携帯電話はどのようにつながるのか? 「圏内」になるためのステップ:IIJmio meeting 16(2/3 ページ)
IIJが7月15日に東京でファンミーティング「IIJmio meeting」を開催。エンジニアの佐々木太志氏が「スマートフォンがつながる仕組み」と題して、携帯電話がつながる裏の仕組みを紹介した。ケータイが「圏内」になるために、どんなステップを経ているのだろうか?
ネットワーク側の仕組み
佐々木氏は次に、電波を使って送られてきた信号をネットワーク側がどう処理しているのかを説明した。
これまでのIIJmio meetingでは、インターネットとその出口のPゲートウェイ(PGW)の説明が多かったが、今回はその前に置かれているeNodeB(いわゆる基地局)に近い部分を解説。eNodeBの裏にはMMEという機械があり、その奥にSIMを管理するHLR/HSS(図ではHSS)がある。
スマホに電源が入っていなくても、eNodeBは報知情報と呼ばれる信号を定期的に送信している。報知情報は12ブロックからなり、その中にさまざまな情報が格納されている。受信側は電波を“聞いて”、マスターインフォメーションブロック(MIB)と、システムインフォメーションブロック1(SIB1)を確認する。SIB1の中には、SIB2から11のスケジュールが含まれているので、それに従って聞いていくと12個の報知情報を全て聞ける。この段階で端末は聞くだけなので、まだ電波は出していない。
報知情報には、事業者を識別するためのPLMN(Public Land Mobile Network:公衆携帯電話網)が入っている。例えばドコモの場合は44010、ソフトバンクだったら44020だ。それ以外に、周波数を表すバンド番号、基地局を選別するためのCellID、無線関係のさまざまなパラメータのほか、緊急地震速報なども、この報知情報に入っている。つまり、緊急地震速報の「受信だけ」だったら、スマホが圏内にならなくても(電波を聞いているだけの端末でも)、実際に正しく動くかどうかは別にして受信できる。スマホは電源が入ると、圏内になる前に、報知情報で定められたスケジュールに従って電波を聞いていく。
スマホは報知情報から接続する基地局を決める。この段階で、まだ端末は電波を出さず、どこに接続するか考えているだけだ。SIMカードにはRegistered PLMN(RPLMN)という、最後に接続していた携帯電話事業者の数字が記録されており、例えばRPLMNが44010であれば44010の基地局に接続しようとする。44010の基地局が複数あったら、強い電波を出す基地局に接続する。
もし、RPLMNがない新品のSIMカードだった場合、もしくはRPLMNのeNodeBがない場合は、SIMカードに記録されているHome PLMN(HPLMN)を確認する。HPLMNはSIMカードを発行した事業者のことで、HPLMNのeNodeBがあれば、そこに接続しようとする。
RPLMNのeNodeBもHPLMNのeNodeBもなかったら、SIMカードに記録されたOperator controlled PLMN(OPLMN)をチェックする。OPLMNは、SIMカードを発行した事業者が、自分のHPLMNのeNodeBがないときに優先する接続先のこと。このケースのほとんどはローミングの場合だ。海外では国内の基地局の電波はキャッチできないので、そのSIMカードを発行した事業者が用意した希望する事業者リストに沿って接続する。
なお、上記に合致するeNodeBがなかった場合は、一番電波の強い基地局に接続しようとする。
接続する基地局が決まったら、初めてスマホは電波を出す。電波を出すということは他の電波の邪魔をする可能性があるので、きちんと作法が決まっている。まず、端末はpreamble(プレアンブル)という電波を出す。他の電波の邪魔をしないタイミングで自分だけがプレアンブルを出せたら、基地局はレスポンスを返し、通信可能なタイミングをスマホに指定する。
プレアンブルの応答で指定された送信タイミングになると、端末と基地局間のリンクとなるRRCの接続要求を出す。eNodeBはRRCの接続要求が来たら、接続確立のためのパラメータを返し、それに基づいてRRCを確立する。
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