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» 2007年12月20日 18時34分 UPDATE

「ダウンロード違法化」なぜ必要 文化庁の配付資料全文

「ダウンロード違法化」の是非について検討した委員会では、違法化を既定路線とした資料が、文化庁から配られた。全文を掲載し、その背景を解説する。

[岡田有花,ITmedia]

 「著作者に無断でアップロードされた動画、音楽をダウンロード(=複製)する行為」について、著作権法30条に定められた「私的使用」の範囲から外し、違法とすべきという議論が、12月18日に開かれた、文化庁長官の諮問機関・文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会(第15回)であった(→記事:反対意見多数でも「ダウンロード違法化」のなぜ)。委員会で文化庁が「議論のたたき台」として配布した資料は、「ダウンロード違法化」を容認する方向でまとめられており、小委員会の議論もこの資料に沿って進行した。

画像 裏面
画像 文化庁が配布した資料の表面

 現行の著作権法では、映像や楽曲を著作者に無断でアップロードする行為は、公衆送信権(送信可能化権)の侵害となり、違法だ。だがこれらをダウンロード(=複製)する行為は、著作権法30条の「私的使用」の範囲内で、合法となっている。

 これまでの小委員会では、日本レコード協会を中心とした権利者側の委員が「違法着うたサイトや、P2Pファイル交換ソフトからのダウンロードで経済的被害を受けている。アップロードを取り締まるだけでは不十分」などとし、ダウンロードも違法にするよう主張してきた。

 これに対してIT・音楽ジャーナリストの津田大介委員が「経済的被害は実証されていない」「ユーザーから見れば違法か適法か分からないサイトが多く、悪意のない多くのユーザーが“潜在的犯罪者”とされる」「公衆送信権侵害を取り締まればいいはずで、アップロードの取り締まりは実効性もない」「悪質な業者につけこまれ、架空請求のネタに利用される可能性がある」「自由なネット利用が著しく制限される事態につながる」などと反論してきていた(→記事:「ダウンロード違法化」のなぜ ユーザーへの影響は)。

 これらの議論は「中間整理」では、「違法録音録画物の複製(ダウンロード)について、著作権法30条で認められている『私的使用』の範囲から外し、違法とすべきという意見が大勢であった」などと、権利者側の意見に重点を置く形でまとめられた(→記事:「ダウンロード違法」の動き、反対の声を届けるには 「ダウンロード違法化」「iPod課金」──録音録画補償金問題、意見募集始まる)。

 中間整理へのパブリックコメントは7500件と異例の多数に上り、「ダウンロード違法化」に反対する意見も多かった。パブリックコメント公表後初めて行われた第14回会合では、「ダウンロード違法化」を既定路線として進めようという方向で議論が流れる中、「パブリックコメントの結果を重く受け止めるべきだ」といった意見も出ていた(→記事:「ダウンロード違法化」に反対意見集まるが…… 埋まらぬ「権利者」vs.「ユーザー」の溝」)。

 18日に行われた小委員会第15回では、これらの議論を踏まえた上で、文化庁が議論のたたき台として「資料2」を配布した。「資料2」は「30条の適用範囲を見直すべきと考えられるが、どうか」などと書かれており、「違法サイトからのダウンロードも違法化すべき」という方向でまとめられていた。

 同委員会は録音・録画に限定して検討しているが、「資料2」ではコンピュータソフトにも言及。「コンピュータソフトはダウンロード被害が大きいと言われるが、30条の適用対象外にすべきであるとの意見についてどのように考えるか」とも記載されている(ただし、委員会ではこれについての議論はなかった)。

 文化庁の川瀬真・著作物流通推進室長は「違法着うたやファイル交換によるダウンロードなどによるフリーライドが、適法な利用を凌駕(りょうが)しているという事実がある」などとし、「違法サイトからのダウンロードを30条の適用範囲から外すことは不可避だろう」と話した。

