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» 2017年04月24日 20時17分 UPDATE

麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」:“テレビを見ない世代”向けの番組とは?――「miptv2017」リポート(前編) (1/4)

[天野透,ITmedia]

 映画の街、フランスのカンヌで毎年春に開かれる、映像番組の国際見本市「miptv」。映像の最先端をその目で確かめようと、麻倉怜士氏が今年も南仏へ飛んだ。日本でも次世代放送の開始がカウントダウンに入る中、世界的には新たな感性や才能が時代の扉を開こうとしているらしい。まずは4Kに関する最新動向から大いに語ってもらおう。

映画の街・カンヌで開かれるmiptv。今年の天気は晴れたり曇ったりのまちまちだった様子

麻倉氏:4月初旬にカンヌで開催された「miptv」に今年も参加してきました。miptvはリードミデムが主催する映像番組の国際見本市で、秋にも「mipcom」という似たようなイベントをやっています。

――ですが秋はオーディオシーンが一番活気づく季節なので、先生は未だ参加できていないんですよね。9月のIFAでドイツへ行き、10月にはインターナショナルオーディオショウがありますから。通常の執筆に加えてさらにもう一度ヨーロッパというのはさすがに厳しそうです

麻倉氏:その分春のカンヌはしっかり見てきていますよ。目的はソニーがプロデュースしている特設シアターでの新世代映像技術セミナーです。毎回開催されるこれに参加して世界の最新動向を調べており、2012年から参加して今年で6回目です。当初は3Dが中核だったのが、2014年から徐々に4Kへシフトしてきました。さらに当初は「4Kとは何か」だったのが、年を追うごとに効果的な4Kの使い方が確立され、昨年あたりからさらにHDRが加わり、今年は完全にHDRが主役となりました。

――ここを見れば世界の映像制作のトレンドが分かる、そういう場所ですね

麻倉氏:そのセミナーですが、「ソニー4K UHDシアタープログラム」と銘打っており、ソニーだけではなく、Eutelsatなど数社のコンテンツメーカーによる共同プロデュースでした。実際のところソニーの話はあまりなく、日本、イギリス、イタリア、ドイツという、4K制作先進国でどのような作品の切り口があるかという話題が、3日間に渡って次々と展開されました。

――イギリスはともかく、日本、ドイツ、イタリア……どうにもこの3国は色んな意味で新しいモノや感性に訴えるモノを作るのが得意なようですね

麻倉氏:三国同盟ですね。ちなみに私は4Kの専門家として取材していたんですけど、日本からの“4K専門家”という視点の取材は、実は私だけで、あとの記者はもっぱら番組流通を取り上げていました。

 それはともかく、4K番組制作の進化、HDRの進化、VRと4K/8Kのコラボレーション、日本における8Kへの期待というのが今回のお品書きです。まずは世界へ急速に広がっている4K+HDRコンテンツ制作の最前線を、特に4Kに焦点を当ててお話しようと思います。

 まずは市場の概況からお話しましょう。日本では既にスカパー!の4K実用放送が開始されており、次にBSが予定されています。一方でNETFLIXのようなOTT(Over The Top、オンライン動画配信サービスのこと)の隆盛も外せません。これはヨーロッパも同じで、主要なメディアはSKYを中心とした衛星放送とOTTとなっていて、特にOTTの流れが加速しています。

――既存のインターネット回線を使うのと、ソフトウェアの更新で柔軟に対応できるというのがきっと強いんでしょうね。4Kテレビとネットさえあればすぐに見られるわけですから

麻倉氏:日本国外では4Kと8KをまとめてUHD(Ultra High Definition)と呼んでいて(今はもっぱら4Kのことを指していますが)、英国のUHDシェアは1番がSKYで32%、次いでNETFLIXの17%、さらにAmazonと続いています。SKYをプラットフォームにした4K放送環境が従来の放送の延長線上にあり、同じようにNETFLIX、Amazonもプラットフォームとして見られています。

 ドイツテレコムによるドイツのUHD調査では300万台以上のセットが売れていて、今年末までに約30%以上の普及率が見込まれるとしています。「4Kテレビに興味がありますか?」という設問に対しては25%が「はい」と回答しました。見られ方は英国とほぼ同じでSKY、NETFLIX、Amazonが強く、これに加えてVideoLoadというOTTも普及しています。この調査結果はテレビ価格の下落による市場の広がりと、プラットフォームの充実で、「買いたい」というユーザーが増えてきたことを示しています。「Device」(機材)、「Content」(番組)、「Service」(事業者)が整い、活性化しているというわけです。

ドイツテレコムによる調査では25%の回答者が「UHD TVに興味がある」と回答した。価格も下がってきており、これから一気に普及が進む可能性がある
日本では「4K」「8K」と呼ばれるが、欧米では「UHD」と呼ぶのが一般的。あちらで4Kというと、DCIの映画フォーマットを指すことがある

麻倉氏:ソニーからの報告によると、新動向としてNETFLIXがモバイル向けHDR動画ストリーミングサービスを開始しました。新機種「Xperia XZ Premium」でスマホの4K/HDR視聴が可能になるそうです。パッケージを見るとハリウッドでは120タイトルのUltra HD Blu-ray Disc(以下、UHD BD)がリリース済み。新情報として「Planet Earth」がUHD BD化し、BBCのストリーミングサービスではトライアルとしてこれが配信されるようです。もちろん4K HDRですよ。加えてPlayStation 4 Proでの4K HDR展開も、裾野を拡げる役目を果たしています。

NETFLIXやAmazonはかなり本格的なオリジナルコンテンツを制作しており、4KプラットフォームにおいてOTTは見逃せない存在となっている。画像はジェレミー・クラークソン氏(画像=右)率いる英国お騒がせ3人組によるAmazonの人気番組「The Grand Tour」

――4Kテレビも随分と価格がこなれたモデルが出てきて、ちょっと特別だけどレアではなくなりましたね

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