」で撮影したもの)

麻倉氏:今回はMQAオーディオの話題をお話しましょう。MQA音源の配信がいよいよ日本でもスタートし、e-onkyo musicなどで2LやスペインEudora Recordsなどの音源をリリースしました。7月中にUNAMASレーベルが10タイトルを、今後HQMストアではカメラータ・トウキョウの音源を配信する予定です。デコーダーもオンキョー&パイオニアのDAP(デジタルオーディオプレーヤー)や、英Meridianの「EXPLORER2」や「PRIME」など、すでにいくつかの対応品が出ています。Mytek Digital「Brooklyn」や、本国では発表済みの「Manhattan II」はDSD 11.2MHzにも対応し、再生環境もミドルレンジからハイエンドまでそろいつつあります。

ボブ・スチュアート氏が工業デザイナーのアラン・ブースロイド氏と共同設立したMeridian Audioの「EXPLORER 2」。コンパクトな手のひらサイズで、MQAと192kHz/24bitまでのハイレゾ信号に対応する

――これまでオーディオショウなどで取り上げられてきたMQA音源が、いよいよ実際のファイルとして手に入るのですね。身近な所ではオンキヨー「DP-X1」やパイオニア「XDP-100R」といった人気のポータブル機がMQAに対応しているので、恩恵を受ける人は多いのではないでしょうか

最近は「ガールズ&パンツァー」などアニメ音源もMQA版が出てきている。画像はパイオニアブランドのポータブルオーディオプレーヤー「XDP-100R」

麻倉氏:なぜ今、MQAかという理由は2つあります。1つは信号処理における効率の問題で、開発者であるMeridian創業者のボブ・スチュアート氏(現在はMQA社会長)が言うには、「サンプリングレートと量子化ビットの数字を上げれば音が良くなるという従来の常識は、実はある程度で頭打ちになるのです。高スペック領域でいたずらにスペックアップを図っても伸び代はあまりなく、となると低いスペックでも別のアプローチを取れば、よりリソースを効率的に使えるのではないでしょうか」とのことです。

――ボブ・スチュアート氏が言う「オーディオ折り紙」という考え方ですね。低域の小音量データ部に高音域情報を“畳み込む”という斬新な発想で、MQAはデータ量の圧縮に成功しています

麻倉氏:もう1つは神経工学面からの理論的発展です。近年の聴覚心理学などの研究によると、人間が知覚できる時間解像度(インパルス・レスポンス)はCD時代など従来想定されたものよりもかなり細かく、これを再生技術に反映させないと音楽が持っていたはずの生々しさが削がれてしまうということが分かってきました。これまでリニアPCM系ではサンプリングレートを拡大してきましたが、それに対してMQAは“時間軸解像度”という考え方に目を向け、これを細かく刻むことで生々しさを感じるような仕組みを目指しています。

――ここが大きなポイントですが、「そもそも時間軸解像度とは何ぞや?」ということが、おそらく多くの人が分かっていないと感じます。一体どういうものなのでしょうか?

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