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メール受信箱のソーシャル化めぐる争い、MSとGoogleも参戦か

» 2008年04月04日 17時33分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 受信箱のソーシャル化をめぐる競争が起きている。

 米新興企業Xoopitの新しいパーソナルメディアブラウザアプリケーションが3月31日、プライベートβ版になった。このアプリケーションではユーザーがGmail内を漂っているファイル、写真、動画を整理して、ほかのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)やブログにコンテンツを投稿できる。

 しかし、電子メールのこの新興分野に目をつけているベンダーはXoopitだけではない。

 米新興企業のXobniは5カ月ほど前から、Microsoft Outlook向けプラグインのプライベートβ版で数千人のユーザーを引き付けている。

 このツールはOutlook内のコミュニティーページの隣にサイドバーを作成。ユーザーがメッセージをクリックすると、その相手とのやりとりに関するプロフィールが自動的に作成される。Xobniの共同創業者マット・ブレジーナ氏が4月2日、eWEEKに語った。

 このプロフィールでは相手の写真と、相手がいつメールをチェックしたか、送受信したメッセージの数が参照でき、署名から電話番号を引き出して、クリック1つでSkypeを使って電話がかけられる。

 プロフィールウィンドウの下はメールのソーシャルネットワークになっていて、(Gmailと同様に)スレッド化された過去のメールを参照でき、相手の連絡先情報を見ることもできる。どのファイルを交換したかを示す別のセクションもある。

 ブレジーナ氏によると、Xobniは高速メール検索機能も備え、Outlookユーザーが限られた情報で過去のメールを検索する際の大きな問題の1つを解消している。

 ブレジーナ氏は言う。「ユーザーは受信箱を扱いあぐねている。例えば取締役会の時間を取ってもらうため弁護士のアシスタントに連絡したいのに、アシスタントの名前を忘れてしまったとする。Xobniでは弁護士のプロフィールをクリックすれば、弁護士の連絡先リストからアシスタントの名前を見つけることができる。アシスタントの名前をクリックするとそのプロフィールコメントが開き、アシスタントがこれまでに送ってきたものを参照できる」

 XobniはほかのWebサービスプロバイダーとの統合に向けても精力的に動いており、ブレジーナ氏は詳しい内容は明らかにしなかったものの、Salesforce.com、Twitter、LinkedInといった人気サービスとの統合が考えられると語った。

 実際、Gmailで新しいXoopitユーティリティが狙っているのは、XobniがMicrosoft Outlookで目指す意図と同じだ。Xoopitの共同創業者のビジャン・マラシCEOが4月1日にeWEEKに語ったところでは、同氏と共同創業者ジョナサン・カッツマン氏は早くから、パーソナルインデックス化こそが、断片化され、階層化された受信箱の問題解決につながる素晴らしい手段だと認識していた。

 XoopitはGmail向けにそうしたサービスの提供を開始した今、2つの目標を持っている。サードパーティーアプリケーションプロバイダーにXoopitをベースとした開発を行ってもらうことと、ほかのWebメールプロバイダーがAPIを公開し、Xoopitを組み込めるようにしてもらうことだ。

 Yahoo!にはYahoo! Mail APIのプロトタイプがあるが、プレミアム版のYahoo! Mail加入者向けに提供している以上のものはまだ公開していない。Microsoftは3月25日、Windows Live Contacts APIを公開し、LinkedInやhi5といった別々のSNS間で連絡が取れるようにした。

 ほかのメールプラットフォームプロバイダーも「自社のサイトでサードパーティーアプリケーションデベロッパーがユーザーを引き付け、使い勝手を大きく向上させることができるとすぐに気付くだろう」とマラシ氏は期待する。

 Xoopitのマラシ氏がこのような全面的に開かれたプラットフォームを望む一方で、Yahoo!はYahoo! Mailで自らのInbox 2.0構想を描いている。同社が今年立ち上げる予定のoneConnectは、ユーザーがアドレス帳から自分のMySpaceやLinkedInのアカウントにアクセスできるソーシャルアドレス帳だ。

 XoopitやXobniと同様、このソフトではユーザーが、自分の人脈ネットワーク上のコンタクト相手の更新状況や写真アップロード、最近の行動を参照できる。

 Forrester Researchのシャーリーン・リー氏らのアナリストは、メール受信箱をSNSの出発点とすることについても論議を交わしている。

 「受信箱が高度にソーシャル化されるという考えは極めて有望だ。鍵となるのは添付ファイルを取り出してJPEG、GIF、ビデオを探し出し、それを中心に置くことだ。これにより、特にコンテンツを入手する主要手段の1つがメールだった場合、現在のソーシャルメディアにまつわる摩擦は大幅に解消される」。リー氏は4月1日、eWEEKにこう語った。

 Xoopit、Xobni、Yahoo!はいずれもこの考えに従っているが、目標通りにいくのだろうか。XoopitとXobniは現在無料でサービスを提供しているが、両社ともGoogleがメールでやっているような広告表示で収益を上げたい考えだ。両社とも、サードパーティーのプログラマーが飛び付いて、それぞれのツールを開発してくれると期待している。

 しかしブログメディアのTechCrunchは、MicrosoftがXobniの買収を狙っていると伝えた。こうしたツールがあればMicrosoftは自社で開発する時間と手間が省けるため、これは理にかなっている。

 一方、XoopitはGoogleのGmail向けとなっているため、Xoopitが勢いに乗れば同じようなうわさが出てくることも予想される。MicrosoftとGoogleがXobniとXoopitをそれぞれ買収すれば、ソーシャル受信箱を武器にYahoo!と正面から対決することが可能になる。

 この分野は注目に値する。

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