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» 2007年12月18日 20時10分 UPDATE

私的録音録画小委員会:反対意見多数でも「ダウンロード違法化」のなぜ (2/2)

[岡田有花,ITmedia]
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 レコード協会の生野委員は「タダで入手できないから買わなくなる、というのは全くありえない」と強い調子で反論する。「ネット上での違法流通は、日本国内でも中国の海賊版と同じぐらいひどい状況。このままではレコード業界のビジネスが立ちゆかなくなる」

 対して津田委員は言う。「違法ダウンロードをさせろとは言っていない。コピーワンスやCCCDもそうだが、権利者団体の『保護を強化せよ』という流れが進めば、不買につながる可能性があると言っている」

日本人は「まじめにお金を払っている」のだから

 「1999年ごろから、日本・海外のコンテンツ事情を見てきたが、日本ほどコンテンツに誠実にお金を払っている国はなく、そのおかげでコンテンツビジネス市場も拡大してきた。これだけお金を払っているんだから、多少のコピーはさせてくれてもいいじゃないですか。権利者のみなさんも、ユーザーを信頼してくださいよ」と、津田委員は苦笑する。

 華頂委員は「おっしゃることはよく分かるが、ネットのインフラが整ったことによって、その前提が崩れている」と反論。津田委員は「それでもいろんなものが踏みとどまっているのが日本で、踏みとどまっているからこそ新ビジネスが模索できる。ユーザーも権利者も合意した上で、新しいものを作って前に進める環境作りが必要だが、今そういう状況になっていない。溝は深まるばかり」と話す。

 主婦連合会の河村真紀子委員も「疑わしきは権利者の利益に、という方向に議論が流れてきた。行政が消費者保護に力を入れる中、著作権法制は文化と関係あるからといって消費者をないがしろにするのは、公正性・透明性にも欠けている。文化庁には消費者へのフェアという視点も考えてほしい」と話す。

「保護ではなく、ビジネスで戦うべき」と主婦連・河村委員

 河村委員は「損害を与えているのはダウンロードではなく、違法アップロードを取り締まるべきだろう」と華頂委員に意見した上で、「小六委員の言う『保護』は、ビジネスで利益を生むものではない。ビジネスで戦ってもらわないと」述べる。これに対して華頂委員は「違法アップローダーとビジネス上での競争などしたくはないんですが」と皮肉たっぷりに反論。河村委員は「だから取り締まるべきと言っている」と返す。

 河村委員は私的録音録画補償金についても言及。「ビジネスで戦うべきだ。保護を前提に黙って座り、『ただ保護されていれば細々と補償金だけが入ってくる』ということでは、クリエイターは食べていくことはできない。このような制度で、その点がうやむやになっている気がしている」と述べると、実演家著作隣接権センターの椎名和夫委員は「その発言は侮辱です!」と声を荒らげる。「侮辱ととらえられたなら謝罪するが、これは皮肉。どうしてこういう皮肉が出たか考えてほしい。権利者が保護されるべき権利は、あるのかと」(河村委員)

 小六委員は「日本音楽作家団体協議会の構成員は、著作物の利用者でもある。協議会での議論でも『ダウンロードを違法化しないほうが、ビジネス面では優位なのでは』という意見も出た。だが著作権のそもそもの理念を考え、利用者側としての不都合を受け入れても、こうするしかないという結論になった」などと説明する。

新ビジネスに支障も?

 ITビジネスのコンサルティング事業を手がけるイプシ・マーケティング研究所社長の野原佐和子委員は「古い法律でがんじがらめになっていては、新しいビジネスが生まれないのでは」と懸念を述べる。「今は『違法かもしれない』サービスが将来のビジネスを生む可能性がある過渡期。古い法律の規制が行きすぎることは避けなくてはならない」(野原委員)

 委員会の構成員の選び方にも言及する。「委員会はその時点の関係者、つまり、今現在被害をこうむるかもしれない人でのみ構成されているために、どうしても近視眼的な議論になる」(野原委員)