 さらに「将来、全ての録音・録画物にDRMが付く時代になれば、コンテンツの私的使用についても権利者とユーザーが個別に使用契約を結ぶことにり、私的使用について一律に定めた30条自体が不要になる可能性もある」という前提(→記事:「DRMが普及し、補償金がなくなる未来」を文化庁が提示)に立った上で、「(権利者と契約を結んでいない状態でコンテンツを複製できる)違法サイトからのダウンロードを、30条の適用から除外する」という方向性は自然――という見方も示した。

 また川瀬室長は「パブリックコメントで寄せられた利用者の声も十分反映したつもり」とした。「知らずに違法サイトからダウンロードしてしまった」といった事態を避けられるよう、「情を知って(違法サイトと知って)ダウンロードした場合は違法」などといった注意書きを入れるとしているほか、法改正された場合の周知徹底や、適法サイトを示すマークを普及させるなど「権利者も政府も汗をかいて努力」(川瀬室長)して、合法サイトを簡単に見分けることができる仕組み作りをするという。また、罰則規定がないため「利用者が著しく不安定な立場に置かれることはない」としている。

 ちなみに「ニコニコ動画」「YouTube」などを利用したストリーミング視聴については、「ダウンロード(=複製)には当たらない」という見解を、以前の小委員会で川瀬室長が示しており(→記事:「YouTubeの違法コンテンツも見るだけで違法」は誤解だが……)、「資料2」にはストリーミング視聴に伴うキャッシュについて「必要に応じ法改正すれば問題がないと考えられる」と記載されている。

 12月27日に予定されていた小委員会第16回は中止になった。以降は来年1月17日と1月23日が予定されており、今期の委員会はこの2回で終了する。

 「資料2」の全文は以下の通り。

資料2

著作権法第30条の適用範囲の見直しに関する論点の整理について

《1》違法複製物又は違法配信からの録音録画の取り扱い

【1】改正の必要性

(1)これらの利用は、一般に通常の流通を妨げる利用であり、国際条約、先進諸国の動向等を勘案すれば、第30条の適用対象外とする方向で対応すべきと考えられるがどうか。

(2)ファイル交換ソフトによる違法配信からの録音録画については、違法な送信可能化や自動公衆送信を行う者を特定するのが困難な場合があり、送信可能化権や公衆送信権では充分対応できないと考えられるがどうか。

【2】利用者保護

 ダウンロードした利用者の保護については、次のような措置により、充分対応可能と考えられるがどうか。

ア:仮に法改正された場合における法改正内容等の周知徹底(政府、権利者)

イ:権利者が許諾したコンテンツを扱うサイト等に関する情報の提供、警告・執行方法の手順に関する周知、相談窓口の設置など(権利者)(詐欺的行為の防止にも効果あり)

ウ:適法マークの推進(権利者)

  • なお、法執行については、仮に民事訴訟を提起する場合においても、立証責任は権利者側にあるので、実務上は権利者は利用者に警告をした上で法的措置を行うので、利用者が著しく不安定な立場に置かれ保護に欠けることにはならはない(法律においても、例えば違法複製物等からの録音録画であることを知って行う場合に限定することとしている)と考えられるがどうか。

【3】キャッシュの取扱い

 ストリーミングに伴うキャッシュについては、著作権分科会報告書(平成18年1月)における一時的固定に関する議論の内容等を踏まえた上で、必要に応じ法改正すれば問題がないと考えられるがどうか。

【4】適用対象外の範囲

 コンピュータソフトについては、ダウンロード被害が大きいと言われるが、第30条の適用対象外にすべきであるとの意見についてどのように考えるか。

《2》適法配信事業から入手した著作物等の録音物・録画物からの私的録音 録画等

【1】配信事業に限らず契約で対応できる利用形態については契約に委ね、将来に向かって諸条件が整った利用形態については、第30条は縮小する方向で考えるということでよいか。

【2】レンタル店から借りた音楽CDの録音や有料放送を受信して行う録画については、契約環境が整っていない等の問題があることから、直ちに第30条の適用除外にすることは困難と考えられるので、将来の課題とすることでどうか。

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