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» 2008年06月05日 15時18分 UPDATE

子どものネット利用に大人はどう向き合うべきか

ネットに弱い親たちは、子どものネット利用にどう向き合えばいいだろうか。「子どもは“別の世代”ととらえた上で、親世代の常識に縛られず、学びや選択肢を与えてやる必要がある」と、ネット教育アナリストは指摘する。

[岡田有花,ITmedia]
画像 尾花さん

 子どもたちを「有害サイト」から守ることを目的とした、いわゆる「青少年ネット規制法案」が、今国会で成立する見通しだ。「学校裏サイト」でのいじめなどがクローズアップされ、「子どもにとってネットは危険」とも報じられる中、ネット教育に迷う親も多い。

 日本アイ・ビー・エム出身で、ネット教育アナリストの尾花紀子さんは6月4日、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)が開いたシンポジウムに登壇し、子どもとネットの関係を、大人世代の常識の枠内でとらえないほうがいいと指摘した。

 「物心付いたころからネットに浸っている世代は“別の世代”ととらえるべき。知識や経験のある大人は、規制だけでなく、学びを与えたり、よりよい選択肢を推奨してやることもできる」

子どもはネットでコミュニケーションを効率化している

 子どもたちはネットの上手な使い方を知っている。娘1人と息子1人を持つ尾花さんは、2人のネットを利用の実態を紹介する。

 例えば「リアルタイム掲示板」。子どもたちの間では「リアル」と呼ばれているという。「6時には家に帰っている」「7時から9時まで塾」など予定を書き込み、メール交換や電話連絡の“無駄打ち”を防ぐために使われている。頻繁なメールの応酬や、連絡待ちに疲れた子どもたちが編み出した知恵だ。

 「会社での連絡の効率化にも使えるアイデア。小さなものかもしれないが、将来役に立つとてもいい使い方だ。それが、掲示板サイトがフィルタリングされると、子どもたちはまた、非効率なメールの応酬に逆戻りする」

 経営コンサルタント経験もある尾花さんは、「少子化社会の日本が今後も豊かさを維持し続けるためには、ITを使って仕事の効率や質をアップするしか道がない」とも説く。子どもたちからITを取り上げることは、日本経済にとってもマイナス、というわけだ。

マスコミが作り上げた「学校裏サイト」という言葉

 「大人やマスコミが『学校裏サイト』という言葉を作り上げ、市民権を与えてしまった」と尾花さんは言う。

 文部科学省が4月に発表した調査によると、確認できた学校裏サイトの総数は3万8260件で、全国の中学・高校の総数(1万6300校)の2倍以上にのぼった(「キモイ」「うざい」学校裏サイト、5割に誹謗中傷 文科省「深刻」)。

 「マスコミがこんなに取り上げなければ、3万件にも増えなかった。大人の目を盗み、ネットでストレス発散やいじめができる場を、それまで知らなかった子どもにも教えてしまったのは、大人とマスコミだ」

 報道が過熱した背景には「危機感をあおり、ブラックな面をクローズアップする」とうマスコミの体質があると尾花さんは指摘する。

ネットが分からなくてもリテラシー教育はできる

画像 教材の例

 子どもたちがネットを通じて人を傷つけたり傷つけられたりすることがないよう、ネットリテラシーの教育に力を入れる必要があるという意見に異論がある人は少ないだろう。だが、ネットに詳しい教師が少ないため、実践が難しいと、学校側は訴える。

 尾花さんは“ネットが分からなくてもできるネットリテラシー教育”の例を紹介した。パソコン通信で出会って結婚した例を紹介する文章と、ネット上の出会いの危険性について書いた文章を読ませ、それぞれについての感想を書かせる――というオリジナル教材だ。「これは読解力の問題。国語の教師でもできる」

子どものころ、エロ本に興味がなかった人、いますか?

 性的な内容が書かれたサイトなど「有害サイト」から青少年を守るために、18歳未満が利用する携帯電話やPCへのフィルタリングソフト導入などを盛り込んだ、いわゆる「青少年ネット規制法」が、今国会で成立する見通しだ。

 大人たちは性的なコンテンツから子どもを遠ざけようとするが、「中学生のころ、エロ本やエロビデオに興味がなかった、と言い切れる大人の男性は、いるのでしょうか?」と尾花さんは尋ねる。この質問に対して、会場の50人以上の男性からは、1人も手が挙がらなかった。

 「大人が本やビデオにガミガミ言うから子どもはネットに行く。本やビデオは相手がいないから、人に迷惑をかけることはないが、ネットは向こうから“仕掛け”が飛んできたり、他人に何か仕掛けたりすることができるから、本やビデオのほうがいい。子どもが本やビデオを見ていてもガミガミ言うのではなく、『早く勉強しなさい』と言うぐらいにしたらいい」

ケータイは、親が持たせたくて持たせている

 携帯電話の使い方について、親子の意識のギャップは大きい。親子の間で、携帯利用のルールを決めているかを、小学校5年生と中学校2年生の親子に聞いたアンケート結果によると、「ある」と答えている親の数が、子どもよりも多かった。親は「ルールがある」と思い込んでいるが、子どもは「ない」と思っていることがある――ということだ。

画像

 このギャップはなぜ起きるのか。理由は2つあるという。(1)親は、子どもに携帯を買い与える際にルールを決めるが、その後、守っていなくても注意しないため、子どもは「ルールはなくなった」と考える、(2)親が子どもの携帯利用を注意する際、「そんなにケータイばかりいじっていたらダメでしょ、だから前のテストでも成績が悪くて……」などと、携帯と関係ないことを混ぜて叱るため、子どもは何を注意されているか分からなくなる――だ。

 携帯はそもそも、親が子どもに持ってほしくて買い与えることが多いと指摘する。「お母さんにとって、子どもが携帯を持っていると便利。例えば、子どもが学校に行っている間に家を留守にすることになった時、学校の先生に言付けなく携帯メールで連絡が取れる」

 「持たせたい」が前提にあり、持たせることを自分にも子どもにも納得させるために、親は携帯利用のルールを決める。「その場では子どもは『ルールは分かった』と言うだろうが、その後きちんと注意しないと、子どもは『ルールはもうなくなった』と思ってしまう。親の再教育も必要ではないか」

若者は「違う世代」と考えて教育を

 新入社員がブログやmixi日記で会社の機密をもらして問題になることがある。その根底には、世代間の意識の差が横たわっていると、尾花さんは指摘する。20代以下は、プライベートツールとしてネットを使い始めた世代。30代以上は、仕事のために使い始めた世代だ。

 「20代以下は、日記に鍵を付けて引き出しにしまうのではなく、ブログで友人に読んでもらうのが当たり前。社内会議の内容をブログで公開してしまう。30代以上はそんなことはしないのが当たり前と思い、教えようともしない。だが、世代が違うと思って、ゼロから教えた方がいい。電話の取り方よりも、そういった教育の方が重要」

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