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» 2008年05月12日 10時50分 UPDATE

JASRAC独占、なぜ崩れないのか――JRCの荒川社長に聞く (1/3)

4月末、公取委がJASRACに立ち入り検査に入った。JASRACが音楽著作権管理市場を独占しているのは事実。だが、状況を改善する努力も続けてきている。「なぜ、今なのか分からない」と、新規参入事業者・JRCの荒川社長は言う。

[岡田有花,ITmedia]

 公正取引委員会が4月23日、日本音楽著作権協会(JASRAC)を立ち入り検査した。音楽の著作権管理事業への新規事業者の参入を困難にした独占禁止法違反(私的独占の禁止)の疑いがもたれている。

 JASRACは音楽著作権管理事業を独占的に展開していたが、2001年の「著作権等管理事業法」施行で新規参入が認められ、イーライセンスやジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)などが参入した。だがいまだに楽曲の99%をJASRACが管理する、という独占状態が続いている。

 各紙の報道によると、今回公取委が問題視したのは、JASRACが放送局と結んでいる「包括利用許諾契約」。包括的利用許諾契約は、放送事業の収入の1.5%を支払えば、JASRACが著作権を管理している曲を、何度でも自由に使うことを認めるという内容の契約だ(JASRACの規定:PDF)。

 包括契約なら楽曲を使用する際、1曲1曲許諾を取ってそれぞれについて使用料を支払う――という手間が省けるが、放送局がJASRAC“以外”の管理楽曲を使いたい場合、使用料を別に支払わなくてはならなくなる。JASRACだけならいつもの料金(収入の1.5%)で済むのに、新規参入事業者の楽曲を使う場合は余計にお金がかかるというわけだ。

 これによって放送局などが新規参入事業者の管理楽曲の利用を避ける事態になれば、競争阻害要因になり得る――公取委は2003年3月に公表した「デジタルコンテンツと競争政策に関する研究会報告書」でこう指摘している。

 JASRAC独占はなぜ崩れないのか、JASRACによる「参入障壁」を感じたことがあるか――JRCの荒川祐二社長に意見を聞いた。

 JRCは2000年12月に設立。音楽著作権の「録音権等」(CD、CM、ゲームソフトなどへの録音)と、「インタラクティブ配信」(ネット配信)を管理。L'Arc-en-Ciel、スピッツ、BENNIE Kなど有力アーティストやインディーズなど約5000曲の管理委託を受けている。JASRACやイーライセンスと異なり、放送に関連する権利は扱っていない。

 JRCはこのほど、同社の管理楽曲をYouTubeでの利用について包括利用許諾契約をGoogleと締結(関連記事:YouTubeに初の音楽著作権包括許諾・JRC スピッツやラルクもOK)するなど、変化の激しいWeb上の音楽配信状況への柔軟な対応を売りにしている。音楽業界とネットの関係や、理想的な音楽著作権管理のあり方などについても話を聞いた。

JASRACの努力に冷水を浴びせるのではないか

画像 荒川社長

――JASRACに公取委が立ち入ったことへの感想は。

 なんで今なんだろうと思った。著作権等管理事業法施行以前はJASRACはいわば、「法が定めた独占」。法改正した時点では100%独占事業者しかいない市場で、生活に根付いたと言えるほどのシステムを誇ってた。

 そこに民間が参入しても、そんなに簡単に独占が崩れるはずがないというのが、一般論としてはある。公取委は以前から、「JASRACはこの事業エリアのドミナント。見守っていく」と言っていたが、なぜ今なのか分らない。

――報道によると、放送局と結んでいる包括契約が問題視されたようだが。

 包括契約が新規参入を阻害している要因とされているが、JASRACが意図してやったことではないだろう。包括契約という契約形態は合理的で、その契約方法自体には問題がないと言って差し支えないと思う。

 当社もYouTube上での楽曲利用について、Googleと楽曲使用契約を結んだが、これも包括許諾。毎回個別に「この曲を使いたい」と利用申請し、許諾するという作業を繰り返すのではなく、「全曲使っていいです」と包括的に利用を許諾し、使用実績を事後報告してもらうという形だ。

 圧倒的ドミナントの組織が包括許諾契約をやることによって、結果としてある種の参入障壁を招いてしまっているとは言えるかもしれない。

 ただJASRACは、民間企業や放送局と共同で、放送に使用された音楽を全曲把握するシステム作りとルール作りをここ数年進めている。今回の立ち入りは、それにある種の冷水を浴びせかけるのではないか。

 もし「そんな努力をしても、独占状態にあるからだめ」と断じられてしまうのであれば、今後そういう動きはどうなっちゃうんだろう、という懸念がある。

包括契約の問題は

――新規参入事業者として「包括許諾契約が参入障壁になっている」と感じたことがあるか?

 今回特に問題とされている放送について言えば、当社は具体的なアクションを起こしていない(放送分野には参入していない)ので、そこで障壁を感じたことはない。

 ただ、ネット上のストリーミング番組の料率について、似た問題はある。ストリーミング番組の料率は、JASRACがNMRC(ネットワーク音楽著作権連絡協議会)と協議して定めた「収入の3.5%」という包括的な使用料率が、事実上のスタンダードになっていた。

 そこに当社が参入する際どうすべきか。例えば、10曲使われているストリーミング番組で、1曲だけ当社の管理曲があったとする。「1回再生当たり○円」と単価を設定できればベストだが「9曲目を再生したかどうか、サービスによっては把握できない」といった問題があり、現時点では現実的ではない。

 そこで、包括的な使用料を定めることを検討したが、当社が参入した時点で3.5%というJASRACが定めた料率がデファクトスタンダードになっていた。かといってJRCが同じく3.5%と設定すると、JASRACに3.5%支払っている利用者が、JRCにも3.5%上乗せし、計7%支払ってもらうことになり、それも現実的ではない。

 解決策として当社は、「全体のストリーミング使用実績に対し、JRC管理作品の使用実績を按分計算したものを徴収額とする」という規定を打ち出した。ストリーミング番組の10曲のうち1曲だけ当社の管理曲であれば、収入の3.5%を100としたうちの10%を案分徴集する、という要領だ。

 だが、全ストリーミングサービスで、再生楽曲の確実なログを取ることは難しいなど、完全な解決の道はまだ見いだせておらず、NMRCと協議を続けている。

――JASRACは、法改正後も音楽著作権管理市場の9割以上を独占しているという状態が続いている。これはなぜなのか。

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