「実質0円」廃止でもiPhoneの独走は変わらない?――BCNが2月の販売データを分析
3キャリアがスマートフォンを実質0円で販売する施策が終了したことで、スマホのパワーバランスはどう変わるのか? 販売データを集計しているBCNが説明した。
総務省が2015年12月に「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」にて、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3キャリアに対して、スマートフォンの“実質0円”販売施策を是正するよう提言。これにより、2016年2月から、3キャリアのスマートフォンが実質0円で販売されることはなくなった。
実質0円終了が、スマートフォンの販売台数やシェアに、どのような影響を及ぼしているのだろうか? 特に気になるのが2月の動向だ。全国の大手家電量販店やネットショップのPOSデータを集計しているBCNがデータを分析し、チーフエグゼクティブアナリストの道越一郎氏が3月9日に説明した。BCNのデータは2016年1月時点で全国23社、2608店舗のPOSデータを集計したもので、キャリアショップやメーカー独自のオンラインショップのデータは含まれない。
2月の販売台数 前月比とシェア――3キャリアが軒並みダウン、Appleも大きくダウン
2月に実質0円販売が終了することを受けて、1月は駆け込み需要が起きて、スマートフォンの販売台数は前年比138.6%だったが「ピークは低水準」(道越氏)で、2月は前月比52.1%、前年比82.5%と大幅に減少した。
2月のスマートフォン販売台数シェアを3キャリア別に見ると、ドコモが23.2%、KDDIが26.8%、ソフトバンクが24.5%で、3キャリアとも前月比で40%台だったのに対し、Y!mobileがシェア8%、前月比93.1%で下げ幅が最も小さかった。
端末メーカー別に見ると、2月のスマートフォン販売台数シェアは、Appleが45.7%でトップを維持しているが、前月比で38.7%は最大の下げ幅だった。道越氏によると、iPhoneで実質0円廃止の影響を最も大きく受けたのは「iPhone 6」の16GBモデルだという。「2月の販売台数は前月比で9割ほど落ちている」というほどで、1月から大きくシェアを落としたのもうなずける。iPhone 6の16GBモデルは実質0円で販売されているケースが多かったので、当然の結果といえる。
2位のソニーモバイルコミュニケーションズはシェア13%で前月比56.7%。3位のシャープはシェア8.5%だが、「新製品が出た影響もあり」(道越氏)、前月比では唯一100%超えの104.4%となった。一方、ASUS、Huawei、プラスワン・マーケティング(FREETEL)は前月比90%以上となっており、SIMロックフリー勢は好調を維持している。
販売台数の前年同月比――ソニーモバイルが最大の落ち込み
スマートフォン販売台数の前年同月比を見ると、12月と1月は3キャリアとも前年を上回ったが、2月は60〜70%台にまでダウンした。Y!mobileとSIMロックフリーはここでも好調で、2月はY!mobileが170.2%、SIMロックフリーが156.3%まで上昇している。
端末メーカー別では、ソニーモバイルが2月に前年比58.3%と特に低く、次いでAppleが前年比71.9%だった。ソニーモバイルは駆け込み需要のあった1月でも前年比89.9%と振るわず、166.2%だったAppleとは対照的だ。前年比ベースでは、ソニーモバイルが最も大きなダメージを受けた。道越氏は「1年前はXperia Z3 Compact(SO-02G)が売れたが、今回はそれに匹敵するヒットモデルがなかった」と要因を話す。過去機種と比べ、2015年冬に発売したXperia Z5/Z5 Compact/Z5 Premiumの売れ行きがいまひとつだったことが分かる。
スマートフォンの販売に占めるSIMロックフリー端末の割合は増加傾向にあり、2月は販売台数シェアで過去最高の17.9%にまで上昇した。
SIMフリーはASUS、Huawei、FREETELが好調
スマートフォンの販売台数シェアの推移についても見ていこう。Appleのシェアが徐々に下がり、2月は1月の62.8%から45.7%にまで下がったが、他メーカーのシェアがAppleを脅かすほど伸びているわけではない。Appleの独走状態は、依然として変わらないわけだ。加えて、Y!mobileが3月4日「iPhone 5s」を発売したことも、Appleにとっては追い風だ。道越氏によると、2016年2月29日〜3月6日と、2015年3月2日〜3月8日の販売数を比較すると、Y!mobileは267.7%の伸びを記録し、5s効果もあったことが想像できる。
SIMロックフリースマートフォンのシェアは、ASUS、Huawei、プラスワン・マーケティングが約24%のシェアを分け合う、三つどもえの戦いを繰り広げている。OS別ではAndroidが9割以上と圧倒的で、iPhoneのSIMロックフリーはBCNが項目に出さないほどシェアが低い状態だ。Windows 10 Mobileスマートフォンは、徐々にではあるがシェアを伸ばしており、4%前後を確保している。
道越氏は、キャリアとSIMロックフリースマートフォンのスペックの違いについても解説。カメラの画素数はキャリア端末は12〜13メガピクセルと20メガピクセル以上でばらけているのに対し、SIMロックフリー端末は8〜10メガピクセルと13〜16メガピクセルに集中している。動画撮影はキャリア端末は4K対応の割合が2月は75.8%と高いが、SIMロックフリー端末で4K撮影ができるモデルは2月はわずか1%。一方、画面サイズはSIMロックフリー端末は5〜5.5型が大きく、キャリア端末よりも大きい傾向であることが分かった。
実質0円の恩恵を特に受けていたiPhoneの販売数が下がることは容易に想像できるが、日本でAppleに対抗できる最有力候補といえるソニーモバイルもシェアを落としていることが気がかりだ。一方、MVNO(格安SIM)の契約が増加傾向にあることと、各メーカーが続々とSIMロックフリー端末を投入していることもあり、SIMロックフリー勢の好調はしばらく続きそうだ。とはいえ、これもiPhoneのシェアを脅かすまでには至らない。シェアの変動はあるものの、2016年もAppleがトップに君臨する状態は変わらなそうだ。
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