「国際的潮流」は危険なキーワード

 また、津田委員は文化庁が「国際条約や先進諸国の動向を見ても、ダウンロードは違法化すべき」としたのに対して、『国際的潮流』というのは危険なキーワード」と指摘する。

 「国によって違法コピーの状況やDRMの仕組みも全く異なる。例えば(デジタル)TV放送にこれだけ厳しくDRMをかけているのは日本だけ。そういった国別の事情のバランスも考えるべき」(津田委員)

 椎名委員は「地上波テレビのビジネスモデルが日米で違うという事情は、総務省の委員会でも検討してきた。そういった違いがありながらも、ネットと向き合う上での規範という意味では横並びはあってもいいのではないか」と話す。

文化庁「総合的に考えると、法改正は不可避」

 文化庁の川瀬室長はこういった意見を踏まえつつも「改正(ダウンロード違法化)はやむをえない」と話す。「先進諸国の例にならうというだけでなく、違法着うたやファイル交換によるダウンロードが、適法な利用を凌駕しているという事実がある。フリーライドの典型」(川瀬室長)

 また、違法アップロードしているユーザーに対して、日本レコード協会などが警告すると、9割がアップロードをやめる――といったことや、P2Pファイル交換ソフトの利用していた人が利用をやめた理由について、26.4%が「著作権侵害を避けるため」と答えた――といった事実を踏まえ、「総合的に勘案すると、(違法コンテンツ流通への抑止力としても)改正はやむをえない」と話す。

 新ビジネスへの影響については「例えば、違法にコンテンツが投稿されるサイトについて、サービスをやめさせるという方向ではなく、権利者から許諾を出して適正に利用できるようルール作りをするという方向もある」などと話す。

「パブリックコメントの結果、重く受け止めて」

 「ダウンロード違法化に反対したパブリックコメントの結果を、重く受け止めてほしい」と津田委員は言う。主婦連合会の河村真紀子委員も「パブリックコメントの結果、圧倒的多数が反対だった。それだけの意見が集まった事実がありながら、『それはそれとして』と簡単に進めていいのか。反対意見の数を受け止め、反対した人にも納得してもらえる説明できるようにすべき」と批判する。

 川瀬室長は「反対意見はもっともだと思うし、その意見は十分に踏まえているつもりだ」と釈明する。「反対する人々の疑念に答えるため、政府、文化庁、権利者にも汗をかいてもらって、まぎれないように運用していきたい」(川瀬室長)

 例えばユーザー保護の施策として、法改正がなされた場合、その内容を政府・権利者がユーザーに周知徹底するほか、権利者がユーザー向けの相談窓口を設置したり、違法ダウンロードに対する警告方法を周知。適法サイトを示すマークを普及させる――といったアイデアを提案。「知らずに違法サイトからダウンロードした」といった事態を避けられるよう、合法サイトを簡単に見分けることができる仕組みを作るとしている。

 また法執行の面でも、ユーザーの一方的な不利益にはなりにくいと説く。「仮に、権利者が違法サイトからダウンロードしたユーザーに対して民事訴訟をするとしても、立証責任は権利者側にある。権利者は実務上、利用者に警告した上で、それでも違法行為が続けば法的措置に踏み切ることになる。ユーザーが著しく不安定な立場に置かれる、ということはない」などとする。

やっぱり「違法化」

 委員会の主査を務める中山信弘・東京大学教授は「一番大事なのは利用者の保護」としながらも、「違法サイトからのダウンロードを違法にすることで、国民の意識は変化するだろう。『情を知って』という言葉も入る(違法サイトと知ってあえてダウンロードしていないと違法とならない)し、刑事罰もない。一般のユーザーはそれほどひどい目には遭わないと思う」と、違法化は不可避――という方向で議論をまとめた。

 また、今回の議論はダウンロードのみ「複製」とみなし、ストリーミングサービスは対象外。ストリーミングサービス利用時にWebブラウザに残るキャッシュについては複製とは扱わず、違法サイトで公開されたコンテンツのストリーミング視聴は合法、ということになる。文化庁は「キャッシュの扱いについて議論した著作権分科会の今年1月の報告書などを踏まえ、必要に応じて法改正すれば問題ないのでは」などとしている。

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