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組織の人間関係をマップ化するプログラム、産総研が開発

» 2005年02月09日 21時32分 公開
[ITmedia]

 産業技術総合研究所(産総研)は2月9日、組織の構造や人間関係をマップで把握できるプログラムを開発したと発表した。「コンプレックスネットワーク理論」を活用したプログラムで、実際に産総研に適用し、研究者の共著関係をネットワーク化して解析した。一般企業の組織構造の把握にも利用できるようにする計画だ。

 同理論は、ノードの塊(クラスタ)が存在すると考える「スモールワールドネットワーク理論」と、リンクを多数持つハブノードと、ほとんど持たないノードがあるとする「スケールフリーネットワーク理論」両方の特徴を持つ。ノード同士のリンクがランダムに存在すると仮定する「ランダムネットワーク理論」と違い、組織の人間関係など大規模で複雑なネットワークの特徴をとらえやすいという。

 産総研は、各研究者の研究タイトルや内容、共同研究者、発表日などを登録したデータベースから、論文と著者を線でつなぎ、共著者同士も線でつないで共著関係ネットワークを作成した。抽出した研究者数は7724人(うち産総研研究者は3214人、外部研究者は4510人)。6つの研究分野を6色に分けて表示し、分野同士の連携が分かるようにした。

2004年度学会発表データから構成した共著関係ネットワーク(左、図1)と、同ネットワークから抽出したメガネットワーク(最大ネットワーク)
ネットワークの大きさ分布。横軸はネットワークの大きさの順位、縦軸は全ノード数に対するネットワークの大きさ比率

 解析の結果、全研究者の65%で構成するメガネットワークが存在することや、各研究分野が年度ごとにクラスタ構造を形成しながら緩く接続していることが判明。産総研内の異分野融合はある程度成功していることが分かった。

 組織連携に重要な人間関係を割り出すため、グループ間をつなぐ数少ないリンクを重要なリンクとして計算する「Shortest Path Betweenness」(SPB)を適用した。産総研では、分野のクラスタ同士をつなぐリンクの重要度が高くなっていたという。

SPBの計算結果例。図1で2番目に大きいネットワークを抽出し、SPB値が高い10リンクを太線で示した

 この結果は、例えば、SPBの大きいリンクを持つ研究者に資金や人的資源を投入し、異分野連携を強化するといった戦略の判断材料になるとしている。

 今後は、社内書類や会議参加者記録、メール送受信関係などから一般的な人間関係ネットワークを解析できるシステムを、企業向けに提供したい考えだ。同プログラムは現状、コマンドライン操作だが、Webベースのインタフェースを開発して誰でも簡単に操作可能にする計画だ。

 また、産総研の論文データベースに外部機関のデータベースを取り込み、日本や世界の学術・産業界地図を作りたいとしている。

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