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» 2007年08月27日 12時22分 UPDATE

DVDが売れない時代のアニメビジネス GDHに聞く

アニメDVDの販売不振が、日本のアニメビジネスに変革を迫っている。YouTube活用や次世代DVD対応、携帯電話へのコンテンツ配信――次に“来る”ビジネスは何か、模索が続く。

[岡田有花,ITmedia]
画像 YouTube公式チャンネル「GONZO DOGA」

 国産アニメのビジネス環境が変わり始めた。テレビ放映される作品数が増加し、競争が激化する一方、収益の中心だったアニメDVDは国内外で売り上げ不振。PC・携帯電話向け動画配信の一般化や次世代DVD発売などで再生環境も多様化し、「地上波で放映してDVDを売る」というこれまでのモデルに変革が迫られている。

 アニメ製作会社「GONZO」を傘下に持つGDHは、DVD市場の低迷の直撃を受け、昨年度は最終赤字を計上するなど苦戦中。YouTubeに専門チャンネル「GONZO DOGA」を設置するといった新たな試みを進め、ネットを積極活用しながら新たな“アニメの売り方”を模索している。

DVD売り上げ不振の原因は

 「当社のDVDが売れない最大の理由は作品の力不足だが、業界全体でもアニメDVD販売が不振だ。その原因は1つではないだろう」とGDHの内田康史副社長は言う。HDD&DVDレコーダーの普及や、YouTubeのような動画共有サイトへの違法アップロードの影響などが、DVD不振の原因として考えられるという。

 HDD&DVDレコーダーの普及は、特に国内のアニメDVD販売に打撃を与えていると見る。地上波で放映された作品を家庭でDVDに録画・アーカイブできるようになり、放映終了後に改めてDVDを買おうというユーザーが減ったとみられるためだ。

 動画共有サイトは、海外のDVD販売を直撃していると考えられる。日本で放映された新作アニメが、YouTubeのように世界共通フォーマットの動画共有サイトにアップロードされると、海外のファンは海外版のリリース前に視聴でき、DVDを買わずに済む。日本版をコピーした海賊版DVDが、正式版発売前に安価に出回ることもある。

 ハリウッド映画など世界中に流通網を張り巡らしているコンテンツホルダーは、DVDを世界同時に発売してタイムラグによる利益ロスを防いでいるが、GDHのように世界に流通網を持たない企業には同時発売は困難だ。

 「当社がアニメDVDを海外展開する場合、字幕や音声、パッケージなどを海外仕様に作り変える時間が必要で、どうしても日本よりも後の発売になってしまう。このタイムラグのせいでビジネスチャンスを逃している面はある」

 ただ“犯人探し”に躍起になるだけでは、次のビジネスは生まれない。「時代とともにメディアは移り変わるもの。最も多くの人に視聴してもらえ、お金を払ってもらえる可能性が高いメディアを試し、ビジネスを切り開く必要がある」

YouTubeの集客力活用

 「最も多くの人に視聴してもらえるメディア」と同社が位置づけているものの1つがYouTubeだ。「YouTubeの圧倒的な集客力は魅力。当社のアニメを最初に知ってもらう場として活用したい」

 同社はアニメ製作会社として初めて、8月1日にYouTubeに専門チャンネル「GONZO DOGA」を設置。YouTubeの積極活用に乗り出した。8月27日までに最も多く再生された動画の再生数は累計11万以上。手ごたえを感じている。

 YouTubeに著作権侵害コンテンツが掲載される問題は解決していないが「新しい産業には課題が発生するもの。GoogleやYouTubeは違法コンテンツを問題視し、対応すべきと認識している」と評価。同社もYouTubeの違法コンテンツ対策に協力しつつ、ユーザーが無許諾アップロードした同社作品も、プロモーションに活用できそうなら残しておく、といった対応も模索する。

違法サイトが証明した世界のニーズ

 ネット配信は今後、積極活用していく方針だ。作品を認知してもらう場として利用するほか、ネットならDVDと異なり、コンテンツを世界展開する際の流通タイムラグが生じないため、世界を舞台にしたビジネスチャンスも広がると見ている。

 国内では有料動画配信も試している。売り上げは「DVDと比べるとまだまだ」だが、ニーズは世界中に確実にあると見る。それを証明したのは、皮肉にも違法サイトだ。

 「日本のアニメを月額固定料金で安価に配信する違法サイトが海外で人気だ。お金を出してもアニメを見たいというニーズが世界中にあるということ。世界に向けてオフィシャルコンテンツを発信し、視聴者を合法コンテンツに誘導する責任が、われわれコンテンツホルダーにはある」

製作現場にも変化

 変化しているのはビジネスモデルだけではない。テレビ、映画館、DVD、PC、次世代DVD、携帯電話――動画コンテンツのフォーマットや端末も多様化が進んでおり、それぞれに合わせたコンテンツ制作も必要とされている。

 「携帯画面だと引きの絵では見づらいし、次世代DVDのハイビジョン映像はその逆。フォーマットによって作り方や視聴のされ方が異なるため、製作現場もそれに合わる必要がある。ある実写映画の製作現場では、携帯電話配信用のカメラを別に用意し、寄りで撮影していると聞く。アニメ制作でも同様な対応が必要になるだろう」

 メディアに合わせてコンテンツを作り変えるとなると、制作コストが跳ね上がりそうだが、「1つのコンテンツを、端末特性に合わせてさまざまに加工することができる」とし、加工を前提にしてコンテンツを制作することで、コストを圧縮できるとみている。

 環境の変化がビジネスモデルにもコンテンツ制作にも変革を迫っており、“次世代”への模索はまだ始まったばかり。映像制作業界にとってチャレンジングな環境は、しばらく続きそうだ。

 「過去を100年の歴史を見ても、映像メディアが映画からテレビに変化し、ビデオカセットの発明がハリウッドのビジネスモデルを変えるなど、環境は常に変化してきた。作り手としてはその環境に早く体を慣らして視聴者に満足してもらえる作品を作り、新たなビジネスを模索していくしかない」

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