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» 2008年06月17日 21時38分 UPDATE

Blu-rayに補償金の「なぜ」 「ダビング10」「iPod課金」はどうなる

Blu-ray録画機器とディスクへの補償金課金が省庁間合意で決まった。「ダビング10」スタートに道筋を付ける狙いだが、権利者側は反発しており、不透明な情勢が続く。

[岡田有花,ITmedia]

 文部科学省と経済産業省は6月17日までに、Blu-ray Disc(BD)とBD録画機に、私的録音録画補償金を課すことで合意した。権利者とメーカーそれぞれに譲歩を促し、北京オリンピック前の「ダビング10」スタートに道筋をつけたい考えだ。だが事実上頭越しの決定に権利者側は反発しており、行政サイドのシナリオ通りに事が運ぶかは不透明だ。

 ダビング10と補償金の問題は省庁をまたいでおり、事態を厄介にしてきた面もある。補償金は文科省傘下の文化庁、ダビング10は総務省、コンテンツやエレクトロニクス業界は経産省の担当だ。

画像 5月8日に開かれた「私的録音録画小委員会」の今期第2回会合。iPodやHDDレコーダーへの補償金課金が決定すると一部で報じられ、多くの報道陣が集まったが、JEITAなどメーカー側が課金に強く反発。議論は暗礁に乗り上げた

 3省庁間で連携がなかったことで問題がこじれた――という指摘もある。BDへの課金は、文科省と経産省が連携することで議論の泥沼を脱し、8月に迫る北京五輪前にダビング10をスタートするための“政治決着”だ。

 文化庁長官の諮問機関・文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会ではこれまで、権利者やメーカーを交え、補償金についての議論を2年以上にわたって交わしてきた。だが意見の対立が続き、議論はこう着。議論を無駄に終わらせないためにも、早期に結果を出す必要に迫られていた。

 メーカー側に立つ経産省は、北京五輪というBDレコーダー商戦期を前に、“ダビング10待ち”による買い控えを避けたい考え(ダビング10先送りで「五輪商戦」に水? メーカー板挟み)。両省の思惑を持ち寄った結果が、権利者・メーカーそれぞれに一定の譲歩を迫る「BD課金」というわけだ。

なぜ「BDだけ」なのか iPod課金は

 今回の合意で課金対象に加わるのは、BDディスクとBDレコーダーのみ。一部で「暫定的」な課金と報じられているが、将来、課金対象から外す予定があるわけではないようだ。「著作権法改正とは別の議論、という意味で暫定的と表現した」(文化庁著作権課)

 権利者側はBDに加え、BDなしのHDDレコーダーやiPodへの補償金課金も求めており、文化庁が小委員会で提示した案もそれらに課金する方向性を示していた。だが、今回はそれらは対象とされていない。

 なぜiPodやHDDレコーダーは対象外なのか。メーカーと権利者の主張の“間”を採るという判断に加え、HDDレコーダーやiPodを課金するには著作権法の改正が必要で、省庁間の議論だけでは決断できず、時間がかかる――という事情もある。

 現行の著作権法で補償金の課金対象となっているのは、録画・録音機器とメディアが別々になっている「分離型専用機器」「専用記録媒体」。具体的な機器は政令で指定することになっている。

 BDレコーダーはディスクと機器が別になっているため、政令で課金対象に加えることができる。政令の改正は数カ月で可能といい、「早ければ年内に課金対象に加えられる」(文化庁著作権課)としている。

 だがHDDレコーダーやiPodのような一体型機器はそもそも法律で補償金の課金対象となっておらず、課金するには法改正が必要だ。“iPod課金”については引き続き録音録画小委員会で議論し、法改正を検討していくことになる。

権利者側「納得していない」

 「権利者側にはまだ納得はいただいていない」――6月17日に会見した渡海紀三朗文部科学相はこう話し、円満解決でないことを認めた。

画像 権利者側は5月29日に会見を開き、JEITAなどメーカー側の主張に反論した。左からJASRACの菅原瑞夫常務理事、実演家著作隣接権センターの椎名和夫さん、日本音楽作家団体協議会の小六禮次郎さん、日本映画製作者連盟の華頂尚隆さん

 実際、権利者側の89団体は同日、「この合意はダビング10の議論を前進させるものではない」とする声明を発表。「そもそもBDは、もっと早い段階で課金対象に指定されるべきだった。この合意がダビング10の議論を前進させるものではないと考えている」などとしている(「Blu-ray課金とダビング10は別問題」 権利者団体が声明)。

 録音録画小委員会委員で、日本映画製作者連盟の華頂尚隆さんは「補償金の原資にBDが加わるのは当然だが、録音録画小委員会など公式の席上で決まらず、こういった形になったのは違和感がある」と話す。

 委員で実演家著作隣接権センター(CPRA)の椎名和夫さんも「権利者側は何の説明も受けておらず、先週末に『合意しました』と報告を受けただけ。BDの補償金が、デジタル放送からの録画も対象にしているのか、それともアナログ放送のみかも分からず、納得いかない」と話す。権利者側はこの件について24日に会見を開く予定だ。

 権利者側が難色を示しているのに対し、JEITAは歓迎ムードだ。JEITA広報部は、BD課金については「詳細がまだ分からないため、詳細を聞いてから判断したい」と態度を保留したが、省庁合意について「ダビング10の早期実施に向けた環境整備への努力に感謝する」とコメントした(Blu-rayに録画補償金 文科省と経産省が「暫定的」合意 iPod課金は見送り)。

ダビング10開始日、27日に決定か

 権利者側も、今回の合意を真っ向から否定しているわけではない。これまでの権利者の主張の一部が受け入れられた結果として歓迎する声もあり、「ダビング10について合意した場に私もいたから、ダビング10を進める責任が私にもある」(椎名さん)という事情もある。

 iPod課金やHDDレコーダーへの課金についても、見送りが決定したわけではない。課金についての議論を含め、著作権法改正の議論は今後も録音録画小委員会で続いていく。ただ、次回の小委員会は延期されており、日程は未定のままだ(「ダビング10」6月2日開始は絶望的 録音録画小委員会が延期に)。

 ダビング10の開始日程を決めるのは、総務省傘下の情報通信審議会。次の会合は23日に開かれる予定で、答申案を議論する。そこで議論がまとまれば、ダビング10についての内容を盛り込んだ答申を27日の総会に提出し、開始スケジュールが決まる見通しだ。

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