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個人向けクラウドにBIGLOBEが注力 「ISPだけでは発展ない」

» 2009年07月08日 18時37分 公開
[小笠原由依,ITmedia]
photo NECビッグローブの飯塚久夫社長

 「接続会員は大切にする。しかし、それだけでは事業としての発展はない」――NECビッグローブの飯塚久夫社長は7月8日、今後の戦略を発表した。誰でも簡単に利用できるライフログサービスなどを順次投入。個人向けのクラウドサービス「パーソナルクラウド」を強化し、新たな収益源を育てる狙いだ。

 ブロードバンドが普及し、ネット対応機器も増えているが、「ネットの接続すら難しいユーザーや、接続はできても自分に合ったサービスを見つけられない利用者は多い。リテラシーの高いユーザーとの間にある能力差は拡大している」と飯塚社長は分析する。

 同社のブロードバンド会員は着実に増えている反面、「ダイヤルアップからADSL、ADSLから光に移りかわるときそれぞれ単価が半減している」など、ISP(インターネットサービスプロバイダー)としての成長は難しいと判断。今後は、ネット上のサービスを誰でも使いこなせるよう手伝う新たなISP「インターネットサービスパートナー」を目指し、「パーソナルクラウド」を強化するという。

 パーソナルクラウドとは、「利用者1人1人が自分のニーズに合わせて、世界中のサービスを快適に使える」というもの。いつでもどこでも利用できる「ユビキタス」、利用者ごとにサービスを最適化する「パーソナライズ」、サービスと機器の連係で新たな付加価値を創造する「クロスアプライアンス」の3つがポイントだ。

 パーソナルクラウド時代に向け、独自のサービスを開発中だ。手のひらサイズのハード「ライフログアップローダー」を利用し、写真や行動の履歴をまとめて記録できる「BIGLOBEライフログ(仮)」がその1つだ。

 試作品のライフアップローダーは四角い箱型で、USBポートと無線LAN通信機能を装備。デジタルカメラやGPSロガー、カードリーダーを接続して写真や行動履歴などのデータを吸い出し、専用サイトにアップロードできる。GPS情報付きデータなら、位置情報を地図上に表示することも可能だ。ハードの発売は未定だが、専用サイトは今年度中の公開を目指す。

photo 「BIGLOBEライフログ(仮)」で使う「ライフアップローダー」の試作品
photo 行動履歴や写真を表示できるカレンダー画面
photo GPSロガーを使えば、自分の移動ルートを地図に表示できる

photo 「BIGLOBEゲート」

 機器同士を連携させたサービスも順次提供する。来年3月ごろから「BIGLOBEゲート」を公開する予定。PCとスマートフォンを連携させ、Webサイトの閲覧・操作履歴を共有できるサービスで、携帯電話を使って出先で調べた情報を記録し、家に戻った後にPCからゆっくり情報をチェックするといった使い方が可能だ。


photo 撮影した画像は自動でサーバーにアップされる

 今年5月には、携帯電話の専用アプリを立ち上げて撮影した画像を自動でアップロード・保存し、PCからも閲覧できる「フォトポケ」もスタートしている。「健康器具もGPSも全部お客様」(飯塚社長)ととらえ、ネットに接続できる機器すべてを連携させるというビジョンも示す。

 いつでもどこでも使える「ユビキタス」を実現するサービスとしては、遠隔地にあるPCをリモート操作できる「LogMeIn」を3月に始めたほか、最適な接続環境を検索・設定する「BIGLOBEマルチコネクト」を8月から提供する。


photo 事業目標

 サービスの一部を有料にして収益を得るほか、便利なサービスを提供することでユーザー数やページビューを高め、媒体価値を上げて広告収入拡大につなげる狙い。M&Aも行うなどして成長を加速し、2012年度に売上高1300億円(2008年度は906億円)を目指す。

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