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» 2009年09月03日 16時43分 UPDATE

売れ続ける「ドラクエIX」の作り方 堀井雄二氏らが語る、開発の思想とこれから (1/2)

ドラクエIXは、従来のドラクエシリーズと真逆のコンセプトで開発したという。すれ違い通信の大流行は開発陣も想定外。堀井雄二さんは「まさゆきの地図はよかった」とも。

[岡田有花,ITmedia]
画像 会場は満席。ドラクエIXをプレイしながら講演を待つ人も多かった

 ニンテンドーDS用ソフト「ドラゴンクエストIX 〜星空の守り人〜」が売れ続けている。スクウェア・エニックスによると、9月3日までに370万本以上売れており、シリーズ最高売り上げだった「VII」(プレイステーション用、2000年8月発売、410万本)を上回る勢いで今も売れ続けている。

 ゲーム開発者向けイベント「CESA Developers Conference 2009」(CEDEC 2009、パシフィコ横浜)で9月3日、ゲームデザイナーの堀井雄二さん、スクウェア・エニックスの市村龍太郎プロデューサー、藤澤仁ディレクターが、ドラクエIX開発の思想や今後の展開について語った(「ポートピア」は「ドラクエ」の前フリだった 堀井雄二氏のゲーム哲学)。

“真逆”のドラクエ

 「DSを使ってマルチプレイできるドラクエを作ろう」と、開発がスタートしたのは4年半前。「マルチプレイできるドラクエIIIのようなゲーム」(堀井さん)を目指したという。

画像 堀井さんは「寝る前にベッドでプレイしている」という。「結構、寝落ちしてるけど」。ちなみにドラクエIXには「寝落ち容疑者」という称号もあるらしい

 発想は従来のドラクエシリーズと真逆だった。従来は、(1)エンディングまで50時間ぐらい遊ぶ、(2)1人で攻略する――というプレイスタイルが一般的。だがIXでは、(1)ずっと遊べる、(2)みんなで遊べるゲームを目指した。「かなり難しいハードルだった」と市村さんは振り返る。

 ラスボスを倒した後もずっと遊べるようにするために、ドラクエのナンバリングシリーズとしては初めて、エンディング後の世界を描き、移動手段も増えるようにして、「今から新しいことが始まる」ことを強調した。

 「強くなりたい」というRPGプレイヤーの最大のモチベーションをエンディング後も保つため、主人公たちもほぼ無制限に成長し続けられるようにし、成長に伴って強いモンスターが出るダンジョンの地図「宝の地図」が手に入るシステムを作った。

 ネットワーク機能を活用し、「一度離れてもまた遊びたくなるデザイン」を目指した。毎日品ぞろえが変わる「Wi-Fiショッピング」や、毎週の追加シナリオ配布、ほかのユーザーと交流できる「すれ違い通信」機能――などを盛り込んだ。

ネットで調べないと分からない「クエスト」や「練金」も

画像 市村さん

 みんなで遊べるゲームにするため、4人まで参加できるマルチプレイ機能も装備。加えて、「先行している人の情報が必要になるデザインにした」(市村さん)。

 クエストや、既存のアイテムを調合して新しいアイテムを作る「練金」には、普通にプレイしていただけではなかなかクリアできない難易度の高いものを折り込み、「人に聞いたりネットで調べないと分からないデザインにした」(市村さん)。難しい機能はできるだけ排除してきたドラクエシリーズとしては異例で、「ネットで調べることも攻略の1つ。みんなでやったほうが楽しい、というデザインを目指した」(市村さん)。

 キャラクターの見た目や強さ、遊び方を多様にし、「人と差別化できるようにした」(市村さん)のもポイントだ。人と異なる遊び方をしていれば、ほかのユーザーの情報を知りたくなったり、情報を発信したくなるはず――そう考えた結果で、ブログやネット掲示板での“ドラクエ談義”を活性化した。

「まさゆきの地図がよかった」 すれ違いがこんなに流行るとは

画像 まさゆきの地図

 すれ違い通信も、みんなで遊ぶための重要な機能の1つだが、「おまけ程度に考えていた」(市村さん)機能。「こんなに流行するとは思わなかった」と3人は驚く。

 すれ違い通信機能は、DSに移植した「IV」「V」にも付けていたがここまで流行したのは初めて。ユーザーの数の多さと、すれ違い通信で「宝の地図」をもらえることが、流行に火を付けたと堀井さんはみている。「やっぱり、ものをもらうと燃えるから」(堀井さん)

 「まさゆきの地図がよかった」(堀井さん)とも。まさゆきの地図とは、経験値がケタはずれに多いレアモンスター「メタルキング」だらけのフロアが含まれたダンジョンの宝の地図。発見者が「まさゆき」さんだったことからこの名が付き、一時期、ドラクエIXユーザー誰もが欲しがり、すれ違い通信を通じて爆発的に広がった。

 まさゆきの地図は「マジコンを使ったチートで作られたのでは」「開発者側の仕込みでは」と推測する向きもあったが「何十万分の1という確率で偶然生まれたもので、仕込みではない」(市村さん)という。

 宝の地図は、見付けた人「発見者」と、地図をクリアし、ボスを倒した人「更新者」が記録される仕組みになっている。「発見者と更新者の名前を残すことで一番目指したのは、強いモンスターの出る地図で、倒した人の名前が更新者として残り、この人すごいな、と有名になること。でも結果的に一番有名になったのはまさゆきくんだった」(堀井さん)

すれ違い通信で、バーチャルがリアルを浸食した

 すれ違い通信では、自己紹介などの短いコメントを、すれ違った相手に読んでもらうことにもできる。面白い自己紹介を書いたり、自分が働く店の宣伝を書いたり、いまいる場所についての感想を書いたりなど、ユーザーはさまざまなコメントをやりとりしている。

 会場では登壇者3人がすれ違い通信をオンにしていた。講演中、堀井さんの元には「ドラクエVI」のDSへの移植についての要望を書いたコメントが、すれ違い通信で届いたという。

 「バーチャルがリアルを浸食すると面白いと思っっていたので、すれ違い通信の使われ方は面白い。自分以外のデータ見てなんとなく楽しいし、何かが起きそうというワクワク感もある。人は、人が好きなんだと思う」

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