「mixi始まって以来、一番大きな変化だ」――ミクシィの笠原健治社長は、「mixiアプリ」に大きな期待を寄せている。
mixiアプリは、外部開発者がmixi向けアプリケーションを開発できるプラットフォームで、4月8日にオープンβ版をスタートした。8月に正式公開し、mixiユーザー全体に公開する予定だ(「mixiアプリ」8月に正式公開 販売収入8割を開発者に 広告収入も)。
笠原社長が期待するのは、mixi日記に並ぶような、強力なコミュニケーションアプリの登場だ。日記はmixiで最も使われている機能で、ユーザーがmixiにアクセスする最大の理由になっているが、日記が嫌いでmixiは使わない、という人もいる。
「日記は、20代女性には使いやすいかもしれないが、30代後半の男性や、家族同士、上司や部下などのコミュニケーション方法としてはベストではないかもしれない」――外部開発者の力を借り、それぞれの世代や属性にぴったりのアプリを提供してもらうことで、mixiを「コミュニケーションプラットフォーム」として確立していきたいという。
mixiアプリは現在、mixi非公認の「インディーズアプリ」が300近く公開されている。最も人気が高いのは、登録ユーザー全員で「はちゅねミク」をクリックしてネギを振らせ、その回数を累計する「ネギ振りカウンタ」だ。
開発したのは同社の社員。笠原社長は、「かわいくて親近感を持っている」と顔をほころばせつつも、こういったアプリは「長く使われるかどうかは疑問」と話し、そのココロを、「全国大会」「マイミク大会」という言葉で解説する。
「全国大会」とは、ユーザー全員が楽しめるようなアプリや、相互作用不要な一方通行のアプリだ。mixiの既存のサービスでいえば、「コミュニティ」や「mixiニュース」が当てはまる。ネギ振りカウンタも全国大会アプリの1つだ。
全国大会的なアプリもヒットアプリになり得るが、一般のコミュにティーサイトやデスクトップガジェット、ブログパーツでも同じようなサービスを構築でき、mixiならではのサービスにはなりにくい。
「マイミク大会」とは、マイミクシィ同士の関係の中で楽しむアプリの総称で、mixi日記が代表例。mixiアプリなら、マイミクと対戦できるゲームや、オンラインのマイミクが分かるアプリなどがその例だ。
マイミク大会なら、mixiの最大の強みであるマイミクとの相互関係を生せる。「マイミクが使っているなら自分も使ってみよう」と次々に広がっていくためユーザー獲得に有利。マイミクと一緒に楽しめれば、長く愛着を持って使ってもらえる可能性が高い。
同社ではこういったアプリを「ソーシャルアプリ」と呼び、特に開発を支援していく考え。mixi日記並みのソーシャルアプリが、何本も育ってほしいと期待している。
正式サービス開始後は、投稿されたアプリをmixiが審査し、「公認アプリ」として公開していく。規約違反など問題のあるアプリのみ非公認・削除し、問題のないアプリはすべて公認していく方針だ。携帯電話向けmixiアプリのβテストも5月ごろから始め、9月に全ユーザーに公開する計画だ。
開発者が収益を得られる仕組みも整備した。8月の正式公開後は、アプリの有料販売が可能。収入の8割が開発者に渡り、残りの2割がミクシィの取り分になる。
加えて、アプリの1ページビュー(PV)当たり最低0.01円を、広告収入として開発者に配分。金額は、アプリの利用度などに応じて段階的に、0.02円、0.03円と上がっていく仕組みだ。
課金システムや広告は、開発者が独自のものを導入することも可能。mixiアプリから外部サイトにリンクして課金できる。広告も、規定のサイズのものを挿入できる。
mixi日記などのPVが減り、アプリのPVが増えれば、「当社にとって利益率の悪いPVが増える可能性もある」と、短期的なリスクは覚悟。中長期的にはmixiが盛り上がり、同社の利益拡大につながると期待している。
開発者を資金面で支援する「mixiファンド」も設立した。ファンドという名だが、「出資だけでは後々重くなることもある」と、ニーズに応じて融資やアプリの買い取りも行う。支援先は、アプリの企画力や収益力、マネージメント能力などをもとに決める。
アプリの説明会を週1回開くほか、開発者など450人を招いた同社初の大規模イベント「mixiアプリカンファレンス2009」を4月23日に開催。優秀なアプリを表彰し、グランプリには100万円を贈る「ソーシャルアプリケーションアワード」も実施する。
笠原社長は「短期的には利益があまり出なくても構わない。中長期的な視野で、mixiをコミュニケーションインフラにしていきたい。2〜3年のスパンで見れば全体のPVが拡大し、トータルで見れば利益に貢献するだろう」と腰を据えて取り組む姿勢だ。
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